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うまくいった人が「やらなかったこと」に目を向ける

勝ちに不思議の勝ちあり。負けに不思議の負けなし。

日常会話ではめったに使わない日本語ですが、聞いたことはあるでしょうか?

「勝ちに不思議の勝ちあり。負けに不思議の負けなし」の意味は、「なんだかよくわからないけど勝つことある。でも、負けはそうじゃない。負けるべくして、負けている」です。

この言葉を引き合いに出した理由は、僕の仕事であるインタビューに通じるものがあると思ったためです。書く仕事に14年関わってきた経験で感じたことを綴ってみます。

取材相手には「うまくいった方法」を質問することが多い


記事を書くためにインタビューを行う場合、対象者は何かの分野で実績をあげた人、何かでうまくいった人であることがほとんどです。記事を読んだ人に何らかの学びや気づきを与える狙いがありますから、この人選は理にかなっています。

この場合、インタビューではこのような質問をすると思います。

「○○で成功するために何をしましたか?」
「なぜ○○でうまくいったと思いますか?」
「これから○○を始める人がすべきことは何だと思いますか」

質問文は違いますが、共通するのは、うまくいった方法を聞いている点です。

たとえば、「3年で年収300万円→年収2000万円になった会社員」に話を聞くとします。あなたがライターとしてこの人にインタビューをするとしたら、「3年で年収を約7倍にするためにしたこと」や「お金を稼ぐ方法」のほか、「より条件のよい仕事に転職する方法」などを質問したくなるはずです。「どんな投資をしたか」も該当するでしょうか。

いずれにしても、どうやって年収を上げたのかは気になりますよね!?(僕も知りたいです。ボソッ) そんなやり方を記事に書けば、「読者にとって有益な情報を与えられた」と感じるはずです。

成功の理由は「親からの100万円」それを聞いて、どう感じるか。


しかし、問題はここからです。あなたが投げかけた質問に対して、その会社員(ここではAさんとしましょうか)が返した内容は、誰もが真似できるものでしょうか。 なぜなら、Aさんが「自分はこれでうまくいった」と思うことは、あなたや読者の暮らしに適用できるかわからないからです。

人によって置かれている環境は違いますし、性格、住んでいる地域、時代、景気、社会情勢なども異なります。なので、誰かの成功体験はその人特有であるケースがあるわけです。

たとえば、Aさんに「3年で年収を約7倍にするためにしたこと」を質問したとします。回答が、次のような感じだったら、どう反応しますか?

「両親から『これで何かやってみろ!』と現金100万円を渡されました。それを元手に個人事業を始め、徐々に収入が上がっていったんですよ」

これを聞いて、「そっかー!親に頼んで100万円をもらえばいいんだな!楽勝じゃん!」と思う人はどれほどいるでしょうか。たいていの場合、「お、おう…」(現金100万円もらっていたのかい)としか言えません。

両親からの現金100万円は素晴らしいエピソードではあるものの、再現性がありません。個人事業を始めるガッツも、そもそも個人事業を起こそうという発想も、誰もが持っているわけではありません。

そう、誰かのうまくいった話には、自分が真似できないことがあるのです。

時代の違いも忘れてはいけません。

60代の敏腕経営者に「実力をつけるためにやったこと」と聞いて、「寝ないでとにかく働いた。休みの日も働いた」と返ってきたとしましょう。この回答は、働き方改革やワークライフバランスが叫ばれている現代を生きる若者にすんなりと受け入れられるかわかりません。

「なんだかよくわからないけど、うまくいった」ケースはけっこうある


これは僕のインタビュー経験からの学びなのですが、何かでうまくいった理由が「たまたまだった」や「タイミングが良かった」といったケースは、よくあります。

とある会社経営者にインタビューをした際、起業のきっかけをうかがったことがありました。回答は、「なりゆきで会社をつくった」だったんです。
なりゆきで会社ってつくるものなの!?
そのときの僕は大きな衝撃を受けました。

別の経営者に起業のきっかけを聞いたところ、「起業するしかなかった」とのこと。 ここでは詳しく書けないのですが、紆余曲折があって後戻りができず、起業をされています。

つまり、「こうすれば起業ができる」といった特効薬のような回答はないということなのです。

これが、冒頭でご紹介した言葉「勝ちに不思議の勝ちあり」の一例です。 うまくいった理由は、たくさんある。同じ「ビジネスで成功した人」「お金持ちになった人」でも、そこに至った理由は、その人によって違います。

書籍で勉強してうまくいった人もいれば、お手本にする先輩からビジネスを学んで成功した人もいます。借金を抱えて苦しい生活をし、そこから奮起してお金持ちになった人もいるかもしれません。

うまくいかない理由は、2つに集約できる


では、反対にうまくいかなかったときはどうでしょうか。

ここでは、「年収がずっと上がらない人」を想定してみましょう。その理由はこんな感じになるでしょうか。

・仕事で努力をしていない。
・勉強をしていない。
・上司や同僚から嫌われおり、協力してくれる人が少ない。
・そもそも、給料が低い会社、業種で働いている。
・愚痴が多く、現状を変える行動をしていない。

あたりが浮かびそうです。

さて、ここから何が導き出せるでしょうか。 いろいろと書きましたが、この人がうまくいかない理由は、「年収を上げるための行動をしなかった」 「年収が上がる前に諦めてしまった」 に集約できます。

年収を上げるためにできることは、よく考えると、たくさんあります。たとえば、スキルアップに取り組む、副業をする、持ち場で最大限の成果を上げて他社で通用する実力をつける、プライベートを使って勉強をする、などです。

こうした努力をせず、現状を変える行動も起こさないであれば、目標である「年収アップ」は見込めないと考えるのが自然です。どれだけ実力がある人でも、何のアクションも起こさなければ、結果を出せるわけがないのです。

うまくいくための行動をしなかった。行動を続けなかった。 うまくいく前にやめてしまった。 これらは、その人が置かれた環境、性格、住んでいる地域、時代、景気、社会情勢に左右されづらいものです。もちろん、病気や怪我、天変地異などでできなくなる場合は除きます。

「うまくいくために、やらなかったことは何か」


うまくいく方法はたくさんある。でも、うまくいかない方法はだいたい同じ。 このことを痛感してから、僕はインタビューで意識することを変えました。

それまで、インタビューで僕は何の疑いもなく「うまくいった方法」にフォーカスしてきましたが、次のことを意識するようになったのです。
「うまくいくために、やらなかったことは何か?」

結果として、会社を経営したり、目標を叶えたり、何かで成果をあげたりした人たちは、その結果を受け取るまで「何をやらなかったのか」を考えながら、話を聞くようになったのです。

やらないことにフォーカスすることは、何もインタビューだけに役立つわけではありません。 先輩から、こんな話を聞いたことがあります。 スケジュールを立てるときは、「やること」を考えがちですが、最初に「何をやらないか」を決めておくと時間を有効活用できる。

1日の持ち時間は、絶対に24時間。

最初にやらないことを決めれば、やることが自然とわかる。最初にやらないことを決めれば、やるべきことだけをできるようになると僕は思うのです。

お読みくださり、ありがとうございました。

薗部雄一
charoma0701@gmail.com

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