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家族遺棄社会

菅野久美子氏による日本社会を「孤独死」から見つめた驚愕のルポルタージュ。

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第1章 親を捨てたい人々: 子供の方から親を棄てる「家族遺棄」の実態。事情を読んでみるとその理由は理解できます。遺棄を手伝うビジネスがあるのは全く知りませんでした。この章は驚きはあるもののそういう価値観も今ならあり得ると冷静に思える内容です。

第2章 捨てられた家族の行方: ゴミ屋敷の中で餓死寸前の42歳女性の生活の様子には戦慄しました。P 77にその部屋の白黒写真があるのですが、6畳一間によくもこれだけのゴミが。セルフネグレクトに陥るとあっという間にこうなることに恐怖を覚えます。

第3章 孤独死の現場から: 凄まじいの一言。現役世代の孤独死が急増している社会背景分析に説得力があります。つまりジュンク堂でこの新書を買い求めているような普通のサラリーマン達にもこのような状況に陥る可能性が大いにあるという社会恐怖を突きつけられました。

第4章 家族遺棄社会はどこから来たのか:この章の最後で触れてはいますが、コロナ禍の今、状況はさらに深刻になっていることは想像に難くないです。

第5章 家族遺棄社会と戦う人々:本書で唯一希望の持てる章。ここで取り上げられている人々を主役にした映画が出来るくらいの並々ならぬ覚悟を持った人々がいるのだなと感心しました。孤独死の耐えがたい強烈な死臭のする部屋でお祓いをする神主の志には頭が下がります。

総じて、日本社会の歪みがここへきて一気に吹き出してきた感じがします。恐ろしい時代になりました。

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