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地銀の国債投資戦略全部抜く(予告編)

はじめに

前回のnoteで、「利上げで金融破綻が発生するぞ」という言説に反論していた際に、思わぬ発見があった。それは金融機関によって市場運用リスクの取り方が全く異なるということだ。

金融機関はバーゼル規制対応で、定量・定性的に自分たちがどの程度のリスクに直面しているのかを開示しなければいけないが、その中に、金利上昇リスク関連の項目がある。前回のnoteで確認したIRRBB(銀行勘定の金利リスク管理)がそれだ。ここに記載されている項目は

  • 金利の上方・下方パラレルシフト(短期・長期ともに金利が100bp=1%変動したとき)

  • イールドカーブのスティープ化(短期金利→ or ↓、長期金利→ or ↑)

のシナリオそれぞれ(国際基準金融機関はもっとたくさんシナリオ数があるが、国内基準金融機関はこの3つだけでOKになっている)について、損失が発生するならば、それぞれのシナリオにおいての損失額をシミュレートし、その中で最大の損失の額をΔEVEと呼ぶ。

そしてもちろん、金融機関は自ら損をしようと意図する愚か者ではなく、(実際の結果は別として)利益をあげようとしている。つまり、各銀行のIRRBBをすべて見ていけば、各銀行が今後の金利動向について、どのような期待を抱いているのか・想定をしているのかがわかる。言い換えれば、こうした期待・想定にもとづいて国債のポートフォリオを組んでいるわけだから、IRRBBの各シナリオで想定される損失額を見ることで地銀の国債運用戦略を推測することができるというわけだ。こんな面白そうなテーマやらなきゃ損でしょ、というのが次回以降の記事の趣旨である。おそらく長くなることが想定されるので、複数回に分けることになるかもしれない。

とはいえ、筆者は日本全国の地銀をすべて把握しているわけではないので、前回も参考にした東洋経済の地銀自己資本比率ワーストランキングの上から順に見ていくことにする。というわけで乞うご期待。

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