【ウィズ・カタナ・スシ・アンド・ヒダル】プロローグ

街道の脇のオジゾウの陰。

地面に倒れ臥すのはニンジャ装束の男。しかし、それにしても何たる汚れきった有様であろう。装束にこびりついた泥と垢はとても昨日今日ついたものとも思えぬ。

僅かに息がある。「スシを…誰か…スシを…」往来は少なく、誰も男に情けをかける者は…

否、目の前に紙苞に包まれた握り飯が差し出された。汚れたニンジャはひったくるようにして握り飯を受け取り、そのまま貪り食い始めた。

スシには及ばないが、握り飯にも血中カラテ回復を促進させる効力がある。男の体力は早くも回復し始めた。瞬く間に二つを平らげ、三つ目を頬張ったところで、汚れたニンジャははじめて恩人の顔を仰ぎ見た。

握り飯を差し出したのは、道中カッパとアミガサを身につけた190cm近い偉丈夫。腰にはカタナとワキザシを差している。そしてこの男もニンジャだ。

汚れたニンジャは蹌踉めきながら立ち上がり、アイサツした。「ドーモ、アリガトガザイマス。ヒダル・ニンジャです」「ドーモ、ヒダル・ニンジャ=サン、ムトー・タケミツです。驚いたな、旦那はアーチニンジャだったのか!」

「面目ない。道中道に迷い、食料を切らした。この恩は忘れぬ」「何をおっしゃるやら!それより、あと一里も歩けば人里につける。見たところ行き先は同じのようだ。よければ御同道いたしましょうかな?」

2人は連れ立って歩き、やがて二股道で別れた。

その翌日……

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