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選手個人を目当てにスタジアムへ足を運ぶ。それは日本では普通の動機。

欧州のスタジアム内で選手個人の横断幕を目にすることは少なく、Jリーグのように試合中に個人チャントが連続して歌われることも少ない。日本では選手個人の横断幕が掲出され、サポーターは個人コールを多用する。選手の移籍に伴って応援するクラブを変更するサポーターも存在する。欧州とは異なる応援方法は、Jリーグスタート時から、たびたび論争の材料とされてきた。選手個人を応援するファンを「個人サポ」「選手サポ」と呼ぶ場合がある。
※「個サポ」は、元来はサポーター集団組織に属することなく個人で応援しているサポーターを指す単語であり、今も、その意味は継続している。

選手個人を応援するチャントだけでCDが発売される時代すらあった。

まずは、この曲を聴いていただきたい。1993年4月と10月に発売された「カンピオーネ・ニッポン」だ。日本代表の応援CDで、選手個人の応援チャントのメロディーとなっている。

なぜ、日本には独自の応援スタイルが生まれ育っているのだろう。

野球の応援の影響など様々な説があるが、これは「日本の伝統」と考えて良い。

物語ではなく役者を見に行くのが歌舞伎の応援スタイル。

江戸時代からの応援姿勢が今に続いていると考えられる。実は日本人は、集団で作り上げるエンターテイメントの中でも、エンターテイメント全体ではなく、好みの人物の芸を応援することを好んできた。特に、その現象が顕著に現れているのは歌舞伎だ。多くの歌舞伎ファンは物語の結末を知っている。登場人物のキャラクターも知っている。その上で、役者がどのように演じるのか「芸を楽しむ」のが歌舞伎の楽しみ方であり、ファンは贔屓の役者を応援して舞台に声を掛ける。

「個人サポ」「選手サポ」は異端ではない。

サッカーも同じエンターテイメントと考えれば、日本の伝統的なエンターテイメントとファンのスタイルが似てくることにも、ある程度は納得がいくだろう。では、「個人サポ」「選手サポ」はクラブを応援しているのだろうか。2018年10月にインターネット調査を行って見た。回答者は全て特定のクラブを応援しているサポーター。

選手個人を応援することを主目的にしたファン(「個人サポ」「選手サポ」)からクラブを応援するサポーターに転身または兼任している人がいると回答したサポーターは56.9%。

あなたの周辺に、選手個人を応援することを主目的にしたファン(「個人サポ」「選手サポ」)からクラブを応援するサポーターに転身または兼任している人はいますか?(回答数: 211 )
「個人サポ」「選手サポ」からクラブ応援への転身は普通のことだといっても良いだろう。このようなファンからサポーターへの以降の歴史は思いのほか長く、現在のスタジアムにも「元城彰二ギャル」「元ナナギャル」「元カズファン」「元水沼(貴史)ファン」といった女性サポーターが存在する。当然のこと「推しメンから箱推しになりました」というセレ女ブームの頃からスタジアムに足を運び始めた女性サポーターも多数いる。

「特定の選手の存在」が特定のクラブを応援するきっかけになったサポーターは36.0%。

あなたが、特定のクラブを応援するきっかけとして影響を受けたことを教えてください。(回答数: 211 )
1/3以上のサポーターは「特定の選手の存在」の影響を受けていることがわかる。「あの選手がすごい!」「あの選手がかっこい!」から本格的にサポーターとしてのクラブ応援に移行する人はかなり多い。

「個人サポ」「選手サポ」を歓迎しないサポーターは実は少数派。

あなたはご自分の応援するクラブのスタジアムのゴール裏席で選手個人を応援することを主目的にしたファン(「個人サポ」「選手サポ」)の来場をどのように思いますか?(回答数: 211 )
批判や否定的な意見で表現されることが目立つ「個人サポ」「選手サポ」だが、実は、そのような、歓迎しないサポーターは少数派だ。「歓迎しない」「どちらかというと歓迎しない」を合計しても12.7%でしかない。

「個人サポ」「選手サポ」の是非を問う論争はナンセンス。「個人サポ」「選手サポ」から本格的にクラブを応援し続けてくれるサポーターをどれだけたくさん育成できるかを検討することの方が重要だといえる。

サポーターに関する各種アンケート調査の結果は、こちらに掲載しています。併せてお読みください。


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