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「パソコンは使い続けると遅くなる」はホントか?(No331)

量販店でパソコンを眺めているAさん。
高いなぁ、と見ていると店員さんが近づいてきます。

店員「何かお探しですか?」
Aさん「今のパソコンもかなり古いからどうしようかなと思って」

店員「それでしたら、....(いろいろと説明が始まる)」
Aさん「いや、今のでそんなに不満はないの。ただ、最近遅くなった気がしてて...」

店員「そうですね。パソコンは使い続けていると遅くなりますからね」
Aさん「そんなもんかなぁ」

さて、ここで質問です。
ホントにパソコンって使い続けていると遅くなるのでしょうか?

今回は、この点についてお話します。

ホントに遅くなるのか?→可能性はある

確かに、時間が経つと遅くなることはありえます。

その理由は大きく分けて三パターンに分けられます。

一つ目はハードウェアの故障(もしくは壊れかけ)によるもの、
二つ目はソフトウェアの入れすぎによるもの、
三つ目はソフトウェアの進化の影響、です。

一つ目のハードウェア故障時は「遅くなった気がする」ではなく耐えられないほど遅くなることが多いです。
故障ですので、修理に出すしかないですが、5年以上前のパソコンですと修理受付が終わっていることも多いですし、費用もかなりかかります。

ですので、ノートパソコンの場合は買い換えが現実的です。
(デスクトップ機の場合は、知識さえあればパーツ交換は容易です)

二つ目のソフトウェアの入れ過ぎの場合は「最近妙に重くなったな」と感じることが増えてきます。
これは、要らないソフトウェアを削除(アンインストール)すれば解消できるのですが、これが意外に難しい作業なのです。

三つ目は、使っているソフトウェアのバージョンアップなどでコンピュータの資源(メモリや計算ユニットであるCPU)をたくさん使うようになるためです。
そのため、当初はキビキビと動作していたソフトウェアがバージョンアップによって重く感じるというのはよくある話です。

以下、それぞれについてお話をします。

故障寸前のパソコンは激重になるケースが多い

パソコンも機械ですから故障で動かなくなることがあります。

ですが、実は、何の兆候もなく突然動かなくなることはかなり稀で、本当に動かなくなる前にはいくつかの「故障寸前サイン」を出してくれます。

その一つが、「激しく動作が遅くなること」です。

コンピュータの動作が遅くなる場合、いくつかのパターンがあります。

一つは冷却がうまくできなくなるパターンです。
この典型が空冷ファンの故障です。

コンピュータは消費エネルギーの大半が熱になりますので、放熱板と冷却ファンを使って外に熱を追い出します。
このうち、冷却ファンはずっと動き続ける部品ですので、ちょいちょい壊れます。
(放熱板はただの金属板なのでまず壊れません)

これが壊れてしまうと、放熱が満足に行えません。
そのまま動かし続けると、計算ユニット(CPU)自体が熱で壊れてしまいますので、動作速度を落とします。(動作速度を落とすと電気の消費量が減り、発熱が抑えられます)

そのため、極端にコンピュータの動作が遅くなります。

また、ハードディスクという部品が壊れる寸前もめちゃくちゃ動作が遅くなります。

ハードディスクには、磁気を塗った円盤(ディスク)が入っており、これを1分に数千回転させています。データの読み書きには、ヘッドと呼ばれる部品を左右に動かして(シークと言います)目的位置のデータを読み取ります。
この動作をする時にはちょいちょい位置ズレが起きます。
位置がズレていると、データを正しく読み書きできませんから、位置補正(リキャリブレーション)を行います。

ハードディスクを長期間使い続けるとこの位置補正の頻度が多くなってきます。
そのうち、シークの度に位置補正が必要になり、これまた極端にコンピュータの動作速度が遅くなります。

パソコンでは冷却ファン、ハードディスク以外にあまり壊れる部品はありませんが、他の部品が壊れた場合は動作が極端に遅くなることはありません。

例えば、メモリが壊れているとやたらと不安定(勝手にリブートするなど)になりますし、ネットワーク用の部品が壊れると通信ができなくなったりしますが、動作が遅くなることはほぼありません。

こんな現象が出てきた場合は、本当に故障する可能性が結構濃厚ですので、無理に使わず、メーカへの修理依頼を強くオススメします。

ソフトウェアで遅くなることもある

俗に常駐型と呼ばれるタイプのプログラムがあります。

これは、コンピュータの稼動中ずっと動作し続けるプログラムのことを指します。

例えば、マルウェア対策ソフト(ウイルス対策ソフト)などは、常に妙なヤツが侵入していないかを監視しないといけませんから、必ず常駐型ソフトウェアになっています。

ですが、常駐型ソフトウェアは常にコンピュータの資源(特に計算ユニットであるCPU)を使い続けます。こういった常駐型ソフトウェアがたくさん動いていると、そちらに資源を使われ、目的のソフトウェアの動作が遅くなることがあります。

