#78【アベンジャーズ / エンドゲーム】ep.2「メインテーマに隠された真意とは」
※この記事はPodcast番組「映画にみみったけ」内のエピソード#78にあたる内容を再編集したものです。
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【アベンジャーズ / エンドゲームについて】
作曲家紹介
2019年公開
監督:アンソニー・ルッソ、ジョー・ルッソ
音楽:アラン・シルヴェストリ
登場人物
スティーブ・ロジャース / キャプテン・アメリカ:
アベンジャーズのビッグ3の一人で、リーダー的存在。
ヴィヴラニウム製のシールドを扱う。
トニー・スターク / アイアンマン:
ビッグ3の一人。大企業の社長で、発明家。
自身の開発したパワードスーツを着用して戦う。
ソー:
ビッグ3の一人で、北欧神話の雷神。
魔法の槌「ムジョルニア」を持つ。
ブルース・バナー / ハルク:
アベンジャーズのメンバーの科学者。
感情が昂ぶると緑の大男に変身する。
ナターシャ・ロマノフ / ブラック・ウィドウ:
アベンジャーズのメンバーで、元S.H.I.E.L.D.エージェント。
ハルクをなだめることができる数少ない存在。
クリント・バートン / ホークアイ / ローニン:
家族全員を失った悲しみから、ローニンとして悪人を殺して回る。
ジェームズ・“ローディ”・ローズ / ウォーマシン / アイアン・パトリオット:
トニーの親友兼相棒。
新型スーツ「アイアン・パトリオット」を装着して戦う。
スコット・ラング / アントマン:
体を縮小・巨大化させることができる。
キャロル・ダンヴァース / キャプテン・マーベル:
スーパーパワーを持つ元アメリカ空軍パイロット。
ロケット:
ガーディアンズ・オブ・ギャラクシーの生き残りのアライグマ。
ネビュラ:
サノスに育てられた、ガモーラの義理の妹。
サノス:
本作のメインヴィラン。
宇宙の均衡を保つため、全生命体の半分を消し去った。
【前回の振り返り】
前回はバラードの割合についてみていきました。
アクションヒーローとしての作品性を1段階上の階層に持ち上げた作品として、バラードが多い意味について話しました。
ヒューマンドラマを観ているかのようで、アクションヒーロー映画を観ているという今までにない新しい映画だったという話をしてきました。
アメコミヒーロー映画では今までにない回数のバラードが演奏されていて、全体の割合としては5割ほど演奏されていました。
【メインテーマの演奏について】
というわけで今回はメインテーマの演奏についてみていこうと思います。
前回のインフィニティーウォーとエンドゲームのメインテーマでは、かなり違う作りになっています。
インフィニティーウォーはまさに王道なアクションヒーローの使われ方がされていましたね。
キャラクターの登場時に多く演奏されていました。
これはアクションヒーロー映画では一般的な使われ方で、他にもバトルやチェイスにおける優位な立場で演奏されることがあります。
#75で詳しくやっていますので、ご興味のある方はぜひ聞いてみてください。
そんなインフィニティーウォーでの演奏とエンドゲームでの演奏では、どのような違いがあるかみていきたいと思います。
メインテーマ シーン1
まずエンドゲームで初めて演奏されるのは
14:52
メインタイトルの登場時です。
これはインフィニティーウォーでも一緒ですし、アベンジャーズシリーズはメインタイトルが登場した時にいつも演奏されていますね。
メインタイトルの登場時に演奏されるメインテーマはいつも少し違うアレンジがされていていいですね。
今回はいつもとは違うタイミングにアクセントが入っていて、緊張感があってかっこいいです。
メインテーマ シーン2
そこからメインタイトルがだいぶ演奏されません。
いつもは展開的にもよりますが、20分に1回くらいのペースで演奏されていましたが、今回は飛んで
1:01:41
に演奏されます。
ここからが怒涛ですね。
ホークアイがタイムトラベルに成功したことが確認できたシーンです。
ここでの演奏はメインテーマのイントロのような部分、ここですね。
(演奏)
この部分が推理パートのような音楽、スロードラマという呼び方で昔習いましたが、そのようなアレンジがされています。
ここは非常に趣深いですね。
タイムトラベルが成功したことで、一抹の光が差したようなタイミングです。
指パッチンで消えてしまった人たちを取り戻せる唯一の可能性が見えた時に、メインテーマが演奏されているということになりますね。
さらに、ここから作戦をブラッシュアップする会議が行われます。
その会議のシーンで演奏されているので、スロードラマのようなアレンジがされてたということですね。
メインテーマ シーン3
次に演奏されるのが
1:02:40
ここではソーからリアリティストーンの説明を受けるシーンです。
酔っ払い気味で、感情的な説明のためあまり要領を得ません。
ここでの演奏はJAZZを基調にした楽曲ですが「唯一変わらないのは永遠などないという真理だ」というセリフのあたりで、メインテーマの一部が演奏されていますね。
少し脱線しますが、このようにこの場面ではストーンがどこにあるか、どのようなものかを皆で会議するシーンが始まります。
そして議題に上がっているストーン一つ一つに違う楽曲が当てられているんですね。
1つめがリアリティストーンで、2つめがパワーストーンです。
ここでは食事中のみんなとロケットが中心に話を進めます。
このシーンの冒頭の演奏にもメインテーマが演奏されていますね。
