埃及

言語が好きな人類学専攻。得意だとは言ってない。 好きな食べ物は唐揚げ。給料は唐揚げでも…

埃及

言語が好きな人類学専攻。得意だとは言ってない。 好きな食べ物は唐揚げ。給料は唐揚げでもらいたい。

マガジン

  • アラビア語RTA

    アラビア語の勉強をしていた時の記録です

  • ロマンスはカイロにて

    大学3回生の冬休み。寒さの厳しいアレクサンドリアを脱して、暖かなダハブへの逃避行をした。そこでの出会いと束の間の日常を描く。

  • イスラム教との邂逅

    エジプトに住み、イスラム教に触れる中で考えたことをゆるく書く。厳密な考証は行っておりません。

最近の記事

道標

思い出なんて、今は、誰にも話したくない。それでも、どこかに書いておきたい。 目の前の状況がさっぱり理解できない。本当に意味がわからない。点と点が全く線を結ばない。何をしていても、何もしていないような気分になってくる。全てのことは風のように体を通り抜けるばかりで、それ以上何も影響を及ぼさない。 どうやら、恩師が亡くなったらしい。 どうしても理解できない。友人から連絡があったが、それを理解することができなかった。本当に、悪趣味な冗談を言う奴だなと思った。腹がたったから電話し

    • えっ、私がバーで働くんですか!?完結編

      同居人から突然、「1日だけバーで働かないか?」と言われたぷー太郎の話の続きです。たった1日働いた話を結局一万字程度書いた自分に驚いています。しかしながら、想像以上に長くなった連載もここまで。意味もあんまりよくわからない駄文にお付き合いいただきありがとうございました。冒頭はこちらから。 団体客が帰っても、忙しさはしばらく終わらない。グラスを下げて、洗い、そして磨く作業があるからだ。ほっと一息つく暇もなく手を動かし続けてきた。その反動で、客が帰ると足に疲れが出てきた。普段図書館

      • えっ、私がバーで働くんですか!?客来た編②

        同居人から突然、「1日だけバーで働かないか?」と言われたぷー太郎の話の続きです。普段働かなすぎて、全てが新鮮に映った結果、たった1日働いた話でもうすでに6000文字程度書いている自分に驚いています。冒頭はこちらから。 ウェルカムドリンクを運び終え、バーカウンターの中へと戻った。とは言っても洗い物などはまだない。すると、ひと組のお客さんが来た。中年のカップルだか夫婦で、非常にご機嫌だった。ひょっとしたら何かの記念日だったのかもしれない。女性の風貌は小学校一年生の時の担任を思い

        • えっ、私がバーで働くんですか!?客来た編

          同居人から突然、「1日だけバーで働かないか?」と言われたぷー太郎の話の続きです。冒頭はこちらから。 注文を取らなければならないという事実に戦々恐々としていた。よく考えててみてほしい。アルコールに弱いがために、あまり酒に詳しくもない人間が的確に酒の注文を取ることができるのだろうか。できるわけがない。あゝこんなことなら、もう少し酒について知識があったらよかったのに。 「ないものはない」というのはもはや今日のテーマである。もしかしたら人生を貫く大きなテーマなのかもしれない。才能

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        • アラビア語RTA
          7本
        • ロマンスはカイロにて
          5本
        • イスラム教との邂逅
          1本

        記事

          えっ、私がバーでバイトするんですか!?開店準備編

          同居人から突然、「1日だけバーで働かないか?」と言われたぷー太郎の話の続きです。冒頭はこちらから。 店に入る。あたりを見回す。1度来たことがあったが、改めて見るとその荘厳さに驚いてしまう。さまざまな人間のさまざま人生が交差し、そしてまたそれぞれの生活へと戻っていく。オレンジ色の優しい光と、古い洋画を映し出すブラウン管テレビ、真っ赤でふかふかな回転椅子に、人の思いが詰まったバーカウンター。この場所にほんの少しでも関われるということを嬉しく思った。 同居人は先輩として、何をし

          えっ、私がバーでバイトするんですか!?開店準備編

          えっ、私がバーでバイトするんですか!?

          同居人から、唐突に告げられた。 「明日バイト入れる人知らない?人がいなくてさ。」 同居人のバイト先は、バー。それもオーセンティックバー。一度冷やかしに見に行ったことがあるが、マスターはジャケット、バイトもワイシャツにベスト、蝶ネクタイという出立だった。バーカウンターの後ろの壁には何やら高そうな酒が所狭しと並べられていた。 そんな雰囲気むき出しのバーで急遽1日だけバイトできるような友達を私は一人も知らなかったので、 「うーん。知り合いにはいないかも〜」 と曖昧に返事し

          えっ、私がバーでバイトするんですか!?

