Jリーグサポーターが育てた「トキ消費」により、アイドルとフェスがJリーグを追い抜いていった。

観客動員数に陰りが見えるJリーグ。実際に数字を見ればビッグクラブは大きく観客数を減らして2018年の夏休みを折り返した。浦和 31,984人(2017年は33,542人)、東京 25,058人(2017年は26,490人)、横浜20,254人(2017年は24,766人)という数字は厳しい現実を関係者に突きつけている。

では、誰が去っていったのか?ライトなファンだけが去っていったのか?そうではないという声がある。

「僕は、アイドルと夏フェスに取られてる、と見ています。」

「SOCCER UNDERGROUND BLOG」を運営し、「大迫半端ないって」のゲートフラッグでサッカー界以外からも注目を集めたUGさんは、このように語っている。

「ここ2~3年、シーズン開幕の度に廻りの知った顔がいなくなっていきます。」「レッズを応援するテンションというか熱も、下がってきている感じがしますね。」「発表される観客数減少以上にシーズンチケットの更新者数って減ってるんじゃないでしょうかね。」「僕は、アイドルと夏フェスに取られてる、と見ています。」

応援することが価値の高いコンテンツだった浦和レッズが、クラブの姿勢から覚めてしまったことが観客減少につながっているのではないか。そして、応援への価値を感じられるアイドルや参加性や共感性の高いフェスの魅力に流れていっているのではないかという仮説だ。

夏フェスは「参加者が主役」

レジーさんの著書「夏フェス革命 音楽が変わる、社会が変わる」で注目を集めたフェスというエンターテイメント。レジーさんによれば「夏フェスは『参加者が主役』」「最強の『自己演出コンテンツ』」なのだそうだ。「フェスは参加者が主役」「フェスはみなさんと一緒に作るもの」・・・こういったメッセージは、フェスを運営する人たちから長年にわたってたびたび発信されていることをサッカーファン・サポーターはご存知だろうか。

「トキ消費」が日本の消費を変えている。

日本では生活者の消費活動が“モノからコトへ”と変化してきたと言われてきた。その消費スタイルが、さらに大きく変化しつつある。

—「トキ消費」とは、具体的にどのような消費行動を指すのでしょうか?

酒井:例えば、アイドルグループ「ももいろクローバーZ」の活躍が挙げられます。彼女たちは武道館での単独ライブや「NHK 紅白歌合戦」に出演するという目標を掲げて、ファンと一緒に成長していく姿勢を打ち出して、徐々に人気を獲得するようになりました。まさに同じ“トキ”を共有しようという姿が共感を得たのです。

グラフは博報堂生活総合研究所調べ:20~69歳/男女1500名/東名阪3都市圏/2018年1月調査

「トキ消費」には3つの要素がある。

非再現性」 その時を逃すと同じ盛り上がりや同じ感動は二度とできない。
参加性」 参加者が主体的に参加できる運動体を作っている。
貢献性」 参加者は自分がその盛り上がりに貢献していることを実感できる。

ここまで読むと、心当たりのある読者も多いのではないだろうか。

この流れをスタートさせたのは、実はJリーグだった。

そう!実は「コト消費」が叫ばれていた時代に、一足早く「トキ消費」という新しい消費スタイルを誕生させたのがJリーグでありサポーターであったのだ。「今しかない試合を観戦するだけではなく応援するという手法で参加し勝利に貢献する」・・・これはJリーグ以前には、極々一部でしか行われていなかった消費スタイル。25年間を経てJリーグは日本の消費スタイルまでも変えていったのだ。

ところが「Jリーグ凄いんだね」で終わらせることが出来ないのが現実だ。

「トキ消費」を育てたのはJリーグサポーターであった。しかし、Jリーグはあっという間に追い抜かれ、ついには多くのサポーターがアイドルやフェスに流出していると考えられる。今や「非再現性」「参加性」「貢献性」を強く感じられるエンターテイメントの代表格といえばアイドルやフェスが記事で取り上げられるまでになっている。これはJリーグの価値や魅力の根幹を揺るがす、これまでにはない大きな危機であると言える。なぜならば、以前とは違い、アイドルやフェスが提供する価値や魅力がJリーグの提供する価値や魅力と似たものになってきているからだ。

「スタジアムに来る人は渋谷に集まっていない」「パーティピープルが集まっている」。

2002年以来の長年の謎であった「日本代表の試合後に渋谷スクランブル交差点に集まる人たちはサポーターなのか?」という疑問に、位置情報解析によって答えが出た。「過去にサッカースタジアムで検知された人を『サッカーファン』と定義して、当日の全体に占めるサッカーファンの割合を調べてみたところ……実は普段の試合日と大きな変化が見られなかったんです。」「六本木など繁華街で深夜に1ヶ月3回以上検知されている人を『パーリーピーポー』と定義しているのですが、普段の渋谷が5%ほどなのに対して、試合日4日間はすべて普段の渋谷を上回っています。特にベルギー戦は約3倍に増えました。」

この調査結果記事を見て安堵に胸をなで下ろしている人が多数いる。

実は、こうした『パーリーピーポー』の多くは、かつて「Jリーグがトレンディだった」時代はJリーグのスタジアムに足を運んでいた層だった。彼らは90年代中盤から、スタジアムから流出していった。そして、他の聞き取り調査等でわかるように、彼らはJリーグに無関心な層だというわけではない。Jリーグの動向はある程度は把握しており、好きなクラブを言える人が多く含まれている。しかし、彼らはスタジアムには足を運んでいないのだ。渋谷で騒いでいる人たちは「サポーターとは違う」で安心して良い状況にはないのだ。彼らをスタジアムに呼び戻す方法はあるのだろうか。

「トキ消費」が日本の各所で広がっている今、Jリーグはファンを奪われる側に立っている。

当然、クラブはそれを意識し、参加性の高いイベントをスタジアムで多く開催するなど対策をとっている。試合を観戦するだけではなく、スタジアムと周辺で仲間や家族と1日を楽しく過ごせる仕掛けを増やしている。

しかし、大切なのは、試合後に「自分が試合の盛り上がりに貢献していることを実感」出来たかどうか。これはクラブだけでは実現できない。サポーターによる受け入れ姿勢が、その一部を大きく左右することになる。

サポーターには、ただ「勝つための応援」だけではなく「仲間を増やす応援」の視点も求められる。


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日本のサポーター論の入口

サポーターとは誰で何をしている人たちなのか。日本固有の文化とサッカーが融合して生まれたサポーターカルチャーを文章化した。日本のサポーター論の入口を紹介する。
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