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華麗なる〈展覧会の絵〉&哀愁のラフマニノフ|読売日本交響楽団 日下紗矢子(特別客演コンサートマスター)

こんにちは!note更新担当のたぬ子です。

一昨年の『愛媛県県民文化会館リニューアルオープン記念コンサート』で、会場を沸かせた読売日本交響楽団(以下、読響)が、指揮者/小林資典氏、ピアノ/小山実稚恵氏と共に、愛媛に帰ってきます。

そんな読響のキャッチフレーズは、”楽しく、元気”。
楽団員同士の仲が良く、楽器間の垣根を越えて、楽しみながら音楽を作り上げるオーケストラです。

今回は、日本のみならずドイツのオーケストラでも、コンサートマスターとして活躍されている、読響特別客演コンサートマスターの日下紗矢子くさかさやこ氏に、演奏される曲の聴きどころや、クラシックコンサートの楽しみ方について、お伺いしました。

心地よい『ルスランとリュドミラ』、耽美な『ラフマニノフ』、麗しき『展覧会の絵』

写真提供:読売日本交響楽団

ー 今回演奏される、歌劇『ルスランとリュドミラ』序曲/グリンカ、『ピアノ協奏曲第2番』/ラフマニノフ、組曲『展覧会の絵』/ムソルグスキー(ラヴェル編)の聴きどころを、それぞれ教えていただけますか。

 『ルスランとリュドミラ』は、私がベルリンで初めてオーケストラのコンサートに行った時に、初めて聴いた曲で「こんなに楽しい曲があるんだ」と、わくわくしたのを覚えています。
 ですので、みなさんにも同じように感じていただけたらと思います。

 また、ラフマニノフのピアノ協奏曲第2番は、日本で非常に人気の高いコンチェルトで、壮大なロマンチズム音楽ですので、きっとみなさんの心に響くことでしょう。
 そして、ソリストが日本屈指のピアニストである、小山実稚恵さんですので、非常に聴きごたえのある演奏をされると思います。

 『展覧会の絵』は、1つ1つの曲にすごく特徴があって、それこそ美術館で1枚1枚絵を観ているような感覚にさせてくれる、場面を想像しやすい曲ですね。

音楽家たちと共有して奏でる音

写真提供:読売日本交響楽団

ー 初めてオーケストラで演奏された時のお気持ちを、覚えていらっしゃいますか。

 高校や大学の授業で、オーケストラをやったことはあるんですけど。
 当時は、はっきり言ってオーケストラの音楽に興味をもっていなかったので、ことさらそれが楽しいなと思った記憶がありません。

ー …学生時代、オーケストラに興味をもっていらっしゃらなかったということに、とても驚いています。

 元々学生の頃は、そこまでオーケストラに興味をもっていなくて、ソロばかりを繰り返し練習していました。
 ですので、オーケストラの楽しさというのは、ドイツでコンサートマスターのポジションに就いてから、目覚めたという感じなんです。

ー では、オーケストラの魅力を教えていただけますか。

 一人で演奏するのではなく、たくさんの素晴らしい演奏家たちと一緒に音楽を、時間を、共有して1曲を仕上げていく。その過程で、それぞれの人間性や音楽性まで共有していけることですね。そこに幸せを感じます。

― 音だけではなく、人間性・音楽性まで共有しているんですね。

 指揮者のもとで、リハーサルの期間を通して、みんなの個性を調整していくというプロセスが、公演ごとに毎回違うので、非常におもしろいなと思います。

ー ドイツのオーケストラと、日本のオーケストラで似ているところはありますか。

 音楽が好きで、この音楽を演奏したいという想いは、世界共通なのではないかなと思います。それが一番大きいんじゃないですかね。

ー では読売日本交響楽団は、どのような存在ですか。

 私は、頻繁に帰国できるわけではないので、いつも一緒に演奏できている仲間ではないんですけれども、みんなの音楽に対する姿勢が大好きで、一緒に演奏し続けたいなと思える仲間ですね。