          選手宣誓のようなもの

          日本軍は第二次世界大戦で、真珠湾攻撃を仕掛けしました。それはどうしても勝ち目のない戦争でした。局地的には勝利を続けましたが、兵站が伸び切ったタイミングで、徹底的に分断されました。よくある手法です。それ以前の戦争の影響もあり、人員も物資も慢性的に不足している中、戦争が開始されました。 それは、悲惨な、末路をたどりました。多くの人が死にました。多くの若者が死にました。なぜこんなことが起こってしまったのでしょうか。一つには軍部の妄想があります。 「日本人なら勝てるはずだ」 「大

          選手宣誓のようなもの

          ときどきときめき

          2023年6月23日。久しぶりにギターを弾いた。今滞在しているカオサンのホステルに偶然置いてあったのだ。まあ、弾いたと言っても別に私はギターが得意なわけでもなければ、きちんと弾けるわけではない。ただただいくつかのコードを鳴らすことができるだけだ。 昨日の続きが今日で、今日の続きが明日で、日々の境界が溶けていく日々の中で、何かを求めていた。「BABY BABY」「夢で逢えたら」「少年少女」を手始めに弾いてみた。相変わらずいい曲だった。心がときめいた。同じホステルに泊まっている

          ときどきときめき

          「教養」嫌い

          先日、本屋に行くと、「本物の教養を身につけるには」とか「教養を学ぶ意味とは」といった毒にも薬にもならないような本が積み上げられていた。この手の本の中身は、まるで生成AIにでも書かせたかのように内容が均一で、とても教養のある著者が書いたようには見えない。そんな本には興味はないので、目当ての本を探しに行く。レヴィ=ストロースの『悲しき熱帯』だ。 言わずと知れた古典的名著。しかし、『悲しき熱帯』はおろか、『野生の思考』も『今日のトーテミズム』も置いてはなかった。 もちろん、レヴ

          「教養」嫌い

          友人とタクシーに乗っていた。そのうちの一人が 「有給使って、6連休にしたんだ〜」 と言った。私は以前、一年半休学するという記事を書いた。一年半というとそうでもないけど、これを日数に換算して、547連休と言うと、とんでもないダメ人間になったような気がする。実際そうなんだけれども

          友人とタクシーに乗っていた。そのうちの一人が 「有給使って、6連休にしたんだ〜」 と言った。私は以前、一年半休学するという記事を書いた。一年半というとそうでもないけど、これを日数に換算して、547連休と言うと、とんでもないダメ人間になったような気がする。実際そうなんだけれども

          旅のはじまりと、インターネットカフェ

          小学校の同級生たちとの旅行を終え、福岡のネカフェに泊まることにした。私だって、ネカフェのような閉塞された空間に宿泊したくなんかない。ありとあらゆる人間たちが、この狭い空間でし得るすべてのことをしてきた歴史のある部屋に、果たして安らぎなどあるのだろうか。怨念やら、執念やらは漂ってそうだけれども。 祭りが終わった翌々日は(翌日は片付けがある)、大きな虚無感と寂しさに悩まされるように、旅行の終わりもまた、寂しいものだ。特に大人数で3軒の屋台をハシゴした後に、居酒屋でおでんを食べ、

          旅のはじまりと、インターネットカフェ

          孤独を泳ぐ

          『52ヘルツのクジラたち』を読んだ。大学が大分にあることもあって、とり天やら、ゆめタウンといった、小説の中で描かれるモチーフに親近感を持った。作品の中で、余所者に干渉しすぎる、田舎特有の空気感が描き出される。 私が住むこの街では、まだまだ他人に関心を払う。例えば温泉に入るときは、先に入っている人に挨拶をしたほうがいい。こうすることで、地元のおじさんたちは話しかけてくれるようになる。「他人の家の風呂を貸してもらっている」というような心構えを持っておけば、別府の温泉は基本的に問

          孤独を泳ぐ

          暴力革命

          課題に追われる日々の中、ふらふらとYoutubeの海を彷徨っているとある動画に出会った。そこでは、若者が左翼的な活動に傾倒している様子が映されていた。 「資本主義を打破する」 打破、ダハ?その文字列の音の響きが、あまりにもしっくりこないものだから、思わず声を出してしまった。いまだにそんなことを真面目に言っている人がいるのか。60年代の若者が、革命という言葉にロマンを感じ、大学を占拠していたような話を歴史として聞いたことはあった。しかしどうしても同じ時間軸の話だと思うことは

          暴力革命

          手さぐり

          私が通う大学には、4月にちょっと狂った催しがある。曰く、新入生を集め、1ヶ月間で論文を書かせるというものだ。一回生たちはグループに分かれ、リーダーと呼ばれる指導者のもとでテーマごとに論文を書く。テーマの内容は多岐にわたる。リーダー(2回生以上)が興味のあるテーマを事前にある程度リサーチし、読むべき本や論文を収集して一回生とともに探求していく。 私は今年そのリーダーをやってみようと思っている。一つには一回生に本を読むことの素晴らしさを知ってもらいたいという気持ちがないことはな

          手さぐり

          大学4年生、休学する

          必要な書類を抱えて、大学のオフィスへと向かう。普段は入らない場所へと入っていく。なんだか変な気分だ。まだ最終レポートがいくつか残っているし、卒論も書いている途中だ。このタイミングで、本来なら就職するタイミングで休学なんてどうかしている。 休学理由書を必要もないのに5000文字も書き、30000円の印紙を買って、必要な書類に必要な情報を記入した。あとはこれを大学に提出するだけで休学ができてしまう。そのあまりにも簡素な手続きに拍子抜けした。一年半もの期間休学するのに3万円しかか

          大学4年生、休学する

          電話

          赤黒い液体が壁に飛び散ったような写真が高校時代の友達から送られてきた。 「もう死にます。探さないでください」 精神にある種の問題を抱えているような友達からこんなメッセージを受け取ったものだから、私はびっくりして、2秒後には電話をかけていた。 「お前どうしたんだ!」 「ん、あ、これ?ビーフシチューこぼした。」 心配を返しなさい。曰く、コンビニで売っているビーフシチューを開封しようとしたところ、力加減を間違って壁にぶちまけたという。写真をよく見ると確かにビーフシチューのよ