見出し画像

エアーズロックの神様

トモです。

先住民族アボリジニの言葉では「ウルル」素敵な響きだ。ダイキンのエアコンを思い出しては駄目だ。オーストラリアにいるなら、誰もが一度は訪れたいその場所。
当たり前だが、オーストラリアは大きい。
誰もが認識している世界地図における日本との比較からの大きさ。そのぐらいのイメージの10倍は大きいと思う。
日本だって、北海道は大きく広いのはみんな知っている。だが意外と、想像以上に時間がかかるエリアもある。車で旅行するのが好き方ならご存知だろうが、えっ、まだ静岡抜けてないの?と言う感覚や新潟を縦断した時にいつまで同じ市内を走っているんだ?という感覚は少しは分かるはずである。その感覚の10倍は大きく広いということだ。
ウルルまで自分の車で行くという猛者は多くはないが、自分の知り合いでも何人かいた。
ガソリンスタンドなんて途中で無いに近いから、ガソリンや食料などはしこたま積んでいく必要がある。もはや映画などで見る国内脱出みたいな光景で行くことになる。
そこまですると感動もひとしおなんだろうけど、行った人の言葉、「死ぬ気で行くんだよ」って一言は中途半端な思いつきでは行ってはいけないレベルだと思う。


 一般の人はもちろんツアーの参加となる。
自分も参加したのは現地で申し込んだツアーで、3泊4日でウルルに行って帰ってくるみたいのだった。
メルボルンに住んでいたので、まずは列車でアデレードに移動する。それからアリススプリングへ。文章に書くとたった2.3行のことなのだが、この移動だけで、果てしなく疲れる。
その時は、日本から一時的に来たパートナーと一緒だったが、日本人はうちらだけだった。
アリススプリングからはバスでいよいよウルルに向かう。
バスガイド的な添乗員が一人いたが、陽気な女性のオージー(オーストラリア人)で
楽しかった。自己紹介を一人ずつするという事で、自分の番が回ってくるあの緊張感はたまらなかった。
パートナーはえっ、あたしもやるの?出来ないよ、と少しの押し問答を繰り返したあと頑なにやりたがらなかった。結局うちらは二人で立ち上がり、自分が二人分つたない言葉で何かを言った。
 バスの中では、みんな寝ていたり本を読んでいたりしていた。
 どこまでも続く、青い空、乾燥した茶色と薄い緑の外の景色に感動したのは最初だけで、いつまで経っても変わらないその景色はただ右から左へと流れていくだけだった。
旅の工程が良く分からなく、何時ごろどこに着くのか、あとどれくらいかかるのかは全く分からなかった。(多分最初の段階で説明はあったんだろうが)

バスでの1日目の宿泊場所で、ブッシュキャンプというのがあるというのは聞いていた。みんなでバーベキューをするぐらいだと思っていたが、甘かった。
 夕方ごろだろうか、そこで準備を始めたのは。向こうは19時ごろでも時期によっては昼間のように明るかったりする。オーストラリアにはサマータイムという制度があり、とにかく昼間が長い時がある。
薪に火をつけたり、キャンプの準備を皆で協力しあってする。いかにもという、豪快で硬い肉を焼き始め、ビールやワインと一緒に流し込む。こういう時には味はともかく雰囲気なので、それはそれで美味しく楽しい時間が過ぎた。
 だんだんと周りも暗くなり始めたかと思うと、あっというまに真っ暗になった。
さすがに気温もグッと下がる。
すると、みんなで薪の周りにシュラフにくるまり満天の星を眺める時間があった。
 心地よい酔いと旅の疲れや緊張感から
横になって上を見上げ力を抜いていると、
思わず寝そうになる。早々ともう寝息を立てている人もいる。
 どれくらいの時間がたったのだろうか、
この異変というかこの事態に気がついたのは。
この「星を眺める時間」のあとに、何かがあるわけでもなく、どこかバンガローやホテルに移動して寝るわけではなく、このままここで夜を明かすということがやっと分かった。いや、大自然を満喫するのは分かった。朝からそれは景色を含め十二分に味わっている。わざわざ外の硬い土の上でシュラフで寝なくても。
 あー、シャワーが浴びたい。せめてテントの中で眠りたい。そんな願望はのほほんと生きてきた日本人の贅沢な考えなのか。
こんなことなら、寝落ちするぐらいしこたま酒を飲んでしまえば良かった。

そんなことを考えつつ、いつのまにか朝を迎えていた。