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スタートアップで大事な「ワクワク」がプロダクトビジョンで広がってきた話


こんにちは。株式会社スマートショッピング でプロダクトマネージャーをしている、江口です。知らない方がほとんどだと思うので一応、会社紹介↓。

私はキャベツの千切りが大好きで、自宅の冷蔵庫は1つの棚がドレッシングで埋まっています。さすがに増えてきたので、このあいだ棚卸をしました。

棚卸といえば、後ほど紹介する私の担当プロダクトが最初の PMF を迎えたのは "棚卸の自動化" でした。今回は、そんなプロダクトが次なる成長を目指す道のりでぶつかった壁についてのお話です。

本文へ行く前に、私の経歴も簡単にまとめておきます。
気になった方はぜひお読みください。

1社目:エムスリー(医療系 IT企業)
新卒入社後、医師向けプラットフォームの Growth をミッションに新規サービスの立ち上げたり、製薬企業向けのソリューション営業などを経験。
その後、イギリスにあるグループ会社へ駐在、現地事業の Growth をミッションに Product/Marketing チームの業務改善や、自らで企画も行いました。

2社目:スマートショッピング(重量計 IoT を活用した在庫管理クラウド)
タブーとされる未経験の職種 x 業界への Wチェンジを果たし、プロダクトマネージャーとして入社。ソフトウェア領域を担当しつつ、ハードウェアを使うからこその難しさや、製造業の複雑さと向き合う日々。

ここからが本文です。


今期のテーマは「ワクワク」

弊社は 10月が期末なので、今月から FY2024が始まりました。
期初の全社イベントで発表された今期のテーマはこちら。

弊社 FY2024テーマ

正式な表現は 「顧客のためにワクワク!」で、(私の理解では)こんな想いが込められています。
・お客様をワクワクさせるには、まず自分たちがワクワクしよう
・どんどんチャレンジをして「やりきった」と思える1年にしよう
・お客様への価値に集中して、皆でアイデアを出しあおう

スタートアップである以上、色んな観点で整っていません。そんな中で働き続けるには、なんだかんだ「やりがい」が重要だと思っており、このテーマは気に入っています。
今回ご紹介する、部門横断でプロダクトビジョンを話し合った背景にも、通じる部分があると思っています。

プロダクトが抱えていた課題

私が担当する「スマートマットクラウド」は、重量計 IoT を活用した在庫管理クラウドです。

リリースから5年経っており、「マットが人の代わりに在庫を数えて発注」の棚卸・発注の自動化ツールとして、医科歯科系のお客様を中心にスタートしました。
そして、1年ほど前からは更なる事業成長を目指して、製造業のお客様を中心に新たな課題へチャレンジしています

FY2023 も終わりが近づいた頃、個人的にプロダクトチームとしての活動を振り返る中で、大きな課題を感じていました。3つ順に挙げていきます。

1. プロダクトがフランケンシュタインになっていないか?

事業成長に向けて連続した PMF を模索する中で、集められた顧客要望や直近の事業戦略をベースに色々な機能を増やしてきました。しかし、Horizontal 的にカバーする業界を広げていく中で、結局このプロダクトは何がしたいんだっけ?が見えずらくなっていました。極端な話、ニーズがあったとしても我々は作るべきじゃない機能もあるんじゃないか?という疑問です。

2. プロダクトチームの自律性を下げてしまっていないか?

ロードマップの運用はプロダクトマネージャーにとって、腕の見せ所とも言える大きなトピックです。弊社では、正直なところ「成果や達成したい状態」というより「機能」に近い形でもともと定義されており、まだまだ改善の余地がありました(今も改善を進めています)。

これによる弊害はさまざまな所で語られていますが、弊社もプロダクトチームを見渡すと、一人一人が自分で考え意思決定できる範囲が狭い(がゆえ、自律的なマインド自体がボディブローのように削られてしまう)のでは?という心配がありました。
この課題が顕在化するパターンとしては、ちょっとした論点に対しても「〇〇さんに確認しなきゃ」「これ、どうします?」という "他者任せ" コミュニケーションなどかなと思います。

3. ビジネスメンバーに活動が伝わっているか?

どれだけ機能を作っても、ユーザーに届かなければ意味がありません。
届けてもらうために協力が必要なビジネスメンバーから「なぜ今これを作ったのか?」「顧客要望を挙げても改善されない」という声がちらほら出ていました。

当然、機能を作る前にビジネスメンバーへ相談したり、開発中の案件は何度も共有したりと、連携の工夫はあの手この手でやっていましたが、情報を投げつけるのではなく受け止めてもらうことの難しさを痛感しています
これは今思うと、 1. に挙げたようなプロダクトとして目指す大きなストーリーがない状態のまま、個別案件を都度シェアしていたので、情報がぶつ切りになってしまっていたのも要因だと思っています。

(おまけ) 仕事にワクワクが足りない!

