見出し画像

【韓国ミュージカル】《イルテノーレ》2024年@ブルースクエア

イルテノーレ(일 테노레)※イタリア語で「テノール(テナー)」
2023.12.19 - 2024.2.25@芸術の殿堂
[延長]2024.3.29 ~ 2024.5.19@ブルースクエア

🎵作品紹介

『イル・テノーレ』はイタリア語でテノールの意味。本作は韓国で日帝強占期と呼ばれる日本植民地時代だった1930年代の京城(現在のソウル)を舞台に、朝鮮初のテナーを夢見る青年ユン・イソンと、オペラ公演のスタッフとなるソ・ジニョン、イ・スハンを中心に、抑圧的な時代のなかで夢に向かって走る若者たちの姿を描いたファクション(펙션/ faction:史実をもとにした創作劇)ミュージカル。

主人公ユン・イソンには実在のモデルがいる。1930~40年代に東洋一のテナーと呼ばれ活躍していた声楽家イ・インソン(李寅善 1907-1960)だ。

当時朝鮮初のイタリア留学を経て帰国後オペラを初上演。声楽家でありながら朝鮮初の医大、セブランス医科大学(現在の延世大学校)を卒業した医師でもあった才人の半生がドラマチックに描かれる。

韓劇.com

👉️韓劇.com
👉️韓国版のWikipedia

🎵キャスト

ユン・イソン役:ホン・グァンホ
ソ・ジニョン役:キム・ジヒョン
イ・スハン役:チョン・ジェホン

ユン・イソン役、ホン・グァンホさん、パク・ウンテさん、ソ・ギョンスさん、どなたで観劇しようか悩んだ末、日程の関係もあり、ホン・グァンホさんとなりました。
豪華なメンツすぎて再演ができるのか?と思うくらい豪華です。

冒頭の「作品紹介」の通り、1930年後半の日帝強占期のお話ですので、当時の歴史の予習をしました。
(この記事の最後におすすめ本をご紹介しています)

また、先輩たちの観劇感想や解説も、とっっっっても参考にさせていただきました。
この場をお借りして感謝申し上げます🙏

RYU様 ブログ
時代背景・主要人物のご紹介・ストーリーや歌詞を解説してくださってます。非常にわかりやすいです。


🎵感想

🎶全体を通じて

音楽、コーラス、群舞、照明、すべてが調和していて、どのシーンも美しく切ない。

どの点も最高点をつけたい上質なミュージカル作品です。
調和」「シンフォニー」という言葉がふさわしい。

ミュージカルとは総合芸術」だとあらためて感じました。


🎶主人公 ユン・イソン(ホン・グァンホ)

第1幕は、医大生でありつつも、抗日運動を推進する「文学会」のソ・ジニョンとイ・スハンと出会い、そして「オペラ」に出会って歌う喜びを知る、というストーリーです。

ホン・グァンホさんの学ラン姿が幼く見えるのに、歌い出すととんでもない美声で、そのギャップにおもわず笑みがこぼれます。

👇️主人公 イソン(左)と「文学会」のリーダー ジニョン(右)
女学生のチマチョゴリ風の制服が、質のよい生地を使っていて上品です。



🎶ソ・ジニョン役(キム・ジヒョン)

キム・ジヒョンさんの滑舌がとても良くて、2階席センターブロックによく声が届く。
あとから振り返ると、「発声」「姿勢」をアドバイスする立場(シーン)なので、この役作りなのだろうと気づきました。
「文学会」のリーダーで、時代に翻弄されつつも信念を貫いた姿が印象的でした。


好きなシーンのひとつ👇️
試験に集中しなければならないのに、頭のなかで「オペラを歌いたい!」「いや、勉学しなければ!」と悩むイソン。
次第に、周りの白衣学ランの学生たちが、イソンの葛藤を代弁していく。
このシーンをきっかけに、イソンが「オペラをやる!」と決心します。

場面転換の照明の切り替えと群舞、そして美声が揃って、聴き心地がいい。
少人数にも関わらず2階席にストレートに音が響いてきます。

ブルースクエアの音響、1階席より2階席のほうがよりいいよーとのことだったので、2階席を選んで正解でした。

群舞が大好き人間としては、たまりません。
映像を公開してくださり、ありがとうございます、OD COMPANY様!

幻想オペラ(パク・ウンテ)


こちらのシーンだけでなく、全体的に群舞、照明、音楽、アンサンブルの調和がすばらしいんです。映像だけだとその空間がうまく伝わりづらいのですが。

群衆が行き交うシーンでも、ささっとぶつからないように早く歩く、踊る、など、音にのせてシーンが切り替わるのが徹底されていて、見ていて飽きません。


夢の重み(ホン・グァンホ)


夢見る者たち(ソ・ギョンス)



第2幕は、ネタばれが不可避なのと、ストーリーを十分理解しきれている自信がないため、詳細を語れず申し訳ないです…。

このシーン、アングル、照明、すべてが美しい…



自由と夢を求めて

「イルテノーレ」は、日本の植民地時代の朝鮮半島における朝鮮総督府がおこなった武断政治に代わる統治方針「文化政治」や日本人と朝鮮人の格差が背景にあります。

たとえば、街中を駆けていく人力車。

電車以外に特別な交通手段がなかった1910年代初めまでは、人力車は代表的な交通手段のひとつだった。
しかし、公共交通機関が整備されていき、初期は日本人中心だった人力車の車夫は、次第に低賃金労働者の朝鮮人の比重が増えていった。
1924年に労働組合を設立し、処遇の改善を推進した。

ソウル歴史博物館
ソウル歴史博物館


これはあくまで私個人の感想ですが、2幕のラスト『なぜ決行しようと決意したのか』が、統制された側した側とで、受け取りかたが異なると感じました。
(「統制」という単語が正しいのか難しいところですが)

1919年「三・一運動」をはじめとした独立運動をしながらも、1945年まで続いた歴史を通じて、「無情」「無念」や「自由」「自国」への切望の感覚が自分が持っているものと明らかに違う。

なぜなら表現を制限されても、自国の言語の使用の禁止や他国の言語を強制されたことがないためです。
そのため、いまの知識や経験のなかで感じきれるか?
観劇後のいま振り返ってみても非常に悩ましいです。

でも言えるのは、本作品を通じて「知る」経験ができました。


チケット発券時に、日本人だと分かると「1枚ですか?」と日本語で問いかけてくださったスタッフさん。
グッズ購入時に、明らかに韓国語ではない発音の自分に対する、列に並んでいたお客さんの「ここに日本人がいるの!?」という目線。

それらの体験も、現地を訪れたから知ることができました。

👇️舞台プロデューサー シン・チュンスさん

1930年代の歴史背景をもとに、実在の人物をモデルにしながら、個人的な叙情をドラマチックにした作品です。
今後、国内だけでなく世界でも通じるような普遍的なテーマ、芸術性を高めるため、すべての俳優、作詞、作曲、クリエイティブチーム、スタッフが努力を積み重ねました。

「イルテノーレ」パンフレットより


🎫チケット購入

チケット販売サイトにて購入できますので、興味のあるかたはぜひ会場に足を運んでみてはいかがでしょうか。

👉️Global interpark


画像翻訳👆️
期間限定の入場プレゼント「学生書」をいただきました


👇️【韓国の歴史】1900年代を知るおすすめ5冊
「イルテノーレ」の観劇前の予習


👇他の記事もぜひ読んでみてください


この記事が参加している募集

おすすめミュージカル

おすすめミュージカル