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小説・うちの犬のきもち(14)・テレビについてのぼやき

うちのみんな、テレビに釘付けだ。
スコットランドでゴールデンレトリーバーの祭典というのがあるらしく、犬と飼い主たちが楽しく踊っているらしい。それから日本の女優さんが現地のブリーダーさんの家を訪れる。人懐っこいゴールデンレトリーバーが女優さんにおもちゃを見せびらかせにくる。そのおうちは、とてもステキなところで、広い庭と、牧場みたいに広い裏庭がある。家の中も、庭も、手入れが行き届いているんだそうだ。女優さんがブリーダーさんとお話する。ブリーダーさんは、必要以上に繁殖させないのだと言う。譲り渡す相手とは何度も面接し、ふさわしくないと思えば申し出を断ることもあると言う。犬の幸せを考え、犬が生涯人間と喜びと愛情を分かち合えることを希望していると言う。

おばあちゃんもパパンもママンもテレビを見てうっとりしている。ぼくはオスワリをきっちりし直して、ここにいることを主張する。

ママンがぼくの耳に手を伸ばしてそっと撫でてくれて、それから抱っこをして膝に乗せてくれる。ママンはそれでもまだ半分テレビの方を向いている。

「白い子もいるんだ」
「ほんとね」

テレビではさっきの女優さんが、白いゴールデンレトリーバーに挨拶をしている。

ぼくはママンの腕にアゴをのせて、大きなため息をつく。
ママンがぼくの頭をなでる。

みんなテレビが大好きだ。家にはあちこちにテレビがあって、ときには誰もいないリビングのテレビがつけっぱなしになっている。ぼくはテレビが嫌いなわけじゃない。ただ、テレビがよく見えていないから、みんなと一緒にテレビを見られないことと、みんながテレビに夢中になってしまうのが、少し・・・というか、とっても、さみしいような、かなしいような、とってもイヤな気分になるのだ。みんな一緒にいるときは、みんな一緒にお話したり、たとえお話しなくても、ゆっくり過ごしたら良いのに。

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