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カウントダウン

あと4日で高校生ではなくなる。

私は高校が好きでも嫌いでもなく、ただ平凡に過ごしていた。友達もいるし、嫌なことは特になかったが、すごく楽しいかと言われたらすぐに頷けないくらいに平凡な日々だった。

しかし、いざ卒業が近づいてくるとやっぱり寂しい。

進学先も決まってる。とても楽しみだ。
しかし、毎日制服を着て、古い校舎で眠たい目を擦りながらつまらない授業を受けて、母親が作ってくれた弁当を食べ、部活をやって帰宅する。という生活にもう戻れないことがなんだか、たまらなく寂しいのだ。

約3年前まだ入学してまもなく、部活に入りたての頃同級生が言っていた言葉がいまでも鮮明に蘇る。

「JKが終わるカウントダウン始まったね。」

え?と思った。ようやく受験が終わり、華のJKになったばかりなのに、なぜそんな事を言うんだ?と思っていた。
今になって、始まりは終わりへのカウントダウンだ、と言うことがよくわかる。
あの頃は何もかも新鮮で、輝いてて、何もかも不安だったのだ。クラスには知らない子ばかりいて、部活ではわたしより遥かに上のレベルの子がたくさんいた。
たくさんの不安を抱えて、たくさんのの希望を持ちながら毎日懸命に過ごしていた。
本当に短い高校生活だったな。時空が歪んでいるのでは、と疑ってしまうくらい速かった。ひと夏くらい速かった。

でも、今の私がいるのは確かにその平凡な日々の積み重ねがあったからで、まっさらな未来に何を描こうかと、とにかく知らないことに突っ込んでいった私があったからだ。

ある映画監督は「高校生とはスーパースペシャルな期間だ。」と言った。
またあるミュージシャンは「高校生活なんてまだ序章に過ぎない。ゲームで言ったらまだ一面だ。」と言った。

どちらの言葉にも私は納得できた。

朝、チャイムギリギリで駆け込む教室も、
お菓子や本を詰め込んだリュックも、
ウトウトして全く聞いてなかった授業も、
苦手で本当にやりたくなかった球技大会のバレーも、
どうやってサボろうかと相談しながら走った部活も、
つい話し込んで遅い時間までいた部室も、
テストの帰りに友達と観に行った映画も、
高校に上がって全く勉強しなくなり成績が下がり続けたテストも。

全部全部が特別で、そこにしかなくて、でもただの日常で。

こんなにも早く卒業したかったのに、自由になりたかったはずなのに今更寂しい。

制服という鎧を脱ぎ捨てて、学校という安全圏から飛び出して、新しいステージへ行くのだ。
みんなそうしてきたのだ。今までもこれからも。

いつか、振り返って笑えればいい。あのときと今の愚痴を言い合って懐かしめばいい。
私たちはいつでも無敵だ。

つぎの章でどんな敵と出会っても、どんな難題を突きつけられても、私なら大丈夫。

あと1ヶ月で大学生だ。そこにはどんな世界が待っているだろうか。楽しいだろうか。友達は出来るだろうか。
3年前と同じ、ワクワクと不安の混じり合った感情が渦を巻いている。

もうすぐ社会人までのカウントダウンが始まる。

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