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インクルージョンについて思うこと

介護の専門校で講師をしていたとき、福祉の用語は、そのままカタカナで使っているものが多いなあといつもいつも思っていた。
ノーマライゼーションもアドボカシーも、そしてインクルージョンも。
あてはまる日本語を探すのが難しいから、そのまま使うことが多い。
要するに、日本にはそういう考え方がなかったっていうことなのだ。
だけど、実際よくわからなくて、それが果たして実践されているものかどうかは、もっとよくわからない。

最近、インクルーシブ教育について、考える機会が増えた。
日本では当たり前と思われていることが、世界ではどのように思われているのか。
日本では普通と思われていることは、本当に普通なのかどうか。

もしかしたら、普通と思われていることが、普通ではなくて、異常であるかもしれない。

昨年、国連から日本に「特別支援教育の中止」についての勧告が出た。
日本では、特別支援教育をうける児童、生徒が増えてきている傾向にあり、需要は高まっている。
発達障害や見えにくい障害が早期判断され、しかるべく教育を受けさせたいと希望する親も増加している。

そこで、ちょっと発想を変えて考えてみる。
特別支援校の魅力ってなんだろう。
私の長女が特別支援高等部に通学していたとき、年の離れた三女が、小学校入学をひかえて、こう言った。
「わたしも、おねえちゃんとおなじがっこうにいきたい」
三女は、自分が入学する予定の小学校よりも、長女の通う特別支援校のほうが魅力的に見えていたようだ。
確かに、学校行事はもりだくさんで楽しいし、先生たちは活動的で、明るくて、やさしいし。
生徒さんは楽しいし、やさしくて、保護者会の時は、長女のお友達のおねえさんたちが、芝生の校庭で妹たちを遊ばせてくれて。

三女は願いかなわず、普通校へ入学した。

「インクルーシブ教育」と日本でいう時、多くの場合は、
障害児も普通学級に通うことができるように。
普通学級で障害児を受けいれてあげよう。
障害児は普通学級に合わせる努力をしよう。

というようなイメージを持つ人は多いだろう。
学校の基本は「普通学級」だから。
でも、あまり魅力的でない「普通学級」だったらどうなのだろう。
障害児は、「普通学級」には行きたくないと思うかもしれない。
確かに、特別支援学校のほうが、教師力は高いように思える。
進学とか、成績とか、子どもを点数でジャッジするような教育では、子どもは押しつぶされてしまうかもしれない。

教師の数が少なく、教師の仕事が多く、決まり事をこなすことで精いっぱいの学校だったら、ひとりひとりの子どもの良いところを伸ばすなどという悠長なことはやってられないかもしれない。
規則が多くて、子どもは縛られているような気になるかもしれない。
そのような、今の現状の普通学級だったら、わざわざ、障害のある子を通わせようとする親は少ないだろう。
もしかして、普通学級に在籍する見た目にはわからない障害を持つ子どもも、あまり幸せでないから、特別支援教育を受けたいと希望する子もいるだろう。

逆に考えてみたらどうだろう。
三女のように、楽しそうだから特別支援校に行きたいという子もいるのだ。
「障害児を普通学級に、の逆」の発想。
「健常児を特別支援学級に」の発想はあまりしないだろう。

そうなのだ。日本の今の現状のままの普通学級には、障害児は行きたくない。行くことが難しい。幸せになれない。
だから、日本のインクルーシブ教育はなりたっていないのだ。
つまり、普通学級の在り方を変化させなくては、インクルーシブ教育は成り立たないのだ。
この点を国連は指摘してきたのだと思う。

だれもが、心地よく暮らせる町には、誰をも受け容れてくれる病院や学校やお店があってほしい。
そして、本当はどこの学校も、どんなに障害が重くても、どんなに病気が重くても、その町に住むすべての子どもを受けいれることが出るよう、支援員や教師や看護師を充実させてほしい。
そうしたら、知的障害のある長女も、小学校から電車通学などしないですんだだろう。
中学校の時、「学校に来ないでください。」と教師に言われて、送り返されてくることもなかっただろう。
地域の学校が健常児だけを対象にしている限り、教育は平等ではなく、差別はまかり通るだろう。
何と言っても、学校が差別をしているのだから、子どもたちは差別が当たり前だと思って育つだろう。

普通学級が、特別支援校のような実力をつけてこそ、やっとインクルーシブ教育は行えるのだ。
障害児が、「普通学級」の魅力を感じて、入学するほどの実力をつけるには、普通学級はどのように変えていけばいいのだろうか。
世界レベルで教育を考えて行くためには、そのような視点が必要だと思う。

ヘッダーは、今年の甲子園出場を決める西東京大会初出場
都立青鳥特別支援学校高等部、都立深沢高校、松蔭大松陰高校の連合チーム。


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