見出し画像

心霊スポット

これは私が横浜でバーをやっていた時の話。
いつもは電車で来るので終電前には帰る常連の男の子が珍しく深夜に一人でやって来た。
その頃のお店の常連さんには何故か霊感が強い人が多く、彼もその一人。

なんだか困ったように見えたので、なんかあったの?と聞くと、聞いてくださいよ〜と事の顛末を話してくれた。

店に来る前、彼は久々に会う友達カップルと居酒屋で飲む約束をしていて、
その店に先に着いて一人で軽く飲みながらカップルを待っていた。

ほどなく手を振りながら彼らが入ってきて、テーブル席で乾杯して飲み始めると、彼女の方が
「こないださー、2人で心霊スポットに行こうってなって行って来たんだけどヤバくてさあ」
と話し出した。

心霊スポットとして知られているトンネルへドライブに行ったと言う。

「で、トンネルの途中で急に車がなんか引っ張られてるみたいに進まなくなってさあ。
少しずつは前へ動くんだけどアクセル思い切り踏んでも進まないの。他の車も全然通ってないしヤバイヤバイ!ってなって、
後ろなら行けるかなと思って振り返ったら、
女の人が車の後ろに貼り付いてこっち見てて!
ギャーー!ってなったんだけどとにかく出るしかないし、もう振り返らないでホントじりじり進んでトンネルから出たら、急にスっ!て軽くなって走り出して、その時は後ろ見ても誰もいなかったの。超怖かったよねー!」

彼女は笑いながら話し、彼氏の方もマジ怖かったよなーとビールを飲んでいた。

それを見て常連の彼が一言、

「え、その女の人って、こんくらいの髪の人?」

と肩の下あたりを手で示すと、
カップルは

「え…そうだけど…なんで」

と凍りつき、彼はうっかり

「あ、今日友達連れて3人で来たのかなと思ってたら……ごめん、そっか」

と、彼にはカップルには見えていない"もう一人"が彼らにくっついて来ているのが見えていたことを口にしてしまった。

すると彼女の方が青ざめて「いやぁぁぁ!!」と叫んで店を飛び出してしまったらしい。
慌てて彼氏も「ごめん!!」と言って彼女を追いかけて出ていってしまった。

『ああ、言わない方が良かったのかなぁ…』

と思いながら、カップルを追いかけていくその"もう一人"の背中も見届け、

彼は一人で頼んだ料理とお酒を片付けて、私の店へ来たと言うのだ。

「まあ、明日大丈夫かまた連絡しますけどね!なんかその女の人も一緒に出ていったから。もう困りましたよ〜終電なくなっちゃって」

と彼は笑って話していたのだが、
私は「いや怖!!なんその話!怖!!」と一人でしこたま怯えたのであった。

その後カップルがどうなったのか聞けていないが、大丈夫だったんだろうか。

元々私は心霊スポットとかお化け屋敷とかが怖くて行かないタイプなので大丈夫だが、より強く、絶対そういうところに行かないぞと誓った。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?