見出し画像

青山ビル


青山ビル (アオヤマビル)


高級輸入食品を扱う『野田屋』などを展開した
野田源次郎邸として百年以上も前の1921年
に建てられたスパニッシュスタイルのビル。
その外観を覆い尽くしているこの蔦(ツタ)は
甲子園球場を覆うものを株分けされたもので
この北浜界隈で一際目を引く建物である。


一軒隣を挟んで建つ洋風ホテルの伏見ビルより
大きく、これが個人邸だったのは信じられぬ程
贅沢な作りとなっている。


百年前のこの時代に、水道、電気、ガス、電話
と、現在のライフラインの全てを完備している
それ以外にも、地下には石炭を燃やす為の設備
も完備されていて建物全体の暖房の集中管理を
担うシステムまで組み込んでいたのはこの時代
に他で見る事の出来ない最先端のものである。
また建物の中央に設置されている柱は中空に
なっていて、その内部にはコンパクトな食物用
の給仕エレベーターも完備していたのだという。
各階の家族のご飯もこれで配給できていたのは
驚きである。この辺の解説は戦後間もなくこの
ビルを取得され、テナントビル運営へ切替えた
青山家、そのご子息からの解説を頂いての記事
となっている。

第二次世界大戦後間も無く青山家が手に入れた
この建物であったが、米国はポツダム宣言執行
の為に、日本国内の占領政策が実施されており
それを実行していたのが米国連合国機関GHQ
(GENERAL HEADQUARTERS, THE SUPREME COMMANDER FOR THE ALLIED POWERS)
であるが、このGHQが建物を接収するという
話が持ち上がる。折角、手に入れた建物の権利
を失い兼ねない危機に陥り、交渉に臨んだ結果
占領期間には、GHQ将校専用の施設としての
利用に向け提供するという結果となり、日本の
独立後にちゃんと返還されたのである。もしも
この抵抗をしなければ、今の形で残ってる事は
叶わなかった可能性もある。交渉は大事である。


では実際に写真画像での解説へと進めよう。


ビルの外観を覆うのは、甲子園球場から株分け
された蔦(ツタ)である。10月末の撮影の為
青々とした葉とはならないが、ビル全体を覆う
このツタが目印となっている。このビルの表に
文化庁から登録有形文化財指定プレートが設置
されている。この蔦の種が地面に落ちてるのを
拾う。これで芽が出てくれれば甲子園球場の蔦
のオーナーになれるぞとほくそ笑んだが、私の
住むマンションは賃貸であり、その夢は潰えて
この種はまた手のひらで転がし遊ぶに留めよう。


ビルの内部に入ると、一階のロビー部分の空間は
スパニッシュスタイルの美しい様式美と重厚さが
備わった雰囲気が良い。


ここの天井に設置されている照明がとても美しい。
植物の躍動感あふれる造形美に、ちゃんと色付く
花の可愛さに目を奪われる。


建物内の現在のテナントビルとしての共用部。
トイレは上部に水タンクが備えついた旧式の
ものとなっている。平成時代以降はトイレには
この手の水タンク仕様のものは作られていない。
最上階から吊るされた照明がまた美しい。


そしてこちらはイタリア製のステンドグラス。
建物のあちこちに美しくも歴史あるものが多く
鳥、カメリア、ローズ、抽象パターンと色んな
素敵な図案のものが、それぞれに美を放つ。


階段の手すりは捻り加工を施されたものであり
現在では作るのが困難な技法のものとなっている。
実は私は階段周りの空間の収まり具合が大好きで
ついつい何枚も写真を撮ってしまう。クリーム色
の壁にチョコレートカラーの手すりの造形美が
たまらなく美しい。


普段は見ることの出来ない空間もあちこち見て
回ることができてとても楽しい。ここの天井と
照明もまた美しいものであった。



中庭もあって、少彦名神社の神木と兄弟木である
楠(クスノキ)や銀杏(イチョウ)の木が天高く
ビルの間に聳え立っている姿がとても美しい。


私がここで初めてその存在を知ったものがある。
『御財印』というものである。寺社仏閣に於ける
御朱印やお城のものなどは知っているが、この様
なものは見た事がなかった。貴重な文化財として
価値ある建物を御朱印仕立にしたスタンプである。
隣の伏見ビルと青山ビルのものはゲット出来た。



このビルが建った当時の北浜地区周辺の写真が
飾られていた。タイムスリップして、この時代の
土地を踏んでみたいものである。


■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■

名称 青山ビル (アオヤマビル)
所在 大阪府大阪市中央区伏見町2-2-6
最寄 北浜駅 (京阪電鉄、地下鉄堺筋線)
建設 大林組(設計施行)
   伊東恒治(増築)
築年 1921年
構造 地下1階 地上5階/鉄筋コンクリート造
番号 イケフェスエントリーNO.63
撮影 2023年10月28日(土)
文財 国登録有形文化財

■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■


■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■

#生きた建築ミュージアムフェスティバル大阪
#イケフェス大阪2023
#OPENHOUSEOSAKA2023

■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?