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キティちゃんでんしゃにのったよ。

2月の最後の日、とてもとても暖かい日の夕方。
いつものように、4時50分きっちりに、長女が帰ってきた。
「ピンポーン、ピンポーン。」
「きょうね、かえりに、キティちゃんでんしゃのったよ。」
とうれしそうに、まん丸い顔に満面の笑みをうかべている。

京王線は、新宿から八王子までの短い距離を走る私鉄で、北野から分かれて高尾山口まで行く高尾線。
高幡不動から多摩動物公園前の動物園線。
東府中から府中競馬正門前へ行く競馬場線。
調布から橋本まで行く相模原線がある。
そしていつもの、青と赤の二本線の車両のほかに、緑色のラッピングの高尾山電車。
京王多摩センターにあるサンリオピューロランドにちなんだ、ピンクのキテイちゃん電車などが時々走る。

今日、長女は、通所の帰りに、キティちゃん電車に乗ったのだろう。
キティちゃん電車は、サンリオピューロランドの最寄り駅、多摩センターがある相模原線を走ることが多く、長女が利用する八王子方面行きでは、あまりお目にかかれないレアな車両なのである。

こんなに、長女を喜ばせて、こんなにいい笑顔になれるなんて。
すごいよ。
電車。
たった一駅、2分ほど乗っただけで、長女を幸せにしてくれるなんて。
すごいよ。
京王井の頭線の、オシャレ電車(レインボー)もすごいよ。
ピンクの吊り輪につかまっただけで幸せになれると、長女に思わせてくれるんだから。

小学校から、電車の利用。
その中には失敗もあれば、ドキドキは毎日。
乗り過ごして、車庫に入ってしまうというアクシデントもあった。
心配ばかりの電車利用。ハラハラドキドキの電車利用。
でも、親切な乗客の方々や駅員さんに助けられて、今の生活がある。

帰ってきて荷物を片付け始めた長女。
作業着の袋を開けて、
「ロッカーで、トレーナーひっかけたから、アップリケして。」
と赤い、サンリオオールスターズのトレーナーを、私に渡してきた。
お直し大好きの私は、ハローキティの柄の生地を出してきて、キティちゃんの顔をくりぬき、ほつれたところにアップリケ。
なんだか素敵なトレーナーになったね。

心ほっこり幸せなひととき。
数十年前には、世界で一番不幸な親子だと思い、死ぬことばかり考えて涙涙の日々を送っていた。
ドラマ「リエゾン」で泣いているお母さんを見ると、当時の私を思い出す。
あの時の私は、こんな、ほっこりした日が来るなんて、全く思っていなかった。
人生ってわからない。
生きていたからこその今。
だけど、明日はどうなるか、このまま穏やかな日々が続くとも限らない。
だから、今日、いい日を過ごすことができて、ぐっすり眠ることができれば、それでいい。
もしかして、明日はもっと幸せになってるかもしれないんだから。

ラッピング電車
多摩センターの名誉駅長はキテイちゃん


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