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【中村優一インタビュー】これが裏横浜だ! ハマで生まれ育った男、中村の初企画・プロデュース作『YOKOHAMA』が港町の暗部をエクストリームにえぐり出す!

イトル写真:中村優一、取材・文:後藤健児

 昨年、『妖獣奇譚 ニンジャVSシャーク』、『ランサム』とエクストリーム配給作品への出演作が続いた中村優一による初プロデュースのオムニバス映画『YOKOHAMA』がエクストリームから放たれる。横浜を知り尽くした中村が気鋭の監督たちと作り上げた街映画は、いわゆる”ご当地映画”では見ることのない、その街が持つ裏の顔をスクリーン上で暴いてみせる。井口昇監督『異端の純愛』への出演など、俳優としての作品選びもわかってらっしゃる中村に、横浜への狂える想いを語ってもらった。

『YOKOHAMA』ポスタービジュアル

 『YOKOHAMA』は三つの話から成る。妻に出て行かれた男が、包丁を持つ謎の女と出会い、奇妙な共同生活を始めるラブサスペンス「贋作」(金子智明監督)。富豪の横濱権蔵が失った家族を求め、似た容姿の人間を拉致して”仮族”生活を送る、全編ワンカットの殺し合いファミリードラマ「横濱の仮族」(ヨリコ ジュン監督)。そして中村自身が監督を務めた「死仮面」(脚本・作道雄)は特殊造型作家の男が狂気のメイクアップで顔面に死を貼りつける暗黒造型スリラー。どれも”横浜”を独自に解釈した不条理劇が監督ごとの特色で描かれる。横浜のダークな魅力を存分に詰め込む、狂気の町おこし映画だ。横浜市の文化観光局から怒られる前に映画館へ急ごう。

狂想の街、横浜で繰り広げられる予測不能の物語

裏横浜を見せたい

――横浜市南区がご出身ということは、黄金町や伊勢佐木町あたりが映画体験の場でしたか? わたしも横浜出身ですが、かつてあのエリアはたくさん映画館がありましたよね。
中村 いまはなき伊勢佐木町東映でいつも観てました。『YOKOHAMA』はシネマ・ジャック&ベティさんとイオンシネマ港北ニュータウンさんでも上映していただけるのがうれしいです。
――横浜はこれまでも映画などの舞台になってきました。
中村 『あぶない刑事』は母親が好きで、『あぶない刑事フォーエヴァー THE MOVIE』を当時マイカル本牧で観ました。横浜はよく作品の題材になりますが、自分の育った街に還元したい思いがあったんです。最初はあたたかい話も考えたけど、ちょっと自分じゃないなと。ミステリーや後味の悪い映画が好きなので、こういう内容に。
――ご当地映画も街の魅力を伝える意義はありますが、本作では裏横浜というか、ダーク横浜が。
中村 ご出身だからわかってくださる(笑)。以前、鹿児島が舞台の『大綱引の恋』や広島を描いた『恋のしずく』などに出演したとき、近い距離で土地の方々と撮影できたりしましたし、そういったご当地映画もいいですが、今回は自分の出身ということでプライドが出てきたのかも(笑)。野毛などのローカルな場所も最近は観光地化して小ぎれいになってますから、より深い裏横浜を描きました。
――誰もが知るみなとみらいの風景が印象的な「贋作」から始まり、最後の「死仮面」では横浜の裏がふんだんに映ります。街の暗部に分け入っていくように。
中村 「贋作」の金子監督が映像を美しく撮ることにこだわる監督で、まずはスタンダードな横浜の景色を見せつつ。ベイブリッジも現在はあまり注目されてないから、いまあの橋を映す意味もあるのかなと。

「贋作」より

――「横濱の仮族」は終始、邸宅の中で話が進みます。”横濱”を苗字に持つ者が大挙登場して、そういうことかと(笑)。
中村 これは聴覚の横浜なんだと。あれだけ”横濱”という名前が連呼される作品も珍しい(笑)。いい意味で裏切られました。ヨリコさんの作品は世界観が難しいというか、台本を読んだ初見じゃわからなくて、現場でリハーサルしながら理解していく。舞台もやってらしてご自身でカメラも回すヨリコさんだからこその、本作でのあの特殊なワンカット撮影の作品になりました。

