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のんびり考察その2:地震が予知できても誰も幸せにならない


「地震が予知できても誰も幸せにならない」というのは、ちょっと矛盾しているように感じる。しかし、そうなのだ。なぜか。

集落の復興

人口減少で復興が難しい地域では、組織的に移住を促進すべきという旨のツイートが話題となった。
 この難しさはトロッコ問題に似ている。放っておいても近い将来人口減少で消滅してしまう集落が地震による深刻なダメージを期に復興を諦められたところで、長期的には同じ結果となるのだから、構わないはずだ。なし崩しにではなく、人為的に閉じてしまったほうが種々の不利益は少ないとも言えよう。いうなら、どうせ同じなら早いほうがいい
 しかし、トロッコ問題で人為的にトロッコのルートを変更することは、たとえ被害を軽減させるとしても、何もしなかった場合よりも道徳的非難を浴びせられる。

人工地震について

 人工地震がツイッターのトレンドに入り話題となった。人工地震というものが技術的に可能であったとしても、可能ではなかったとしても、陰謀論が真実でも嘘でも、大した違いはないというのが所感だ。
 人工地震を起こすには原子爆弾を使うらしい。しかし画像のように、原子爆弾のエネルギーというのは地震のマグニチュードと比較するとたかが知れている。

https://www5d.biglobe.ne.jp/~kabataf/yougo/E_jisin/jisin4_magnitude_3.htm
より

能登地震はマグニチュード7.6らしい。
 つまり大震災が人工地震であるためには、必ず「原子爆弾が呼び水となってより大きなエネルギーが解放された」というプロセスを経る必要がある。
1のエネルギーが100のエネルギーの解放を誘発することはありうる。不安定な岩を一突きすれば大きな音を立てて崩れることと同じだ。しかし原子爆弾を爆発させるたびに大山の鳴動が起こると考えるのはエネルギー保存の法則に反する。大地に溜まっていたエネルギーがいつでも何度でも解放され続けるということはなく、原子爆弾を呼び水にしてマグニチュード7を越えるような地震が起こせたとして、今後数百年はその地方にはそのようなエネルギーが再び溜まることはないと考えるのが妥当だろう。
 すると人工地震を起こしたことによって今後起こるはずだった地震のエネルギーが先に解放されてしまい、通常の地震が起こらなくなる。通常の地震と同様、数年後、数十年後、…n年後に起こるかもしれなかった同地域の地震を消す(起こる確率を限りなくゼロに近づける)のだ。
 人工地震の道徳的に非難されうる点はそもそも
1街を破壊して人々を傷つけた
2地震が来ると分かっていたのに教えなかった
3地震が来るとあらかじめ分かっていたので株などで儲けた

あたりだろうが、1については人工地震が起きなければ通常の地震で少し後に同等かそれ以上の被害が出ていたこと、2については1の事情にも関わらず高い道徳性を要求していること(地震が起こると警告して、人々を避難させて、人工地震の発生に失敗したら大変なことになるが誰が責任を取るのか)、3については人工地震という高い技術に見合った金銭を受けとる手段があることは正当であるという議論によって無化される。人工地震があるかどうかは(無いと思うが)、思ったよりも重要ではないのである。なぜなら人工地震を発生させることも隠すことも悪くないから。

人工地震と地震予知について

 地震予知はとても難しい。近い将来、地震予知ができるとしたら人工地震の技術によってということもあり得る。現在予測されている南海トラフなどの大地震が自然に起こる日時は予測できないが、起こすことなら可能というパターンだ。しかし人工地震によって地震発生日時を特定することは、近い将来、放置していたらそのうち必ず起こることをいまのうちに人為的に起こすことであり、現在論争となっている、復興を諦め近い将来消滅する自治体を地震で滅びたままに捨て置く問題とまったく同じ構造を抱える。

 人工地震の技術を国が開発し、この日時に計画地震を起こしますので避難してください、と避難指定地域民にアナウンスする。人工地震で南海トラフなどの来ると予想される大地震を起こし、建物の倒壊や人的損害については「本物の地震がきたときよりも少なくなりました。本物の地震と同様に完全な補償はできかねますが、復興は手伝います」として復興予算で手厚くサポートする。そのようなことをおこなう政権は、残念ながら失脚するだろう。計画地震で一人でも死者が出ようものなら、政権与党は大変な非難を浴びせられるだろう、理不尽にも。そうして建物や生活の被害まですべて補償せよと迫られるだろう。
 ほっておけば自然に起こっていたことを、人為的に起こして被害を少なくすると、政権は評判にダメージを受ける(トロッコダメージ)。地震が予知できても、誰もそれを有効活用することはできないのだ。


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