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書評:高校生を、もう一度 by浦部はいむ

以前からソーシャルでも活躍されている漫画家浦部はいむさんの待望の単行本。ついにイギリスで入手してまとめて読むことができましたが、やはり心に火が灯るような優しさに溢れていました。人間関係のすれ違いで高校を中退しパートで働く22歳の七海の視点で描かれた、色々な事情があって定時制で学ぶ人達の生き様を描いた短編集のような本。

各々のエピソードが、七海とその相棒とも言える32歳のシングルマザー木村さん中心に描かれている。木村さんは幼く見えるけど17歳の娘がいるしっかり者。決してエリートとは言えない二人だけど、その二人が色々な場面で協力しあい、人の痛みに寄り添い、悩み苦しむ同級生が一歩進む後押しをする様子が誇張や綺麗事なしに描かれている。

口うるさいスーパーの中卒店長、入試に失敗して自殺願望に苛まれる16歳、勉強が全くできず女にうつつを抜かしひ弱そうな同級生を虐める少年…冒頭では「この登場人物にどう好感を抱いたらいいの?」と思うような登場人物に対して最後には「頑張れ」という思いを抱いている事にきづく。

今の時代「こんなに頑張っているのになぜ?行き場所がないの?」と悩む人に読んでほしい。絵柄も派手ではなくやや懐かしい感じだが、線の一本一本が生き生きしていて絵心を感じる。作者の浦部さんは徹底して弱い者を思いやり寄り添うものづくりをされている作家さん。最後に一歩踏み出す七海に作家さんの姿を投影してしまいました。

『高校生を、もう一度』著者:浦部はいむ

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