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70人裏垢不倫夫と離婚バトルに突入する話 ⑤ ~両親にカミングアウト~

(1番最初の話:発覚の経緯から読まれる方はこちらからどうぞ!)


両親にどう打ち明けるか

弁護士に依頼した次にやらなければならなかったのは「両親への報告」である。これが私はものすごく嫌で、なんとか回避できないか離婚経験があるいろんな方に相談しまくっていた。
(なお中には離婚成立してから報告したという猛者もいた。すごい)

なぜ嫌だったのかというと、両親がものすごく夫を信頼していたからだ。
私と夫が友人関係であった18歳ごろから両親は夫を知っており、今時めずらしい真面目な好青年だといつも絶賛していた。多分、櫻井翔か大谷翔平くらいに見えていたんだと思う。

父は「なんであんないい人が結婚してくれたのか分からない」と言っていたし、クリスチャンの母に至っては「夫くんと出会えたことがegoへの神様からのプレゼントだよ…」「二人が永遠に幸せであるようにいつも祈っているからね…」など水際にハナミズキでも植樹しかねない怖い発言を度々繰り出していたのである。

両親がこの事件の事を知った時、娘が不憫と嘆くだろうというのはもちろん思った。しかしそれ以上に信頼していた青年が実は変態ワンナイトカーニバル男優だったという事実にものすごく傷つくだろうと思ったのだった。

当時、私は一人で夜な夜な探偵生活をするのに疲れ、よく犬を吸いに実家に帰っていた。その度に「今日は夫くんはどうしてるの?」とか「夫くんのご飯持って行く?」と声を掛けられ、「仕事が大変っぽいよ、知らんけど」と嘘をついていた。(本当に知らんけど)
その罪悪感がすごかったし、もう身体的ダメージもかなりのものだったので、実家に引き上げたい気持ちもあった。弁護士探しの際、ボスから「弁護士が決まっていれば親御さんがバタバタすることはないですよ!」と背中を押していただいたのもあり、ついに地獄の宣言をすることにしたのである。

その話をすると親友が「egoが嫌じゃなければ私も行こうか?」と言ってくれた。この申し出は本っっ当にありがたかった。親友と私は小学生からの仲で、母同士も長年のママ友である。私の両親は親友のこともものすごく信頼していた。
私が辛い状況の中一人で苦しんでいたのではなく、親友が一緒に伴走してくれたということがどれだけ両親の救いになるだろうと思ったのだ。
正直、親友が来てくれなかったらもう探偵ナイトスクープに依頼するしかない、というやばい判断一歩手前だった。(それはそれで見たい)

親友は実家で飼っている犬のことを大変可愛がってくれていたので、両親には「犬を見にきたいんだって」と伝えて時間を作ってもらった。


カニしゃぶの乱

カミングアウト当日の朝、仕事に行く前から私はナーバスになっていて「何も食べたいと思わんな…」と冷蔵庫を見ているとLINEが一件届いた。

義弟『昨日の誕生日ディナーはカニ道楽でした(カニの絵文字)ところで会社の新製品を兄宅と実家に送りました!受け取りよろしくです!』

(カニしゃぶの写真)

別に義弟は全く悪くない。頭では分かっていた。別に義弟が何か悪いことをした訳ではない。生真面目な兄と比べると、ちょっとチャラ男で典型的な「いい奴」だった義弟である。
自分の誕生日に例年だったら「おめでとう」が飛び交う家族ラインがずっと沈黙していて、家族みんな生きてる?くらいの不安があったのだと思う。

でも、平穏な生活を夫にぶち壊され、義父から脅しまがいの電話を受け、メンタル不調で何も喉を通らない体調で、自分の両親にこれからこの凄惨な状況を報告しないといけない状況において、義弟の普段通りのメールが当たり前に私のスマホに届く状況に怒りが沸点に達した。

まだ家族に状況を報告していないのかのイラつきと、バラして欲しくないと思っているのにどう対応してほしいのか私に対する依頼などのケアが一切ない様子が頭にきた。なんなら、話さないでくださいとこの段階で懇願するべきでないか。義実家は私が気を遣って他の家族に話していない状況に明らかに甘えていた。

