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電車の中のおしりたんてい

我が家の長女、ほかろんさんは、知的障害者で51歳です。
160cmの背丈ですが、見た目と行動、発言には、ギャップがあります。
毎日顔を合わせている人は、ああ、ほかろんさんね。で済みますが、電車に乗ったときは、周りの人は知らない人ばかりです。
日曜にプールに行くときや、クリニックに通院するときは、私と一緒に電車に乗ります。

先日のことです。
160cmの大人のほかろんさんが、大きな声で、
「あ、ケンティ王子だ。」などと、社内のポスターを見て叫びます。
空港直結の電車の広告です。

「ど、ど、どとうのみすず。プリンがふります。」
と「みすず学苑」の広告を見て、興奮します。
「みすず学苑」というのは、東京周辺に点在する、予備校ですが、広告が摩訶不思議なので、本当に、この塾で大学に合格するのかしら?と思ってしまいますが、合格者は出ているようです。
電車内、新聞、たまにテレビで、コスプレ講師にプリンが降りかかる広告を出してます。

そして、ついに、ほかろんさんは見つけたのです。
「失礼こかせていただきます。ププツ」でおなじみのあのおしりたんていの広告を。

おしりたんていの広告は、電車の窓に貼られたシール状のものです。
おしりたんていの顔は、おしりです。
事件を解決した時の決め台詞が、
「失礼こかせていただきます。ププツ。」で、おしりたんていの顔から、ものすごいガスが噴き出すのです。
テレビアニメや絵本で、子どもに人気なんです。
子どもは、おしり好きですからね。

そして、広告シールのおしりたんていの顔の真下に、ひとりのおじさんが座っていました。
ほかろんさんは、おしりたんていの広告を見ながら、
「しつれいこかせていただきます。ぶぷっ。」と大きな声で言い続けます。
私はドキドキします。ほかろんさんの視線はおしりたんていの広告というより、おじさんに注がれています。
もしも、広告のおしりたんていの顔から、ガスが降りかかったら、おじさんに直撃です。(想像するには)

しかし、おじさんはスマホを見続けて、ほかろんさんの声は聞こえていないようです。
というより、大体の人は、いい人なので、聞こえないふり、見えないふりをしてくれます。
そしておじさんは、自分の頭の後ろの広告は見えません。
小さい子どもが周りにいない人はおしりたんていなんて知らないだろうし。

そう思って、降りるまで、やり過ごしました。
「こどものとも年少版」と「おかあさんといっしょ」が大好きなほかろんさんは160cmだけど、年少さんが好きなものが好きです。




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