【朗読】紫式部日記54  歳末の感慨⑷

【朗読】紫式部日記54 歳末の感慨⑷

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【歳末の感慨】の最後の部分です。追い剥ぎ事件のその後。

「御厨子所の人もみな出で、宮の侍も滝口も儺やらひ果てけるままに、みなまかでにけり。手をたたきののしれど、いらへする人もなし。御膳宿りの刀自を呼び出でくたるに、
「殿上に兵部丞といふ蔵人、呼べ呼べ。」
と、恥も忘れて口づから言ひたれば、たづねけれど、まかでにけり。つらきこと限りなし。
式部丞資業ぞ参りて、所々のさし油ども、ただ一人さし入れられてありく。人びとものおぼえず、向かひゐたるもあり。主上より御使ひなどあり。いみじう恐ろしうこそはべりしか。納殿にある御衣取り出でさせて、この人びとにたまふ。朔日の装束は盗らざりければ、さりげもなくてあれど、裸姿は忘られず、恐ろしきものから、をかしうとも言はず。」

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