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同じ人の夢を見る(Ⅰ)

ずっと同じ人の夢をみる


私はずっと同じ人の夢をみている。

ここでは「彼」と呼ぶ。
その「彼」は高校生のころ一時的につきあっていた人。

実在はしている。
実在はしているが、実在していないような人として登場する。


彼の夢を見始めたのは、高校を卒業して、かなり経ったころ。

ふいに思い出すように見て、それから夢への出演がレギュラー化(?)していった。

彼がいま、どこで何をしているか知らないし、
知りたいとも思わない。
会いたいとも思わない。
もちろん、幸せでいて欲しい。

現実の彼の「現在」にはさほど興味がない。

それは、
過去の素敵な思い出が打ち砕かれるのがいやだからとかじゃない。

現実の彼そのものはただの対象物であるから。

見る影もないほど変わっていて当然だし、
かっこよく歳をとっていても当然だ。

夢の中の「彼」の存在、
何を象徴し、何を伝えたいのか。

なぜ、同じ人物として現れて、
こんなにもロングランに最多出演しているかのほうが気になる。

「彼」自分にとってどんな意識の表れなのか。
この夢自体、どんな存在なのか。

それが気になってずっと夢日記をつけている。

「彼」の登場


27歳くらいから急に夢の中に現れるようになり、それからずっと。
そして今にいたる。

そして、なぜか一緒に成長していく。

「彼」が登場する夢を見て目覚めると、
いつもなんとも言えない穏やかな優しい気持ちになる。

そして、ストーリーそのものはじれったいほど展開が遅い。

初期の頃はずっと、
話したいのに話しかけられない、
気になるのに知らないふり、
みたいな関係が続いた。

ただ見てるだけ。
目で追いかけるだけ。
そんなのが何年か続く。

そのうちに
少しずつふたりの距離がだんだんと近づいていく。

たまには話しをする仲にまで。

でも電話番号を知りたいのに聞けない、とか
電話したいのにうまくかけられない、とか
そんな感じで相変わらずじれったい。

しばらくはそんな感じで、うまく意思疎通がはかれない全くの恋愛初期状況。

まあ夢の中のエピソードだから、
伏線回収したりとか大転換とかもべつに期待していなかったけど。

現実の方で私も年齢を重ねていくと、いろいろと環境も状況も変わる。

すると、夢の中の彼も登場場面が変わっていく。

学校のころのままだったり
職場が同じだったり
取り引き先の人という設定だったり。

現実の私とともに成長した姿で。
実際会ってないから面影だけだけど、「彼」とわかる。

話しかけたい、でも話せない、みたいな状況は同じ。

そんな感じが続いていた。
「彼」登場なんだけどだいぶ設定が変わったり。

別なんだけど同じ「彼」 


ときどき別のエピソードが挟まっていた。

これ、「彼」かな?雰囲気や心の状況が似てるけど、
姿形は私でも「彼」でもない。それぞれべつの人物なんだけも、あ「彼」だなと分かる。

例えば、どこか大正か昭和のあたり。
私はどうも、妾のような立場。
相手が来るのを待つだけの日々。

とか

年代が特定できないほど昔のお百姓さんの家の縁側にいて、
何か作業をしながら彼のことを考えていたり、とか。

姿形はお互いに違うけど
私と「彼」なのかな、と思う夢がいくつかあった。

レギュラー(本編?)の夢では相変わらず見ているだけ、の日々。

お互いに意識しているし目も合うのに、何かアクションしたいが何も進展しない。

しかし、そのもどかしさが心地よい。

そんな感じで少しずつ場所や設定をを変えながら、
この夢のシリーズは続いていった。

年に何度も見る夢だったが
あるとき、大きく進展した。

それは体感的にもとてもリアルで、その夢を境に傾向が変わった。

リアルな夢になっていく

設定はまた、高校生。

しかもなんとなく、あ、私いま高校生だなーという意識感覚もある。

この夢の中の高校生の自分がこれから何するか応援しながら暖かく見ている感じ。

とにかく体感、質感、空気感、匂い、もろもろすごいリアルだった。


夢の中で私が勇気をだして、「彼」の教室をたずねて呼び出す。

美術の時間だったらしく、筆洗いのバケツと筆をもって「何?」という感じで現れた。
「ちょっと話があるの」と

私は「彼」の手首をつかみ、ロビーまで連れていって告白した。

「ほんとはずっと好きだった。」
「もっと話をしたかった。」
「もっと相談したかったし相談されたかった。」
「もっとこんなふうに一緒にいたい。」

そんな感じのことを、すらすらと言っていた。
(これ、どっちかというと現在の気持ちだよなあーとか思ってた)

