ときどきときめき
2023年6月23日。久しぶりにギターを弾いた。今滞在しているカオサンのホステルに偶然置いてあったのだ。まあ、弾いたと言っても別に私はギターが得意なわけでもなければ、きちんと弾けるわけではない。ただただいくつかのコードを鳴らすことができるだけだ。
昨日の続きが今日で、今日の続きが明日で、日々の境界が溶けていく日々の中で、何かを求めていた。「BABY BABY」「夢で逢えたら」「少年少女」を手始めに弾いてみた。相変わらずいい曲だった。心がときめいた。同じホステルに泊まっている同じ年齢の青年も喜んでくれた。
調子に乗って「青空」「夕暮れ」「アンダルシアに憧れて」「チェインギャング」を立て続けに弾いた。指が痛くなった。ポキポキ鳴った。涙が出てきた。
弾き終わって、何かしなきゃなと思った。焦燥感が背中の後ろで手を叩いていた。忙しい日々を離れ、ゆったりとした時間に身を置いて思うのは、いつまでもゆっくりはしていられないということだ。
ぼんやり頭の片隅にあることを集めて、目標を見つけよう。
2024年の2月。同じホステルに泊まった。前回泊まった時の自分は、いったい何を考えていたのだろうか。漠然と
「いいものを書きたい」
「いい写真を撮りたい」
と言う気持ちだけがあった。もしかしたら、それすらも言語化できていなかったかもしれない。あの時撮り溜めていた写真は、ストレージの奥で眠っている。もしかしたら、今ならそれを扱うことができるようになったかもしれない。
やっぱり、一回ここで、自分が今まで見てきたものを整理する必要性を感じる。ぼんやりと、頭の中を漂っているものを、一列に並べることで見えてくるものがあると思う。
***
今回も、ホステルで、ギターを弾いた。前来た時よりも、ちょっとだけ上手くなっていた。一緒に泊まっていた人たちのリクエストを聞いてみたり、自分が弾きたい曲を弾いた。
弾き終わるたびに、みんなが拍手をくれた。嬉しかった。ただただ他の誰かが作った曲を弾いて、下手な歌を歌っただけだけど、それを喜んでくれる人がいた。
その、どこまでも現実的で、暖かな手触りを、忘れるまいと思った。
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