怒りに身を任せて、義弟に個人ラインを送った。

私『新製品送ってくれてありがとう。実は隠していたことがあります。お兄ちゃんが不倫をしていたことが分かりました。今、実家に帰られています』

私『このことはお義父さんか本人から義弟くんにお話しされると思いましたが、いつ対応されるのか分からないままの状況でした。私はメンタルがボロボロの状況で義弟くんのいつも通りのLINEを読むのがしんどく、でも急にブロックすることもできず、限界と思い伝えることにしました。』

私『いつも本当に良くしてお気遣いいただいていたのに、こんなことになり残念です。ごめんなさい。詳細は本人に聞かれてください。』

(不倫相手との2ショット写真)※服は着ているやつ

すぐに既読がついた。
やっちまったとやってやったの気持ちが同時に押し寄せた。悪いのは私か?いや悪いのは夫だ。こういう事情だから義理姉に連絡するなとうっすらとでも義弟に言っておくべきだったはずだ。でも真実を言う人間じゃない。下手をすると不倫したのは私であるような話をでっち上げて伝えたかもしれない。だからこそ事実であることが分かる写真も送ったのだ。
そう考えながら、夫にも一応報告のLINEを送った。

私『義弟くんのLINEを無視し続ける訳には行かないので、不倫があったこと、今実家にいることの2点のみ私から連絡しました。』

10分ほどして返信が来た。

夫『あなたの家と同じように(※祖母の癌再発疑惑)、新年度でバタバタしている弟に伝えるタイミングを計っていたんだけど加害者の家族だからしょうがないよね。弟に連絡があったことは出社前に母親に伝えたので、もう親父にも伝わったと思います。』

は?????

夫からの反応はまさかの逆切れであった。やっちまったの気持ちが消し飛んだ。なんだこいつ。

まず「義弟の新年度のバタバタ」を「祖母の癌再発疑惑」と比較対象にしているの、本当にどういう神経しているのか見識を疑う。こちらは人の命が掛かっている。加害者とか被害者とかの問題じゃない。事態の重みが違うのだ。どれだけ私や私の家族の事を下に見て自分が殿様だと思っているのか。(そういえばエロスのお殿様だった)

そして「もう親父にも伝わったと思います」というのは脅しのつもりか?「お父さんに言わないで!ごめんなさい!」とでも言うと思ったか?
私は義父に心底呆れていたが、畏怖の念は一切ない。卑劣で小せえジジイだな、というのが今回の感想である。パパに頼ったのに残念だったな!
よって脅しは効いていないが、圧倒的に有責な立場にも関わらず、相手を脅そうとするスタンス自体が非常に問題である。

総じて問題しかない。

私『親父にも伝わったと思います、というのは脅しのつもり?「加害者」だという認識があるなら態度が間違ってない?』

私『いつ頃話す、とかそれまでこうして欲しいとかのケアがない中、「被害者」である私からお伺いを立てるのは馬鹿馬鹿しいと思ったよね。Twitterのことや不倫相手の人数については気を遣って伏せたのにこんな返信がきて残念です』

私『あとおばあちゃんの命の問題を軽く扱ったこと許さないから』

昼にスマホを見ると、夫からひと言「申し訳ありませんでした」とLINEが入っていた。逆切れした時は饒舌だったが、自分の立場が悪くなるとこんなもんである。


いざ実家へ

仕事が終わった後友人と駅で待ち合わせし、カレー屋で打ち合わせをした。

私「いや本当にもう言いたくないわ。」
親友「気持ちはめっちゃ分かるよ。私だったら本当にキツい。」
私「泣くよねえ、父。」
親友「ego父は泣くかなあ、怒り狂うとかじゃなく?」
私「いや父は泣くタイプだと思う。」
親友「結婚式でもすごい泣いてたもんね。」

父と私は未だに一緒にフィギュアスケート観戦にいくような仲の良いオタク父娘である。結婚式で私はエンディングに父が好きなゆず「栄光の架橋」をチョイスし、結婚式のアルバム裏表紙はボロボロに泣く父の顔写真が飾ったのであった。