オーケストラのコンサートマスター、室内楽のリーダー それぞれの役割

写真提供:読売日本交響楽団

ー オーケストラのコンサートマスターだけではなく、室内オーケストラのリーダーも務められていますが、コンサートマスターとリーダーで、役割にどのような違いがありますか。

 まず、オーケストラでコンサートマスターとして演奏する時は、指揮者が音楽づくりの方向性を全て示してくださいますので、私は指揮者とオーケストラの間に立って、演奏が円滑に進むように配慮する役割です。
 次に室内オーケストラは、指揮者無しで演奏するので、リーダーがコンサートマスターと指揮者、両方の役割をします。
 ですので、リハーサルを進めることもそうですし、どういう音楽づくりをして、どのように仕上げていくか。そのアイデアや、みんなをまとめあげることも、私の役割になります。

ー オーケストラ、室内楽、ソロと活躍されていますが、どの活動に重きを置かれていますか。

 それぞれに魅力がありますね。
 オーケストラにはオーケストラの楽しさがあるし、ソロを弾いてると本当にソロの楽しさもあり、室内楽のように小さな編成の演奏は、みんなの呼吸が集まる楽しさがあって、より緻密な関係性・音楽づくりができて。
 欲張りなんですけれども、どれも続けていきたいですし。
 特に、どれを一番大事にしてるということはないですね。
 どの活動も、1つ1つ大切に演奏しています。

音楽とは、永遠に興味が尽きないもの

写真提供:読売日本交響楽団

ー 音楽はどのような存在ですか。

 喜びであったり、興味が尽きないものですね。

ー 興味が尽きないというのは、具体的にどういうことでしょうか。

 自分が興味をもって「これは、どうなってるのかな」と、もっと知りたいと思い、調べたり、練習したりしています。
 クラシック音楽は、本当に数多くの曲があるので、それを全部弾いていこうとか、全部知ろうと思うのは、ほぼ不可能なことではあるんですけれども。
 弾く機会を得た曲や、好んで聴く曲に関しては、もっと知りたいなと思いますね。

ー 同じ曲に興味が尽きないんでしょうか、それとも多くの曲があるから音楽に興味が尽きないんでしょうか。

 同じ曲でも、数年前に弾いた時の自分と今の自分は違いますので、演奏する時期が違えば、新たに興味をもてる存在になりますね。

下調べで生まれる楽しさ

写真提供:読売日本交響楽団

ー クラシックコンサートに行かれる方は年齢層が高いイメージですが、子どもや若者がクラシックに親しむためには、どうしたらよいと思われますか。

 非常に難しいテーマですね。
 クラシックの楽しみ方は人それぞれですが、”下調べをすることで生まれる楽しさ”って、あると思うんですね。
 なにも知識をもたず演奏を聴いて、楽しめる時もあれば、下調べをすることによって、おもしろさがグッと増す時もある。
 それは別に、クラシックコンサートに限らず、美術館や動物園、なんでもそうだと思うんです。
 もちろん、初めて聴いたクラシックコンサートで「うわ!すごいな!」と、感動していただいて「もう1回聴きたい!」となるのが、理想的ではあるんですけれども。
 そうならなかったとしても、事前にプログラムの曲を聴いたり、オーケストラの楽器について下調べをして、また音楽に接してもらいたいです。

― J-POPのライブに行く時に、セトリを確認するのと同じですね!

 まったく同じだと思います。
 クラシック音楽に限らないと思うんですけど、そうやって下調べをすることが、新しく訪れる場所や初めて聴く公演をもっと楽しむコツかな。

ー 公演を楽しみにしている方に、メッセージをお願いします。

 今回のコンサートは、あまりクラシックをお聴きになったことがない方も、きっと耳にしたことがあるプログラムになっていますので、みなさんに楽しんでいただけると思います。
 そして、楽しんでいただけるように、私たちも精一杯の演奏をしたいです。

詳細・問い合わせ先


読売日本交響楽団公演
2022年10月1日㈯ 13:00開場 14:00開演
愛媛県県民文化会館 メインホール

S席:6,500円 A席:5,500円 B席:3,000円

問い合わせ先
公益財団法人 愛媛県文化振興財団
089-927-4777(平日9:00~17:00)


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