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「枯れ木に血肉の華を咲かせましょう」学生残酷映画祭グランプリ受賞の浦崎恭平がスプラッター版日本昔話『恐解釈 花咲か爺さん』で劇場長編監督デビュー。浦崎とキャストの森みはる、西川風花が血肉と汗にまみれた撮影現場の思い出を語り合う!

 浦崎恭平監督のスプラッター映画『恐解釈 花咲か爺さん』が11月3日より全国で公開中だ。東京・シネマート新宿での初日上映後、主演の森みはる、共演の西川風花、そして浦崎監督が登壇。血肉たっぷりの映画について熱く語った。
『真・事故物件/本当に怖い住民たち』や『オカムロさん』、『先生!口裂け女です!』などの攻めた血みどろジャンル映画を放ち続けるエクストリームが、ホラー専門サイトのオソレゾーンと共闘するプロジェクトが始動した。誰もが知る日本名作昔話をおびただしい血でたっぷりと味つけした”恐解釈”シリーズ。第一弾のえじきとなったのは「花咲か爺さん」だ。心温まる恩返しストーリーとして国民的に愛される昔話が、狂気と暴力に彩られた残酷スプラッターとして生まれ変わった(ちなみに第二弾として「桃太郎」が控えている)。

『恐解釈 花咲か爺さん』ポスタービジュアル

 ”恐解釈”シリーズのトップバッターを務めたのは浦崎恭平。残酷映画に正当な評価を与えるべく、自主制作スプラッター専門映画祭として2009年から続く、学生残酷映画祭(今年の12月30日に、6年ぶりの開催が決定)において、2013年の第5回開催時に『温かい食卓』でグランプリを受賞。それから10年を経て、劇場長編監督デビューを果たした。彼がずっとあたためてきたという大残酷が日本中のスクリーンに鮮血をほとばしらせる。

10年くすぶり続けた浦崎の思いを体現する、悪魔のいじわる爺さん(演:森羅万象)

 主演は「26時のマスカレイド」の元メンバー、森みはる。アンモラルな狂気の物語で映画初主演を飾った。主人公の姉を演じるのは西川風花。劇中、最も悲惨な目に遭う役どころを、スクリーンが張り裂けんばかりの絶叫で熱演。すべての元凶たる、いじわる爺さん役にベテラン俳優の森羅万象。ひたすら悪態をつき、躊躇なく人間も動物も殺害する最凶の悪党として大暴れ。そんな悪魔のような男にいじわるを受け続けた挙句、愛犬を殺されてしまう正直爺さんを海老原正美が演じた。”許し”など存在しない恐解釈世界の正直爺さんは、怒りの炎で復讐鬼と化す。ダークヒーローな正直爺さんによる戦慄の逆襲は、観るものすべてを恐怖させる。

フォトセッションにて。(左から)浦崎恭平監督、森みはる、西川風花

 300席を超える広々とした劇場に集まった観客を前に浦崎は、やや緊張した面持ちながら、長年の望みが叶った劇場長編作品をスクリーンにかけられた喜びで満足した様子。この日の司会進行も務める浦崎から映画出演の感想を尋ねられた森は「ホラーとしてちゃんと、皆さんに怖い気持ちになっていただけたかなと不安なんですけど」と不安な様子を見せつつも、「本当に楽しかったし、いい経験になりました」と充実した撮影現場だったと語った。
 ホラー映画好きという西川は「タイトルを聞いたときからワクワクがすごくて。過去に血が飛ぶような映画に出たことはあるんですけど、わたしは血まみれになれたことがなかったので、念願の血まみれになる映画に出られました」と笑顔でコメント。西川だけではなく、出演者のほとんどが大量の血をかぶる本作。浦崎は「血肉と汗にまみれながら撮影しました」と過酷な夏の撮影を振り返る。撮影中は空調音が入ってしまうため、エアコンをつけられない。現場はさながら『悪魔のいけにえ』撮影時のような酷暑の状況だったという。「真夏日なのに外のほうが涼しいくらい(笑)」と苦笑まじりに言う浦崎に同調した西川は「死体の解体でレインコートを着るシーンがあり、完全にサウナスーツでした(笑)」と苦労を語る。

誰よりも暑く、血にまみれた西川風花

 本作はタイトルこそ「花咲か爺さん」ではあるが、主役はいじわる爺さんの娘だ。森は当初、自分が主演だったことを知らなかったのだとか。本読みのときに浦崎から主演であることを告げられたというが、「『花咲か爺さん』だったら、主演は爺さんだよな……」と疑問を持っていたそうだ。いじわる爺さん一家は皆が狂気にとりつかれている猟奇的な変態ぞろいだが、末の娘だけは善の心を忘れないでいる。それは演じる森自身の明るさとも呼応していた。西川は「(現場の)皆さんが汗ダラダラでテンションが下がっているときに、森さんが”お願いします!”とウキウキした感じで入ってきて、現場が明るくなる瞬間を何度も見ました」と森への感謝の言葉を述べた。血のりにまみれることも楽しかったようで、浦崎から「血まみれになって踊ってましたよね?」と問われた森は「血を浴びて楽しくなっちゃって」とはにかみ、ホラークイーンの片鱗を覗かせた。

グランギニョール・ホラーで映画初主演を飾った森みはる

 物語のクライマックスには、原典の”ここ掘れ、ワンワン”を最恐に拡大解釈した残酷シーンが登場する。倫理的にも際どいこの場面は浦崎がずっとやりたかったことだった。それを撮影時に聞かされた西川は浦崎に対して「おかしい……」と引いた気持ちになりながらも、「真面目に夢を語ってくださって。わたしはそれに応えなきゃ」と全力で役にぶつかり、現場で絶叫し続けたという。「次の日、のどが死にました。でも、それだけのものが映画に込められたかな」と観客の反応に手応えも感じたようで、誇らしげな表情を見せていた。
 クライマックスとラストに訪れる血まみれシーンについて、浦崎は「世界でもまだ誰もやってないと思うんです。このために30年間、生きてきました」と冗談抜きの真剣な顔つきで熱く語り、「普通のホラー映画だとまず許してくれない。エクストリームさんならでは。ネタをぶち込みました」とフルスロットルで演出したことを明かしたものの、「自分で編集していて気持ち悪かった……」と自身すら平常心では受け止められないほどのえげつない出来栄えになってしまった。
 最後には、それぞれの登壇者から観客へメッセージが伝えられる。西川は「わたし自身、大好きなホラーでこんな強烈な役を演じることができて楽しかったです。最高な作品になっています。いろんな方に是非、見ていただきたいなと思っている、自信のある映画になりました」と役者としての信念を感じさせる強いまなざしで作品をアピール。
 浦崎は陰惨な内容の本作をポップコーンムービーとして楽しんでほしいと言い、「『花咲か爺さん』といえば、”血肉の華を咲かせましょう”というくらい、こっちのほうを国民に浸透させたい(笑)。勧善懲悪にしたつもりなので、学校とかの教育に役立つ日が来るのを楽しみにしております」と笑わせた。

『恐解釈 花咲か爺さん』は、11月3日よりヒューマントラストシネマ渋谷、池袋シネマ・ロサ、シネマート新宿、アップリンク吉祥寺他、全国公開中。
【本文敬称略】©恐解釈製作委員会
(取材・文:後藤健児)

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