私「母の行動も読めないんだよねえ」
親友「ego母も泣くタイプじゃない?」
私「いや潔癖っぽいところあるし、人に裏切られるみたいなところにすごいショック受けそう」
親友「まあまあまあ、母は私がいれば安心するんじゃない?少しは」

母は敬虔なクリスチャンであり、そもそもこの変態行動自体をどう捉えるかが想像がつかなかった。親友は母の扱いには自信があるようだったので、もうそこは任せるか、と思った。

親友「私から報告するのも変なので、egoの話を上手い感じに補足して、ショックを受けすぎないように、でも変態が悪いと認識できるように、話に入って行こうと思うけど良い?」
私「もうそれでお願いします。話し始めるタイミングはLINEとかで連絡していい?私から連絡が全然来なかったら背中を押していただければ…」
親友「しかしあの変態のおかげでこんなことまで悩まされることに本当に腹が立つな」
私「そうだよね。こういう苦しみも全部背負って死んでほしいわ」

よっしゃ行こう!と立ち上がって、車に乗り込む。
実家に着いて玄関の扉を開けると、ふわふわに洗い上げられた真っ白な犬が満面の笑みの母に抱えられていた。親友が久々に犬と会うと聞いた母が、気合を入れて犬を洗ったようである。どこか誇らしげな犬を横目に、うわあ嘘をついて申し訳ねえ、といたたまれない気持ちになった。
犬を抱いてダイニングテーブルに着くと、大きないちご大福がでてきた。

母「元気だった~?久々に会えて嬉しい!ママも元気?」
親友「元気です!母も元気です!母がego母とランチ行きたいってずっと言っていて…」

和やかな二人の話を聞きながら、うわあこれいつ切り出そう…と変な汗をかいていた。ふとスマホを見ると親友から『いちご大福食べ終わったらいこ』とLINEがきていた。犬を撫で、私の母と歓談しながら、進行管理をしてマルチタスクをこなす親友は相変わらずの仕事人であった。

カレーですでに満腹の中、いちご大福をつつき、ついにそのタイミングがやってきた。親友と目が合い、頷きあってから口を開いた。

私「えー本日、親友に犬に会いに来てもらいましたが、実はもう一個お話ししたいことがあります」
母「えっなになに!?親友ちゃん海外でも行っちゃう?」
私「いや実は私のことで、なんと!アンハッピーな方の報告です」

努めて明るく話そうと思った結果、なぜか絶妙に笑顔になってしまいバラエティの司会者のようなトーンで話し出してしまった。親友も気持ちひな壇のテンションである。場がドッキリ発表直前のようなカオスな空気になってしまった。

私「さあ、何だと思いますか?」

なぜ急にクイズを出題しているのだろうか私は。

母「えっちょっと何まさか離婚とかじゃ

なぜいきなり正解を出すのか母よ。

私「お母上………正解です!

一瞬の静寂がリビングを通り抜けた。

母「………なんで?」
親友「あの、大丈夫です。向こうが悪いです。egoは何も悪くありません」
母「えっ?向こう?やっちゃった?浮気とか?

私「お母上………正解です!
母「ああーーー、やっちゃったかーーー」

父は頭を抱えて突っ伏してしまったが、母はなぜか私のバラエティのノリを引き継いでしまい、ハイテンションであった。

母「どういうこと!?相手は何者!?」
私「相手はなんていうか、たくさんいる」
母「ええ!?」
親友「不特定多数と、簡単に言うと出会い系みたいな感じです。いろんな2ショットの写真ありますよ」
母「ちょっと見せて見せて!!うわ~気持ち悪い!!」
私「お父さん見る?」
父「いや………」

そう言いながら2ショットを見た父の顔は、その瞬間チベットスナギツネになった。(よかったら「チベットスナギツネ」で検索してください)
無理もない話である。あまりに私たちの日常とはかけ離れている。

鼻息荒い母とチベットスナギツネの父に、これまでの経緯を説明した。時々友人が「特にあの発言はクソだった」と合いの手をいれてくれる。義実家の話をした際にはさすがの両親も「ウチを舐めてる」と腹が立った様子だった。

