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第35話 英文契約書を実際に書くー文章でなければなりませんか?

第23話から第29話まででは、英文契約書にどんなことが書いてあるかについて、売買契約、役務提供契約、ライセンス契約を取り上げてお話ししました。また、第30話から第34話では、契約書の後ろ半分を占めている、見たところ呪文のような、いわゆる一般条項のお話をしました。

今回からは、英文契約書を実際に書いてみようと思います。

契約書は文章で書かなければならないのでしょうか?
契約書だからといって、必ずしも「文章」で書かなければならない、というわけではありません。単語を並べただけの契約書というものだってあります。(☚これがポイント)

例えば売買契約の場合、日本語でも「売買契約書」「売約証」などという名前で、取引の具体的な項目を、空欄を埋める形で書き入れていく書式があるのは、ご存じの通りです。宅配便の伝票(送り状)を思い浮かべてください。

もっともこれらの書式には、一般条項が裏面にぎっしりと書かれていることが少なくありませんので、契約書全部が単語で書けるとは言い切れないかもしれませんが……。

英語でも ’Sales Contract’、’Sales Note’ などと呼ばれる書式をもっている会社がたくさんあります。

またその他に、「船荷証券Bill of Lading)」、「海上運送状Sea Waybill)」、「倉荷証券Warehouse Receipt)」、「保険証券Insurance Policy)」、「傭船契約Charterparty)」といった「
穴埋め式」の記載欄をもつ定型の書式があります。

売買契約書式を考える
では売買契約を単語だけで書いてみましょう。

             Sales Contract
                                                                               Date: 21 February 2024

Seller:        Pacific Manufacturing Co., Ltd.
                 [address]
Buyer:       JBG Corporation
                 [address]
Product:   Printing Machine RP-02
Quantity:  One (1) set
Price:        Japanese Yen Five million (JPY 5,000,000)
                 CFR Kobe (Incoterms 2020)
Shipment:
                 No later than 30 March 2024
Payment:  TT Remittance
Payment date:
                 Within 10 days after the date of this Sales Contract

文章で書いてみましょうー相手の義務を中心に
これで契約書の実務的な部分が出来上がりました。今度はこれを文章に直すことを考えてみましょう。
 
上の書式は、各当事者の立場・役割、権利者は誰か、義務者は誰かは了解されている前提で作られています。またどちらか一方の当事者の視点で書いているわけでもありません。

しかし、契約書を文章で書くときは、主語が必要です。では誰を主語にするかというと、第23話でも少し触れたのですが、相手方の義務という視点から書くのが基本です。(☚これがポイント)

義務として書いた方が、相手がそれを実行しなかったときに追求しやすいのです。

「そんな書き方をして不公平ではありませんか」という声もあるかもしれませんが、言い過ぎを覚悟するとすれば、「笑ってごまかす自分の失敗、厳しく追及、相手の失敗」のように考えればよいのです。現実には相手方も交渉段階で、同じような主張をしてきますから、一方的なままで終わるわけではありません。

では次回から、単語だけの契約書を文章で書くことを考えてみましょう。

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