なんやかんや挙げました(し、それはとても重要ですが)、一番はこれに尽きるかもしれません。どれだけ頭を抱えて夜も眠れない課題があっても、仕事が楽しければ頑張れるし、突破するエネルギーにもなります。

当時、振り返りながら誰に見せるでもなく手元で作ったスライドがこちらです。まさか「ワクワク」が会社のテーマになるとは笑

前期の振り返りサマリー

なぜプロダクトビジョンに立ち返ったのか

そんなことを思いつつアプローチ方法に悩んでいたのですが、積ん読だったこちらの表紙に目を惹かれて読んだところ、雷に打たれました。

詳細は割愛しますが、前述のモヤモヤを気持ちいいほど指摘しています。
グサグサ刺さりすぎて辛くなり、途中で一回呼吸を整えました。
この note を読んで少しでも気になった方は、ぜひ目を通してみてください。これからも定期的に読み返したいなと思う一冊です。

ここでは重要なプロダクトマネージャーの職責に、
・組織ゴールとしてのプロダクトビジョン
・そこまでの道標としてのプロダクト戦略
の設定が挙げられています。

これは私なりの解釈ですが、なぜそれが今回の課題に効くと感じたのかも添えておきます。

  1. プロダクトの目指す姿と照らした意思決定ができる

    開発案件の意思決定をする際に、今までは目先の事業目標しか拠り所がなかったが「我々として目指す姿へ近づけるのか?」も大事なはず。プロダクト開発に論理だけでなく意志を込めていけるので、[課題 1.]を防げる

  2. エンパワーされたプロダクトチームは自律性の塊である

    プロダクトビジョンやプロダクト戦略がチームをエンパワー(ニュアンス伝われ!!)するのに必要なら、[課題 2.] を突破する必要条件とも言える(し、弊社の場合は十分条件にもかなり近いと感じた)

  3. プロダクトチームの活動にストーリーが生まれる

    それがプロダクトの目指す姿にどう紐付く/近づくのか、がクリアになることで、各案件に文脈が生まれる。すると、案件の情報がぶつ切りの塊から繋がった数珠のようになり [課題 3.] を解消するきっかけになりそう

取り組みと、嬉しい効果

具体的に何をやったのか
弊社では、会社兼プロダクトのビジョンが「モノの流れを超スマートに」というシンプルな言葉では定義されていました。
ただ、時間軸がなかったり、具体的な顧客価値まで表現されておらず、結局どういう状態?が曖昧。そこで、3年後に目指す姿を具体化することにしました。

今回は "意思決定" より "議論" に重きを置きたかったため、社内の色んな部署のメンバーと話し合う場を何度か作りました。
オフラインを中心に、まずは飲み会形式でブレストだけをワイワイやり、そこからは会議室にまとまった時間で集まり、少しずつアイデア出しと収束を繰り返しました。
最終的にはホワイトボードも使って、今までの業務を通して感じているプロダクトの可能性や面白いと思えるか、を軸にまとめています。

話し合いながらわちゃわちゃ書いたホワイトボード

懸念材料は、私がお試しでやり始めたボトムアップな活動かつ、差し迫る次年度ロードマップの作成にも間に合わせたかったので、時間的な猶予から議論に巻き込めた経営陣が限定的だった点です。

ただ、CPO が活動を全経営陣へシェアしており、次年度予算や事業戦略を作るタイミングで、こちらの資料へ頻繁にアクセスされていました。
そのおかげで、会社の事業方針と完全に独立したアウトプットになるのは防げたのかなと思っています(CPOに感謝)。

活動の結果、期初の全社イベントで「プロダクトが 3年後に目指す姿」のシェアもできたので、粗さはありつつも及第点は出せたかなと思っています。

今期はまだ始まって半月ですが、嬉しい効果も感じられています
私が所属する開発ユニットのエンジニアは、前述の議論にも参加しており、早速 3年後に向けての逆算から生まれた案件の開発をしています。先日とつぜん「今の開発、ワクワクできてます?」と聞いてみたら「僕はしてますよー」との回答がありました!
露骨な誘導尋問なのでこれは無効回答ですが(笑)、目の前の案件について議論するときも未来を見据えた仕様アイデアの意見が出たりと、他ユニットも含めてプロダクトチーム全体に、今までにない盛り上がりを感じています。ワクワク!。ゴールが見えたことで、目の前の仕事をそこへリンクさせやすくなったんじゃないかなと。

最後に

とはいえ今期も始まったばかりなので、これからが本番だと思っています。プロダクトの目指す姿を浸透させつつ、前述の課題は吹き飛ばして、社内を、ひいてはお客様を、もっと「ワクワク」させていきたいです。
そして、せっかく話し合ったプロダクトビジョンや目指す姿は、決めて終わりじゃなく達成していきたいです。

皆様も、チームの連携や意思決定で歯車が回らなくなってきたかも、と感じたらプロダクトビジョンや目指す姿に立ち返ってみてはいかがでしょうか。


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