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ヘドウィグ・アンド・アングリーインチ


#おすすめ名作映画

ヘドウィグ・アンド・アングリーインチ 2001年
ジョン・キャメロン・ミッチェル 監督、主演

俳優のジョン・キャメロン・ミッチェルが、ある日、飛行機にのったら、隣の席が、ミュージシャンのスティーヴン・トラスクだったところから始まるお話。
二人は意気投合して、話は盛り上がり、目的地に到着するまでに、一つのミュージカルができあがった。

それが、「ヘドウィグ・アンド・アングリーインチ」
オフブロードウェイで上演され大人気。
世界各国でも、人気を博した。

そのミュージカルを映画にしたのがこの作品。
そして二人は恋に落ちたそうだ。(そのあと分かれたけど)

共産主義体制の東ベルリンに生まれた少年ハンセルは、母親からプラトンの「愛の起源」の話を聞かせられて育つ。
自分に欠けている何かを、常に探し続けるハンセル。

真夜中に、ラジオから流れるロックにあこがれ、何とかベルリンの壁を越えて、西側の自由主義の世界に行きたいと強く望んでいた。
当時は、ベルリンの壁というものが実際に存在し、東ベルリンに住む人は、西ベルリンには行くことができなかった。
自由主義にあこがれ、何とかして壁をのり越え、西側の文化を味わいたいと思う若者たち。
私が小さいころ、ニュース映画で、ベルリンの壁をよじ登る人々、そして、引きずり降ろされる人々の映像を、何度か見たことがある。

成長したハンセルが、アメリカに行くためにとった行動は、アメリカ人と結婚して、渡米するという作戦。
ハンセルは名前をヘドウィグに変え、性別適合手術を受けて、女性の体になろうとしたのだが、手術は失敗し、怒りの1インチが残ってしまった。
なんて、悲劇。
「それでもいいわ」とアメリカの軍人と結婚して、アメリカに渡ったヘドウィグ。
アメリカで生活を始めたのだが、ある日、テレビで、衝撃的な映像が流れた。
ベルリンの壁が壊され、人々が壁の向こう側から続々出てきて大喜びをしているではありませんか。
壁はけっこう簡単に壊れたのだ。

「私の苦労はいったい何だったの。」

やがて夫は出ていき、ヘドウィグは、韓国人妻たちとバンドを組み、ロック歌手として生きていくことにした。
そしてある日、17歳のトミーに出会い恋に落ちる。
トミーのためなら、何でもしてあげるヘドウィグ。
でもトミーは、ヘドウィグの怒りの1インチに気が付き、逃げ出してしまう。
おまけにその時、ヘドウィグの作った名曲をすべて盗んでいった。
トミーはヘドウィグの曲を歌い、大ヒットを飛ばし、押しも押されもせぬ、ロックスターになってしまった。
なんてこと!
そして、ヘドウィグは、トミーの公演を追いかけて回る悲しい日々。

売れないロック歌手として生きるヘドウィグ。
でも大ヒット中のトミーの曲は、全部ヘドウィグのものだけど。
何という不条理。

だけどヘドウィグの生活は、みじめではない。
何と言っても素晴らしい音楽がある。
ヘドウィグのバンド(トラスクのバンド)「アングリー・インチ」を引き連れトミーの全米ツアーを追いかけながら巡業する。
この演奏が素晴らしい。
トラックの荷台で演奏する。スーパーのカートに乗って歌う。

そして私が一番好きなものは、ヘドウィグの貧しい暮らしを彩る小道具たち。
小物の数々。
部屋に干した洗濯物の色とりどり。
すべてがかわいらしくて、マネしたくなるようなインテリア。

ジョンキャメロン・ミッチェルの、圧倒的な歌唱力で繰り広げられる、魅力的な歌の数々。
彼の声は少しビブラートがかかって、なんだかほんのちょっぴり悲しくて、さみしくて、懐かしい。

私が一番好きな歌は
Wig in A Box

いつも心の底に流れている。




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