私「ところでね、そんな裏垢家から直接家に出向いて謝罪がしたいということでしたけれども」
親友「あの態度で何を謝罪するのかっていう感じだけどね」

ミルクボーイの本題に入る時のように話を切り出してしまった。

私「断っていいよね?来られてもキモイし」
父「いらないいらない、もう二度と顔も見たくない
母「こんな気持ち悪い男、こっちからお断りだわ!
私「オッケー、おととい来やがれと伝えておきます」

私「…ということで、嘘をついて犬を洗っていただいてすみませんでした。大変な事件が起こりましたが、強メンタルに産んでもらったおかげで何とか乗り切れたし、親友がいてくれたから嵐の中でも私は一人ではありませんでした」
親友「私だけではなく、味方はたくさんいます」
私「弁護士にも依頼済です」
親友「自分の娘がこんな目に合って、腹が立つししんどいと思うんですけど、心配はしなくて大丈夫です。ego強いし、みんなついているので。でもちょっと一人で過ごしているの可哀想で、実家帰りたいんだよね」
私「犬に癒されながら頑張りたいと思いますので、しばらく実家に帰らせていただいてよろしいでしょうか…
母「それはいいよねえ?」
父「いいよいいよ」

母「しかしあなたたちは、強いねえ。親友ちゃんがいなかったらどうなっていたか。本当にありがとう。なんか大きいお礼しなさいといけないわこれは」
私「慰謝料が入ったら韓国旅行に行くことになってるから」
親友「パーッと遊びます」


おとといきやがれ

親友を家まで車で送って、その日はとりあえず社宅に戻った。戻って義実家のLINEグループにメッセージを送った。

私『本日、私の両親に状況を報告しました。不倫相手が70人という大人数であること、その中に高校生が含まれるということに大きなショックを受けています。また自分自身の性行為の動画をTwitterでアップロードする常軌を逸した行動に大変な嫌悪感を抱いていました。状況を理解してもらうために、証拠となる写真も見てもらいました。』

(不倫相手との2ショット写真) ※バスローブも含めた3種フルセット

私『両親より、夫くんについて、心底気持ち悪い。顔も二度と見たくない。お義父さんについて、深夜に1時間半も電話で侮辱やデータ削除を迫る脅迫を行ったことは断じて許すことはできない。「少し」反省していますという舐めた謝罪も許しがたい、とのことです。
よって謝罪については一切お断りいたします。夜分に失礼いたしました。

送った瞬間、やり切ったと思った。
振り返ると、義両親は夫の不倫の証拠となる動画や写真を全く見ていない。義父の加害についても家族で共有されていない。この1カ月、私が法律を勉強し、証拠を集め、黙々と事件に向き合っている中、義実家はさめざめ泣いたり、逆切れしたりと現実逃避をするばかりで、解決どころか何が起きていたのか知ろうともしなかった。
まず事実を知れ。そして社会に対して私に対して、どうするべきか考えろ。
全員分の既読が付いたが、誰からも返信は帰って来なかった。




さてカミングアウト後の両親の状況としては、やはりショックで眠れず体調を崩し、とても大変だったようです。頻繁に実家に帰れたので私としては大変楽だったのですが、あのとき伝えたのは正解だったのか?私の自己満足ではなかったか?ちょうどマシュマロでご質問をいただいたこともあり、約2年半が経った最近、「言わない方がよかったかな?」と母にきいてみました。

母「いやいやいや、言ってもらわないと困る!確かにこれはとんでもないことになったと思ったよ?結果的には私たちはあなたが強すぎたから直接的には特にやることはなかったけれど、それでも話を聞くとか、ご飯食べさせてあげるとか、直接解決に結びつかないとしてもできることがきっとあるじゃない。仮にもしこれでショックで病気になったり死んでしまったりしたらそれこそどうして話してくれなかったのかと後悔すると思うよ。言ってくれて良かったと思う。」

なんか強すぎてすみせんでした。それは置いといて、割と狼狽えがちな私と正反対の性格の母でもこの回答だったので、トラブルに巻き込まれた時は家族関係に問題なければ基本的に話す、でいいのではないかと個人的には思っています。
その後の家族の反応はまた今後も書きたいと思います。


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