この対策はシンプルに不要なソフトウェアを削除すれば良いのですが、これがなかなか難しいのです。

最近のソフトウェアのインストールプログラムはとても良くできていて、よくわからない方でも多くのソフトは簡単にインストールが行えます。

そのため、インストールが気軽に行えるようになりました。

ですが、アンインストール(プログラムの削除)となると、そう簡単にいかない事情が二つほどあります。
 1. 遅い原因となるソフトウェアを見極めるのが大変。
 2. 削除によって別の不具合が起きる可能性がある

まず、動作が遅くなった原因を調べるのは相当に慣れた人でもかなり大変です。
(筆者も例外ではありません)

CPUの使用率やメモリの占有率などで、ある程度の目星はつけられますが、それが正しいとは限りません。

いきおい、速度低下を調べるにはしらみつぶしにインストール/アンインストールを繰り返すことになります。

業務でどうしても原因を調べないといけないというのでもない限り、労力の割には得るものが少ない作業と言えます。

もう一つの事情はさらにやっかいな話で、削除によって他に影響を与えないとは言い切れないという話です。

ソフトウェアというのは、他のソフトウェアに依存することがよくあります。

全ての機能を自分(自社)で作るのは大変だから、他社の作ったソフトウェアを利用することがよくあります。
インストールプログラムの中で、自分達のソフトウェアに加えて、他社のソフトウェアが未インストールなら、同時にインストールしてしまうのです。

問題はこれをアンインストール(削除)する時です。

自分達のソフトウェアで利用していた他社のソフトウェアのアンインストールをすべきかどうかの判断が非常に難しいのです。

既にインストールされている他のソフトウェアも同じように他社のソフトウェアを利用しているかもしれないからです。

こうなると、うかつに他社ソフトウェアを削除するわけにはいきません。

これを繰り返していると、利用しているソフトウェアがどれなのか、要らないソフトウェアがどれなのか、サッパリわからない状況に陥ります。

こうなってしまうことを考えると冒頭の店員さんの「使い続けていると遅くなりますからね」というのもあながち間違いとは言えません。

ソフトウェアの進歩の影響

ソフトウェアをバージョンアップすると、何らかの新機能が追加されています。

開発元では、ある程度古い機種でも動作するように考慮はしますが、機能が増えた分実行にコンピュータパワーが要る(いわゆる重くなる)傾向があります。

コンピュータ自体は同じ能力を持っていても、利用しているソフトウェアは年々変わっていきます。

例えば、Windowsでは Windows Updateの形で毎月更新が行われています。

例え同じバージョンのソフトウェアでも、チェック機構の追加など、処理が増えていくわけですから「最近は遅くなった」と思うのは必ずしも気のせいとは言い切れません。

まとめ

長期間使っているパソコンでは動作が重くなるケースがあります。

その理由は様々ですが、「遅くなった気がする」レベルではなく「めちゃくちゃ遅い」場合には何らかのハードウェアの故障の可能性が濃厚です。

そのような場合には、機器の利用を止めて、修理に出すことをおすすめします。

無理に使い続けたり、不適切な対応をすると、本当に再起不能な形で機器を壊してしまう可能性があります。

どうしてもパソコン内のデータを救い出す必要がある場合は、データ復旧サービスなど専門業者に頼る方法もあります。

そこまで遅くはないけれど、いろいろとソフトウェアを入れすぎて動作が重くなってしまうというケースもあります。

この場合は、不要なものをアンインストールすれば良いのですが、どのソフトウェアが原因かを見極めるのが大変です。

この場合はあえて、買い換えるというのも一つの選択です。

こういった、機器の買い換えというのは、情報セキュリティ対策とは無縁に思われるかもしれませんが、そんなことはありません。

情報セキュリティ対策には三原則と呼ばれるものがあり、機密性、完全性、可用性の三つを指します。

このうち、機密性は情報漏洩を防ぐこと、完全性は改竄を防ぐことを示していて、いかにもセキュリティ対策っぽい内容で皆さんの関心も高いものです。

三つ目の可用性というのは、いつでも情報が利用できることを示しているのですが、機密性や完全性に比べると、なんだか地味な感じです。

今回のお話は、この可用性に関するテーマとなります。
パソコンがトラブルなく利用できることはとても大事なことです。

速度低下くらいならガマンできるかもしれませんが、いつ使えなくなるかわからない状態での継続利用はリスクが大きすぎます。

業務用のパソコンは消耗品と考え、トラブルが起きる前に買い替えられるように、計画的(3~5年)な予算確保をおすすめします。

いくら機密性、完全性が保たれていても、使えない状態では宝の持ち腐れだからです。

今回は、長期間使っているパソコンの速度低下についてお話をしました。

次回もお楽しみに。

(本稿は 2023年10月に作成しました)

このNoteは筆者が主宰するメルマガ「がんばりすぎないセキュリティ」からの転載です。
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