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スカーレット・オハラに人生狂わされたランキング(女性編)

『風と共に去りぬ』という小説を読まれた方は多いと思います。本は読んでないけど映画は見たという方も多いでしょう。南北戦争の時代の変化に翻弄されながらも逞しく生き抜いた人々を、スカーレット・オハラを中心に描いた戦争小説です。
主人公のスカーレットは美人なお嬢様にもかかわらず気が強く、行動的で非常に魅力的な女性なのですが…反面わがままで、近くにいたらはた迷惑なところのある人です。

戦争自体、多くの人の人生を狂わせるものですが、スカーレットとかかわったがばかりに人生狂わされてしまった!という人たちを取り上げて、その観点からこの作品の面白さを探ってみたいと思います。
長くなったので女性篇と男性編に分けて投稿します。女性は物語の最初の段階で独身だった人はその時の名前、結婚前の名前で統一しています。兄弟の上下、兄か弟か、姉か妹かは新潮文庫版に倣っています。

第5位:ピティパット・ハミルトン

スカーレットの最初の夫・チャールズとメラニーの叔母。チャールズが亡くなった後、彼女とメラニーのたっての願いでスカーレットをアトランタの彼女の家に呼び寄せた。スカーレットは内心叔母とメラニーをばかにしながらも都会の生活を楽しんだ。スカーレットが窓から兵隊達に手を振ったり、未亡人でありながら人が集まるバザーに参加したり、悪名高いバトラー船長とダンスを踊ったりと大胆なふるまいをするたび、気が弱い彼女は心臓が縮みあがる。しかし戦争で殺伐としている中、気丈なスカーレットをとても頼りにいしている。人生狂わされるほどではないけれど、ヒヤヒヤさせられた1人。
スカーレットは3回結婚しているが、3度目の夫のバトラーは家族から勘当された身であるし、2度目の夫ケネディーも年を取っていたせいか夫の親戚と顔を合わすことはなかった。しかし、ピティパットの兄フランク伯父さんに気に入られるなど、ハミルトン家の人達とは不思議とご縁が続く。この一族はみな穏やかで人柄が良く、スカーレットを支えてくれた。

第4位:インディア・ウィルクス

スカーレットが恋焦がれるアシュレーの妹。一般的に女は好きな人の姉妹なら気に入られようと骨を折るものだが、スカーレットはそういうところがまったくなく、若い時から未亡人のように陰気くさいインディアを嫌っている。インディアはスカーレットの取り巻きの一人、双子のスチュアート・タルートンの恋人であったが、スチュアートのほうはスカーレットに夢中になってしまった。スカーレットとチャールズが結婚した後は再び恋仲にもどったが、彼は戦死してしまう。
兄がメラニーと結婚し、メラニーの兄のチャールズがスカーレットと結婚したことで親戚になり、いやでもつきあわざるを得なくなってしまった。その上メラニーは常にスカーレットの味方で彼女としは面白くない。
後にアシュレーとスカーレットが抱き合っている現場を目撃してしまうなど、この人は人生狂わされたほどではないにしろ、近くにいて不愉快な思いをさせられた一人。

第3位:ハニー・ウィルクス

アシュレーのもう一人の妹でチャールズの婚約者。インテリの多いウィルクス家の中で、この人だけがちょっと鈍い。モテたい気持ちが強く、男たちに媚びてしなを作ったりしている。
スカーレットはアシュレーがメラニーと婚約したために「自分はふられたんじゃない」という女の見栄でメラニーの兄・チャールズと結婚してしまった。スカーレットがアシュレーを好きなことは誰にも気づかれてはいないが、この人はそれをしっかり見抜いていた。
映画では(記憶が定かではないが)ハニーは出て来ないで、インディアがチャールズの婚約者だった気がする。原作ではハニーは疎開先の西部で出会った男と結婚しているので、むしろインディアよりも幸せな生涯送ったと思われるが、婚約者を奪われて結婚までされたので、ランクは上にした。

第2位:スエレン・オハラ

スカーレットのすぐ下の妹。三姉妹のうち末の妹のキャリーンは穏やかで思いやりの深い娘だが、スエレンはスカーレットに似てわがままなところがある。同じわがままでもスカーレットは世の中の変化を察知して、それまでやらなかった野良仕事を進んでやったり生きるために画策するけれど、この人はお嬢様のまま。反面スカーレットができない近所の女友達の中に溶け込むことができる。
年の離れた婚約者がいたが、スカーレットに奪われてしまう。同じ婚約者を取られた立場でも実の姉に奪われたほうがショックは大きいのでランクはハニーよりも上。しかし、映画では最後まで独り身だったが、原作では最後にウィル・ベンティンという男と結婚して父の農園を継ぐ。ウィルは映画には出てこないが、私個人はこの小説に出てくる男の中で一番好感が持てる人物。なので、捉えようによってはインディアやハニーよりも恵まれているかもしれない。

