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図書館を考える ⑴はじめの一歩

今になって振り返ってみると、地元図書館の協議会委員に加わることになったのは、給食に関心を寄せての活動がきっかけだった。「あなたは本のにおいがする」と仰っていただけたものの、司書資格は持ってないし、図書館については全くの門外漢。これは辞退させていただくべきと思ったが、こんなうるさいおばさんに声がかかるくらいだから、よほど引き受け手がなくて困っておられるか、何かしら訳ありなのだろうと推察した。図々しいけれど、利用者目線、母親の視点でしか意見を申し上げられないことをお断りした上で、お引き受けしたのだった。

当時、佐賀県武雄市にTSUTAYA図書館第1号ができたことが話題になっていた。この斬新な取り組みに賛否両論あったものの何故なのか理由もわからなかった私は、とにかく昨今の図書館事情を理解しようと思い、まず以下の本を読んだ。

にわか情報収集の思い出が詰まった本

📘渡部幹雄『地域と図書館』(慧文社、2000年)
📙猪谷千香『つながる図書館』(ちくま新書、2014年)
📕菅谷明子『未来をつくる図書館』(岩波新書、2003年)
📙樋渡啓祐『沸騰!図書館』(KADOKAWA、2014年)
📘山崎亮『コミュニティデザインの時代』(中公新書、2012年)

このうち渡部幹雄氏と猪谷千香氏のご講演を後に拝聴する機会に恵まれることになるのだが、両氏のご著作は図書館が抱える課題や今後進むべき方向を見定める上で大変示唆的な内容だった。読書人口、利用者ともに減少傾向で、予算も年々縮小されつつある一方で、賑わいをもたらす地域の中核としての図書館が出現しつつある状況をどうとらえるか。周囲に指定管理者制度に移行する図書館が増える中で、当地はどの方向を目指すべきか。この2冊に出会えていなければ、終始、的外れな意見しか出せなかったことと思う。

山崎亮氏のご著書は図書館とは直接の関係はないが、地域の中での図書館を考える上で欠かすことのできない視点だと思った。

TSUTAYA図書館仕掛け人である樋渡啓祐氏の視点は、図書館ユーザーを従来の常連に限定せずに広げる上で、とても参考になるものだった。と同時に、これまで図書館が守ってきたものを大胆に削ぎ落としてしまったことが反感を得た原因であり、その喪失の大きさをさらに知る必要があると思った。

菅谷明子氏の話題の書は後に映画にもなり、多くの方が知るところとなった。米国滞在歴は1年程度しかない私でも、その動向は十分理解できるものだった。市民が寄付やボランティア活動で創り上げるのは、ニューヨーク公共図書館に限らず、保育園や学校の運営、公共放送の資金集め等で目の当たりにしていた。それも30年程前に。これをそっくり日本に適応するのは無理だと思ったが、佐賀県伊万里市にその日本版ともいえそうな伊万里市民図書館があることを知ったのも、猪谷氏の『つながる図書館』からの情報だった。

奇しくも佐賀県に両極の先進事例ともいえる伊万里市民図書館武雄市図書館が揃っているため、視察団はその双方を見学して帰られることを後に耳にした。残念ながら任期中に佐賀を訪ねることはできなかったが、以来、実際に先進事例を自分の目で見て回ることを心がけるようになった。(つづく)