えいじくん

大石英史──【sad】出演者インタビュー③

12月14日(金)にロームシアター京都にて幕が上がる、ブルーエゴナク新作公演『sad』。ロームシアター京都×京都芸術センターU35創造支援プログラム‘’KIPPU”の記念すべき第1弾である今作に出演する8人の俳優に、創作過程や今作の魅力についての話を聞いた。

1、「sad」の印象について
人と共有できない「悲しみ」を扱っている作品に思っています。人が生きている以上それぞれが持ってしまう「悲しみ」を、ただ提示、表明する作品に思います。それぞれの「悲しみ」は他人と共有できるものでもないはずなので、ただ提示するという振る舞いに僕は温かみを感じています。

今回、スーパーや花屋で人が出会うのですが、それぞれの「悲しみ」は交わらず並列し存在しています。でも、他人の「悲しみ」を共有することはできなくても、寄り添ったり、見つめることはできるのかもということを感じさせてくれます。だから、「出会い」の話でもあるよなと思っています。

で、人が出会う場がある以上は、今回の「sad」と同じことは常に孕んでいるので、普遍的なことに感じます。なので、今、通っている稽古場も「sad」であるよなと思ったりして、作品に取り組んでいます。

2、自分の役についてー算(カゾエ)ー
僕の役は、レッドキャベツというスーパーに勤めている「算」という役です。「かぞえ」と読みます。

「算」は人から必要とされたい、愛されたいと思いながら、自分はそういうことから無縁と諦めることで、日々を生きている人間のように感じています。でも、とある事件をきっかけに自分が蓋をしてた感情が溢れてきて、自分が本当は人に必要とされたい、必要としたいということに気付くように思います。事件自体は、傍から見たら不幸な時間だったとしても。

ただ日々、「算」の印象も変わっていくので、本番までには全然、違う印象を持つかもです。

3、創作過程について
ともかく今は、スピーディーな創作現場に感じます。いろいろなことを試して良きものを選択するスピード、シーンが立ち上がっていくスピード。
個人的にはそのスピード感に追いつけてないところがあり、今は悔しく思ってます。今後は、そのスピードに追いついた上で、自分が作品について感じてることなどを上乗せしていければと思っています。
今のスピードで進むと、今とは全然違う場所に皆で辿り着くのではないかと思っています。

4、作・演出 穴迫信一について
耳が良い人という印象があります。役者が発する音、舞台上で流れる音、それをきちんと把握した上で、作品を組み立てているように思います。なので、穴迫さんの書く言葉は、もちろん言葉そのものの意味もありますが、それと同じくらい人から発せられることを目的とした言葉のように思います。
また、稽古場での演出としてあり方を見ていると、いろんな人と接して来て、いろんな楽しいこと、大変なことを経験して来た人なんだなぁと感じます。穴迫さんと同年代で関西にそういった雰囲気を持った人は、少ないように感じます。

5、「sad」の見所・魅力について
僕が思う「sad」の魅力は、人をこういう人と断定しないところです。それぞれが切実に生きており、でも「悲しみ」は誰かと共有できるものでないから、他の人とすれ違いが起こる。作品を捜索する過程で、そのように感じています。
そして、作品は、そのすれ違い否定するのではなく、どうしても起きてしまうそれをただ「受け入れる」という態度を取っているように感じます。

僕は稽古の後、乗る電車でたまたま乗り合わせた人の顔を見て、その人にも「悲しみ」があるのだろうなとぼんやりと思い馳せる時間が最近、多いです。そのように、ただ人をこういう人だと断定するのではなく、ただ他人に思いを馳せるキッカケを与えてくれる作品のように思います。

それが僕の感じる「sad」の魅力です。

大石英史 ー算(カゾエ)ー
2015年よりdracom登録メンバーとなる。以降、dracomの多数の作品に出演。
dracomでの公演の他、コトリ会議、庭劇団ペニノ、新聞家など、多数の団体の公演に参加している。

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ブルーエゴナク「sad」
2018.12/14(金)~16(日) ロームシアター京都ノースホール
▼特設WEBサイト


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