番外:母エレンと妹キャリーン

この小説には聖女と呼ばれる人物が3人登場する。1人はメラニー、後の2人はスカーレットの母エレンと下の妹キャリーンだ。スカーレットは基本的に女を好いていないが、母親に対しては愛情を越して崇拝さえしている。エレンは貧しい家の子ども達が病気になると率先して看病に向かう。看病した際にチフスに感染して死に至る。
キャリーンは姉達と異なりおとなしく従順で、体が弱いのに文句も言わず力仕事に従事し、スカーレットはこの妹を見直す。もともとタールトン家の双子のブレントに思いを寄せていて、スカーレットがチャールズと結婚した後恋人になれたが、彼は戦死してしまう。最後は母と恋人の魂を弔うために修道院に入る。
私はこの母と三女が『若草物語』のマーチ夫人とベスのイメージに重なる。

番外:スカーレットの子ども達

映画ではレットの間にできたボニーという女の子しか登場しないが、原作ではチャールズとの間にウェードという男の子、フランクとの間にエラとうい女の子んが生まれている。スカーレットはボニーのことはとても可愛がったが、ウェードとエラに関してはほとんどネグレクト状態。言い換えれば彼等が最も大きな被害者とも言える。常にメラニーが近くにいてくれたお陰で、この子達は浮かばれた。

番外:タールトン夫人とミモザ屋敷のおばあさん

スカーレットは男には好かれるが、女たちからはかなり嫌われていた。しかし中には親身に気にかけてくれる女性もいた。タラの近くのミモザ屋敷のおばあさんは何かと親身になってくれ、「もう、何も怖いものはない」と言ったスカーレットに「女は恐れる気持ちを失ってはいけない」などと助言をくれる。
もう1人、取り巻きの双子スチュアートとブレントの母親タールトン夫人は、女だてらに荒馬を乗りこなす名調教師であり息子達を叩いてしつけるなど男勝りな女性。自分と同じじゃじゃ馬のスカーレットを何かと気にかけてくれている。私は個人的にこのオバサン、大好きなんですよ。淑女のようなオハラ婦人よりも素敵。
タールトン夫人は男女合わせて6人の子どもを生み、全員が赤毛。そのうち二人が前述の双子。赤毛の子だくさん兄弟のうちのやんちゃな双子?
どこかで聞いたことありませんか?おそらく『ハリー・ポッター』のJ.K.ローリングス氏もこの小説を読んでいて、その影響でウィーズリー兄弟のキャラができたんじゃないかな?なんて勝手に連想している。

第1位:メラニー・ハミルトン

スカーレットの最初の夫・チャールズの妹でアシュレーの妻になる。ハミルトン家とウィルクス家は親戚で、南部の農家の中ではインテリな家だった。スカーレットは恋敵のメラニーを嫌っていたが、メラニーはスカーレットの行動力や他人に媚びない姿勢などを早くから評価していた。戦火を逃れタラに避難してきた後は、実の妹達や老いてしまった父よりも、スカーレットはメラニーの存在を知らず知らずのうちに頼りにしていた。
家に侵入してきた泥棒をスカーレットが銃で撃ち落とした時、普段の彼女なら絶対にありえないであろうが、スカーレットの行いを誉め、他の者には知らせずに死体の処理を手伝う。社会が混乱している時は善良な人間ですら悪事に手を染めなければならない状況がある。でなければ逆に自分が殺されている可能性もある。真面目な人ではあるが、そういうこともわきまえている。2人のバディー感はこの時が最高潮。

アトランタに戻ってから、スカーレットとアシュレーの不貞疑惑が街中の噂になっても彼女は頑としてスカーレットの味方になった。
スカーレットがアシュレーのことを好きなことは、おそらく彼女はわかっていた。ただ、それは女子学生がアイドルを好きになるようなもので、本当はレットを愛していることも本人以上にわかっていたのだろう。
アシュレーがスカーレットに性的魅力を感じていることも多分知っていた。それでも自分の夫は一線を踏み外すことはないと、アシュレーは自分を愛していることを信じていたのだろう。

そもそもスカーレットと関わらなければ、戦争のことは別として、この人は安泰した人生を送れたはずだ。戦後一段落した時、アシュレーと一緒にニューヨークに行く予定だったが、アシュレーと離れたくないスカーレットの嘆願に夫の意思を抑えつけて従った。メラニー自身がスカーレットと離れたくなかったのかもしれない。スカーレットのほうも表向きの感情はアシュレーと離れたくなかったが、潜在意識ではメラニーと離れたくない気持ちがあったのかもしれない。

それでもメラニーはスカーレットと一緒にいることで、自分が経験できないような様々なことを垣間見たり経験することになった。そういう訳で、この人はスカーレットによって決して不幸にはなってはいないが、人生狂わされてワクワクと面白い人生を歩めたんだと思う。

結び

スカーレットがメラニーを自分にとってかけがえのない存在だと気づいたのは奇しくも彼女の死後。同様にレットを誰よりも愛してると気づいたのも彼が去った後。自分では要領よく生きてるつもりが、大切なものを失った後にその価値に気づくおばかさん。

強さや逞しさはその人物の魅力であるが、欠点もまた魅力になりえる。文学とは人間の愚かな部分を浮かび上がらせるものであるから。
この投稿だけ読んだら、きっとスカーレットってずいぶん嫌な女なんだと思うことでしょう。でも、だからこそ興味が沸いたと言っていただけたら幸いです。
*男性編へ続く


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