Takuya/ 教育書レビュー

教師やってます/ 修士(学術) / 人を育てることに関わる方々にオススメの教育書を紹介…

Takuya/ 教育書レビュー

教師やってます/ 修士(学術) / 人を育てることに関わる方々にオススメの教育書を紹介します (教師、教育業界で働きたい学生、塾講師、保育士、研修や人材育成担当者、社会教育担当者、子育てをしている方々など)

最近の記事

『「資質・能力」と学びのメカニズム』

『「資質・能力」と学びのメカニズム』奈須正裕(2017)東洋館出版社 先月に『資質・能力ー理論編』の紹介をしました↓  『資質・能力ー理論編』がどちらかといえば、「資質・能力」の背後にある学習理論の解説が中心だったのに対し、  『「資質・能力」と学びのメカニズム』はより実践的なところまで踏み込んで書かれている本です(もちろん、こちらにも基盤となる学習理論の話は出てきますが)。  また、筆者は新学習指導要領ができるまでのプロセスも紹介されているので、政策の裏側も知れて面白

    • 『流行に踊る日本の教育』

      『流行に踊る日本の教育』石井英真(2021年)東洋館出版社  とてもインパクトのある題名で、さまざまな議論がされた本書ですが、とても重要な指摘が詰まった本だと思います。  教育改革というのは「よいこと」として無批判に受け入れられがちです。 しかも近年は民間企業の事業も絡んだ改革が多く、ネットで教育改革の情報も多く拡散されるため、多くの人々の関心を集めやすい状態になっています。  本書では、教育改革の正の部分ではなく、改革による副作用や裏側に潜むリスクについて丁寧に検討を

      • 『資質・能力ー理論編』

        『資質・能力ー理論編』国立教育政策研究所(2016年)東洋館出版社 「資質・能力」とは、そもそも何なのか?  なぜ資質・能力の育成が必要なのか? どうやって資質・育成を育むのか? こうした疑問を理論的に解説してくれている本です。 ここでいう「理論」のベースになっているのは、認知科学や学習科学の知見がメインになっています。 特に「コンピテンシー」「メタ認知」「熟達化」「建設的相互作用」などが重要なキーワードになっていると思います。 個人的にハッとさせられたのが、 という

        • 『教育の力』

          『教育の力』 苫野一徳 2014年 講談社現代新書  教育というのは、方法論が先行して語られがちではないでしょうか。「どうやって子どもの学力を伸ばすのか?」「どうやったら授業力が向上するのか」「どうやったら・・・」。  これらはもちろん重要な話ではありますが、「そもそも教育は何のためにあるのか?」「どのような教育がよいといえるのか」という根源的な問いに向き合うことも重要かと思います。指針や目的なくして教育実践は本来成立し得ないはずだからです。  でも、実はこのような問いに

        『「資質・能力」と学びのメカニズム』

          『学級経営の教科書』

          『学級経営の教科書』白松賢 2017年 東洋館出版社  「学級経営についてのオススメの本は?」と聞かれたとしたら、私なら真っ先に本書を推薦します。  まさに、ありそうでなかった本という感じです。どういう意味かというと、学級経営に関する実践レベルの本は、世の中に溢れています。私自身もそういう本は読んできましたし、とても役立って今の教育実践にいかされているものもたくさんあります。ただ、そうした実践レベルで書かれたノウハウは、各々の教師がもつ教育観や学級経営のイメージに大きく影響

          『学級経営の教科書』

          『学習支援のツボー認知心理学者が教室で考えたこと』

          『学習支援のツボー認知心理学者が教室で考えたこと』 佐藤 浩一 2014年 北大路書房  本書は、認知心理学をエビデンス(根拠)にした学習支援方法についての本です。とはいっても、認知心理学の専門書というわけではなく、教育関係者向けに書かれた本なので大変分かりやすいです。 (ちなみに、同一著者による、より理論的な内容も含む本はこちらです↓)  本書は現場で起こる事例をもとに、エビデンスに基づいた解説がなされているので、「あぁ、なるほど、こういうケースは、そういう風に支援す

          『学習支援のツボー認知心理学者が教室で考えたこと』

          『協同学習入門ー基本の理解と51の工夫』

          『協同学習入門ー基本の理解と51の工夫』杉江修治 2011年 ナカニシヤ出版  現在、「アクティブラーニング」や「主体的・対話的で深い学び」など、これだけ様々な場面で叫ばれている状況でありますから、いわゆる「一方向的な講義型授業」一辺倒で授業を行う先生は徐々に減ってきているのではないのかな?と思います。(※ただし直接教授法が無意味なわけではなく、あくまで方法は学習の目的に照らして方法は選択されるべきだと思います。)  一方で協同的な学習というのは、なかなかデザインが難しいと

          『協同学習入門ー基本の理解と51の工夫』

          『メタ認知で<学ぶ力>を高めるー認知心理学が解き明かす効果的学習法』

          『メタ認知で<学ぶ力>を高めるー認知心理学が解き明かす効果的学習法』三宮真智子 2018年 北大路書房  「メタ認知」という言葉が教育現場の中で広く知られるようになってきました。いや、むしろ教育現場の中で重要キーワードになりつつあります。  本書の説明では、メタ認知(metacognition)とは、認知についての認知、つまり、自分自身や他者の行う認知活動を意識化して、もう一段上からとらえることです。  メタ認知の研究は、教育現場で聞かれるようになる随分前から古く研究さ

          『メタ認知で<学ぶ力>を高めるー認知心理学が解き明かす効果的学習法』

          『新・コンピュータと教育』

          『新・コンピュータと教育』佐伯胖(1997年)岩波新書  本書が出版されたのは1997年であり、パソコンやインターネットが急速に学校現場に普及され始めた時期です。  一方で現在はタブレット端末や電子黒板、プログラミングソフトが学校に普及している時期であり、書かれた当時とは状況が大きく異なります。  そう考えれば、本書のタイトルに「新と書かれている古い本」を、今になって紹介することに違和感を覚える方もいるかもしれないですが、本書の根底にあるコンピュータと教育の関係を問い直そ

          『新・コンピュータと教育』

          『プレイフル・シンキング[決定版]』

          『プレイフル・シンキング(決定版)』上田信行(2020年)宣伝会議 1番最初に紹介する本になるので、何にしようかだいぶ悩みましたがこの本にしました。理由はいくつかあります。  ①これは個人的な理由ですが、大学時代に1番最初に影響を受けた本だからです。(ちなみに「決定版」は最新のもので、学生時代に影響を受けたのはこの本の前著です。)大学の教育方法学の授業のテキストでしたが、学習観にかなりの揺さぶりをかけられました。この本に出会わなければ教師になってなかったといっても過言では

          『プレイフル・シンキング[決定版]』

          このノートについて

          はじめまして! このノートでは、主に教育書のレビューをメインに記事を書いていこうと思ってます。 というのも、僕自身、大学院の頃から様々な教育書を読んできましたが、ものすごく意義のある良書にもかかわらず、なかなか教育関係者に読まれておらずにもったいないなーという問題意識を持っていました。(もちろん、ベストセラーになるくらい読まれているものもありますが) そこで、是非多くの教育関係者の手に届き、その良さを共有できたらと思います。 ここでいう教育関係者は学校の教師に限りませ

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