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因数分解の問題解法

高校数学の学び直しも兼ねて,解説を行う記事です.

数学についてよく理解することは,日常生活での論理的思考のセンスを磨くうえでも役に立つのではないかと思います.

ただ単に,数学の問題を考えること自体の楽しさもあるなぁとも思います.

➀因数分解とは?

前回の記事で,整式を降べきの順に整理する,整式の積の形の式を展開する,ことについて記しましたが,因数分解は展開の逆で,項の並びを整式の積の形になおすことを意味します.

整式を因数分解することにより,例えば方程式を(整式A)×(整式B)=0の形にして,A=0 or B=0の形にして解くことができます.

他には,分数式の分子分母を因数分解することで,約分が可能になる場合もあります.

➁基本は共通因数で括る

分配法則を利用すると,共通の因数で括る(くくる)ことができることに気がつきます.

分配法則

$${ab+ac=a(b+c)}$$

つまり,基本的には共通因数を探すことが主になります.

➂例題

例題をひとつ紹介します.

$${5(a-2)-b(2-a)}$$を因数分解せよ,という問題です.

$${(a-2)}$$と$${(2-a)}$$があり,共通因数になりそうですが,後者に$${-1}$$をかければいいですね.

$${5(a-2)-b(2-a)}$$
$${=5(a-2)+b(a-2)}$$
$${=(a-2)(5+b)}$$

④因数分解の公式の利用

上に見てきた共通因数で括る,というやり方が一見難しく例がいくつかあり,そのような場合に因数分解の公式を利用します.

その公式というのが,以下の式です.

❶$${x^2+(a+b)x+ab=(x+a)(x+b)}$$
❷$${x^2+2ax+a^2=(x+a)^2}$$
❸$${x^2-a^2=(x+a)(x-a)}$$
❹$${acx^2+(ad+bc)x+bd=(ax+b)(cx+d)}$$

これらは,展開公式の逆です.

一番簡単なのが❸の(二乗)ー(二乗)の形のものです.

❷と❸の式は❶から出ますので,❶をしっかり覚える必要があります.

❶では,足して$${x}$$の一次の係数,かけて定数項になるような二つの数を見つける作業に帰着します.

そのような二数$${a}$$,$${b}$$がみつかれば,$${(x+a)(x+b)}$$と因数分解できます.

❹は❶で$${x^2}$$の係数が$${1}$$でない場合です.

❹ではいわゆる「たすき掛け」ですね.

$${a              b = bc}$$
$${       ✕              bc+ad}$$
$${c              d = ad}$$

$${x}$$の二次の係数と定数項を二数のかけ算に分解し,それらのたすき掛けの和が一次の係数になるように四数を決定します.

実際に紙にいろいろ書いてみて決定しますが,慣れてきたら頭の中でいろいろ考えてみるのもいい頭の体操になります.

因数分解では,導き出した解答を展開したら与えられた式になるはずなので,ぜひ展開してチェックしてみてください.

⑤例題

下記の4つの式を因数分解します.

(1) $${x^2-36}$$
(2) $${x^2+14x+49}$$
(3) $${x^2-5x-36}$$
(4) $${6x^2+x-12}$$

(1) $${x^2-36}$$
$${=x^2-6^2}$$
$${=(x+6)(x-6)}$$

(2) $${x^2+14x+49}$$
$${=x^2+2×7x+7^2}$$
$${=(x+7)^2}$$

(3) $${x^2-5x-36}$$
$${36}$$の約数は$${1, 2, 3, 4, 6, 9, 12, 18, 36}$$で,差が$${5}$$になるような組み合わせを探しますと,$${4, 9}$$です.
$${x^2-5x-36}$$
$${=x^2+(4-9)x+4×(-9)}$$
$${=(x+4)(x-9)}$$

(4) $${6x^2+x-12}$$
$${6}$$の約数は$${1, 2, 3, 6}$$,$${12}$$の約数は$${1, 2, 3, 4, 6, 12}$$であり,たすき掛けして$${1}$$になるような数の組み合わせを求めます.
そうすると,$${3×3-2×4=1}$$となります.
$${6x^2+x-12}$$
$${=3×2x^2+(3×3-2×4)x+3×(-4)}$$
$${=(2x+3)(3x-4)}$$
この問題はちょっとしたヒントがありまして,$${x}$$の一次の係数が$${1}$$で奇数なのです.
ということは,たすき掛けが奇数と偶数の和か差となり,この情報だけでかなり候補が絞られてきます.

⑥終わりに

因数分解は場合によってはかなり複雑な形になり,入試問題の小問集合でも登場したりします.

特にたすき掛けの問題は繰り返し練習して慣れましょう.

⑦参考書紹介

私が愛読している数学の参考書をご紹介します.

長岡亮介先生の参考書です.

例題を解き進めていく中で,長岡先生が注意点や危うい箇所を説き明かしておられます.

数学で利用される論理についてのお話です.

論理的に考えることに興味のある方にお勧めします.

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