「横濱の仮族」より

叶井俊太郎の魂が込められている

――今回、オムニバスの構造にした意図は?
中村 人とのご縁ありきですね。「死仮面」の脚本を書かれた作道雄さんとは『1979 はじまりの物語』でご一緒したあと、知多半島のケーブルテレビの番組でもディレクションを担当されていて、スタッフの方々と共に絆が生まれました。「死仮面」で主演を務めた秋沢健太朗君とも以前に共演した中で、彼が新しい役に挑戦したいと話していたことがいまに至っています。「贋作」は金子監督、主演の賀集利樹さんとYoutubeをやっていた縁。ヨリコさんも、作品への出演や裏方でのお手伝いなどでつながりがある。多くの方と一緒に作品を作りたい思いが結果としてオムニバスになりました。
――先日、亡くなられた叶井俊太郎さんとのご縁もあったそうですね。
中村 お会いしたのは昨年が初めてですが、本作のことを話したときに叶井さんが、映画を観る前から配給・宣伝をしようと言ってくださった。亡くなられる直前もポスタービジュアルや予告編に目を通していただいて。初日舞台挨拶を見届けてほしかった気持ちもありますけど……叶井さんの魂が入っている作品になったので、幸せだなと思います。
――三作品それぞれテイストは異なりますが、共通テーマは”狂想”とされています。
中村 実はもう一つ裏テーマがあって、それは”フェイク”。仮面をまとうこと、自身を偽ること。隠すことで見えてくる真の姿であったり。
――なるほど。「贋作」「仮族」「死仮面」と題名にも通底していますね。ご自身が監督の「死仮面」が特にその要素を感じます。
中村 脚本の作道さんには、秋沢君が主演のミステリーで特殊メイクを題材にとお伝えしました。あと、ピエロを出したかった。
――歴代のジョーカーを混ぜ合わせたような風貌でした。『IT/イット』のペニーワイズのようにも。
中村 どちらも意識したところです(笑)。撮影の方法はジョーカーを意識して、メイクは『IT/イット』風でいこうと特殊メイクの方にお願いしました。

「死仮面」より

井口昇も興奮した『YOKOHAMA』

――エクストリーム作品や『縁の下のイミグレ』、『異端の純愛』などイイ作品へのご出演が続いています。
中村 自分のツボにハマる作品が多くて、俳優としてうれしいですね。津田寛治さんみたいな出方ができる、監督さんたちから重宝される存在になりたい。あと、井口監督が『YOKOHAMA』を観て、「熱を感じました」とご感想をくださったんです。
――おお、井口監督も熱をあてられたと。最後に、これからご覧になる方へ。
中村 観たいか観たくないかは予告編を観るのが一番わかりやすいので(笑)。予告を観て気になれば、ぜひ映画館へ来ていただきたいです! 【本文敬称略】

インタビューに答える中村優一

【PROFILE】中村優一(なかむら・ゆういち)
1987 年生まれ、神奈川県出身。俳優。 『死仮面』が初監督作品。 映画『大綱引の恋』、『八重子のハミング』、 『永遠の 1 分。』、『風が強く吹いている』、「ウルトラマントリガーエピソード Z」、 ドラマ「仮面ライダー電王」、「仮面ライダー響鬼」などに出演。

『YOKOHAMA』
2024年4月19日よりヒューマントラストシネマ渋谷、池袋シネマ・ロサ、シネマート新宿、UPLINK吉祥寺他、全国公開

企画・プロデューサー:中村優一/監督: 中村優一、ヨリコ ジュン、金子智明/出:秋沢健太朗、渋江譲二、西尾聖玄、高山孟久、Raychell、末野卓磨、水原ゆき、波多野比奈、新田ミオ、白又敦、西洋亮、賀集利樹、鶴嶋乃愛、小野まりえ、飛葉大樹、中村優一/©2024 TerraceSIDE
2024年/日本/110分/G/配給:エクストリーム



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