映画評|郊遊〈ピクニック〉

郊遊〈Jiao You〉
2014/06/11 シネマート六本木(スクリーン3)

これがツァイ・ミンリャン監督の引退作品

 父親と小さな子供ふたりの家族。父親は街道沿いに不動産の看板を持って立つ仕事で少しの金を稼ぎ、夜は子供たちと一緒に電気も水道も通っていない空き家で寝る。野宿をしているわけではないが、ホームレス一歩手前か事実上のホームレス生活だ。この一家がなぜこんな暮らしをしているのか、その理由はわからない。この先どうするという展望もない。今日を生きるために、男は雨の日も風の日も看板を持って立ち続ける。子供たちがよく出かけるスーパーに、売り場責任者の女がいる。彼女は廃棄する食品を持ち帰っては、家の近くの廃墟にたむろする野良犬たちに与えている。廃墟の壁には大きな絵が描いてある。誰が描いたのかは知らない。女はその絵に見入られたようにそれをじっと見つめ、またもとの日常に戻って行く。女はしばしばスーパーにやって来る少女が、ひどい悪習を放っていることに気づく。このことから、女は少女たちの一家と関わりを持つことになる。

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