どうやら「彼」の方も、同じ気持ちだったようで、
ほっとしたように、ロビーの隅に行き、
それから授業をサボって何時間もいっしょにいた。

なんの話しをしたかなんて覚えていない。
ただ、いっしょにいるだけで楽しくて、
肌が触れるか触れないかの微妙な距離なのに、
相手の体温や匂いまでもリアルに伝わってきた。

何か安心する。
心地よい空気感。
穏やかに。

目覚めたあとも、
その心地よい空気感の余韻がしばらく続いた。

その後は気持ちは確認しあっているが、つかず離れず、
またそこで止まり進展しない夢がつづいた。

今日は会えるかな。
今日は話せるかな。

目で「彼」を探し、とらえると追いかける。
つい見てしまう。
目が合うと「彼」も微笑み合図をおくる。

電話番号もきいたし、
うまくつながらないときもあるし、つながるときもある。

夢の中だけど実質、公認で付き合っているような関係ではあった。

時間を超えた夢


どうじに
別の時代の夢も見たことがある。

高校生から少し成長した姿の夢と、
現在の姿の夢と、
少し歳をとった姿の夢と。

現在の姿の夢は、だいたい、友人の誰かが「彼」の居場所を突き止めたから、会いに行ってみれば?と促される。

私も現在の感覚に近いので
とくに会いたいわけでない。気乗りしない。

それでも会いにいくと、彼には別の家族がいて、
私はそれをただ眺めている。

ふうん?幸せならいいんじゃない?
幸せでいてほしい。

幸せかどうかまではわからなかったけど。

べつの夢では、
現代の年齢で街で偶然に出会うが、目の前で「彼」がばったり倒れた。
死んだかも?と焦り、助けに人を呼ぶが、このかたの身内?住所やご家族は?と聞かれて、
あ…私はこの人の今のこと、何も知らないんだ、と思い知らされる。

また別の夢で
少し歳をとった老人のようなふたりで校舎を訪ねる。

走りだす高校生をみて、彼は「若いね」といい、
私は
「今の歳もなかなかいいわよ」なんてことを言う。

どうやらここでは長く連れそっているらしい。

そんな感じで、パラレルワールドのように
ときどき別の時代感やべつのシチュエーションが挟まれながら
相変わらず不定期に、夢は続く。

そして、やはり心地よい空気感が伴うので半日くらい良い気分になる。

そしていつも、夢日記にメモしておく。  
覚えてて記録してるエピソードだけでも300近くはあると思う。

大きく展開


ロビーの夢からは、少し距離が近づいていく夢になっていた。

そうこうしていると、進展があった。
唐突に結婚していた。

地味な結婚式だったけど、
知ってる人知らない人、みんなに祝福されて幸せな夢だった。
マリリンモンローまで何故か祝福してくれた。

それからしばらくは、夢の内容は

結婚するの。
結婚したの。

みたいに、結婚するまえと結婚したあとを行ったりきたりしながらが続いた。

肌が触れそうで触れてないのに、ぴったり寄り添っているような感覚、
気持ちがぴったりシンクロしているような心地のよい空気感の夢も相変わらず。

たまには、喧嘩でもしてるのか、ちょっとツンケンした態度になったり、
彼がべつの女の子と話しているのを見かけて、嫉妬したり悲しくなったり、

なんかがエピソードとして組みこまれている。

やっぱり何か進展してる感じだった。

ロビー夢から気づいていたが最近は夢を見ながら
現在の自分の潜在意識のような気持ちも入っていることに気づいた。

目の前に「彼」がいて仲良くしていながら
どこか後悔しているような気持ちでみている別の視点を持ったもうひとりの自分がいるような感じ。

海辺で「彼」に穏やかに自分の気持ちを話してる、幸せで心地よい空気感。
夢の中の素直な自分。

同時に
(もっと素直でいればよかった)と後悔する気持ちで俯瞰している現在視点。

あるいはその逆に、(あぁ自分の方が相手の思いに気づいてなかったんだな)という小さな気づきとか相手の気持ちもちょっとわかったりとか。

夢というかあの世っぽい。

それでも何十年、こんなふうに少しずつお互いに成長しながらのシリーズものの夢を見るのは興味深い。

彼という対象物そのものより、彼という存在の象徴する意味のほうが気になった。
「彼」なんだけど「だれ」

この話しと関係してかしてないのか、
ある時、自動書記ならぬ自動執筆のようなことが起きた。
現実の不思議展開。


[つづく]

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