次はソウルストーンです。
ここではサノスがソウルストーンをどのようにして手に入れたかの話をします。
そのため低音が演奏されています。
これは#76でやったヴィラン音楽の話です。
インフィニティーウォーではヴィラン音楽には決まって低音が演奏されているという話をしたのですが、まさにその作りが使われています。
サノスがどのようにソウルストーンを手に入れたかの話をする際、低音が非常に目立つように演奏されています。
手に入れた方法もガモーラさんを生贄とすることで、ソウルストーンを手にしたので、ヴィランらしい内容に低音が入る、そんな演出として使われています。
ここでは最後にメインテーマのフレーズが入っています。
次にタイムストーンです。
ここではスペースストーンとマインドストーンそしてタイムストーンが同時期にニューヨークに存在していたことに気づきます。
この結論に至るにはあっという間で、このシーンはすぐに次のシーンに切り替わってしまいます。
しかしちゃんとメインテーマが演奏されています。
メインテーマ シーン4
これでそれぞれのストーンの時間と場所を把握する会議が終わって、作戦を開始します。
みんなでタイムトラベルの装置に向かいキャプテンアメリカのスピーチではメインテーマのまさにメロディが演奏されます。
ここですね。
(演奏)
このようにタイムトラベルの成功からストーン会議、いざタイムトラベルへの連続したシーンでアベンジャーズのテーマが演奏されていました。
ここだけみたらSF映画さながらですが、やはりこの唯一の希望である作戦でメインテーマが演奏されるのはかっこいいですね。
ということで、タイムトラベルから作戦開始までアベンジャーズのテーマが演奏されていました。
今までとは違いキャラクターに向けられた演奏ではなく、作戦や思惑に向けられた演奏ですので、インフィニティーウォーとは大きく違いますね。
こういったところが以前までの作品と違っていて、エンドゲームの痺れる演出ですよね。
メインテーマ シーン5
そして次に演奏されるのは意外にもすぐで
1:16:00
アイアンマンがスペースストーンを取るため忍び込むシーンです。
ちなみにこのシーンは映画アベンジャーズのラストシーンですね。
ロキを追い詰めたシーンです。
この時に演奏されています。
しかし忍び込んでいるため、スニーク音楽ですね。
メインテーマのイントロっぽいフレーズがスニーク音楽にアレンジされています。
この一連の作戦では多くの演奏がされます。
メインテーマ シーン6
次に
1:17:35
アントマンが小さくなって過去のアイアンマンに忍び込むシーンです。
この時もアイアンマンに忍び込んだ時に演奏されていますね。
やはりスニーク音楽の雰囲気がアレンジに追加されています。
そのすぐ後にハルクがエレベーターに乗りそびれた時も演奏されています。
ここは一貫してスニーク音楽と軽いアクション音楽の間くらいの楽曲が演奏されています。
その際重要なシーンや目立つ行動をとるシーンではメインテーマが演奏されています。
なので
1:19:15
ハルクが一人で階段を降りている時にもフレーズが演奏されていますが、これも楽曲の流れの一環での演奏になりますね。
ここまでが一旦スペースストーン奪還作戦で演奏されていたパートです。
メインテーマ シーン7
ここで少し脱線しますが、過去に戻った際に懐かしい音がします。
それは
1:16:15
と
1:19:35
です。
このシーンは過去の中に現代のトニースタークさんが隠れ忍んでいるシーンです。
この時にグロッケンシュピールやハープ、ビブラフォンのような楽器が演奏されます。
これは#5でやったバック・トゥ・ザ・フューチャーでミステリー・サスペンスの話をしたのですが、その時と近い使われ方がされています。
まだ聞いていない方のために少し#5の説明すると、バック・トゥ・ザ・フューチャーではタイムトラベルした主人公であるマーティさんが、過去に行くという不思議な現象を体験した時に、グロッケンシュピールやハープ、ビブラフォンのような楽器が演奏されていました。
これは不思議な現象を表現するために使われています。
エンドゲームでもその表現が使われているんですね。
しかもタイムトラベルで使われているのがアツいです。
タイムトラベルを観客が感じた時にこれらの楽器、今回はグロッケンシュピールが演奏に使われ、不思議なフレーズを奏でています。
この両作品の音楽を手掛けているのがアラン・シルベストリさんというのは特別アツい気持ちになりますよね。
そんなアラン・シルベストリさんの作家性を垣間見ましたが、次です。
メインテーマ シーン8
1:42:51
なんやかんやあってアイアンマンとキャプテンアメリカが過去の軍事施設に行き、キャプテンアメリカがタイムトラベルに使える粒子を手にいれるシーンです。
このシーンは忍び込んでいるので、スニーク音楽が主体です。
タイムトラベルに使う粒子を手にいれることが演奏の動機になっていますね。
タイムトラベル先での演奏は以上です。
ここまでの演奏では、絶望的状況の打破が演奏の動機になっていることがわかります。
そのため、今までのようなキャラクターの登場や戦況の変化による演奏がされていません。
ということは、観ている人がキャラクターを理解している前提で話が進みます。
少なくともヒーローかヴィランかはわかってもらっている前提で作られているんですね。
まあ連作なので、当たり前と言えば当たり前なのですが、通常アクションヒーロー映画は誰がヒーローで誰がヴィランかの判断が付きやすいように、音楽でもその渡りを付けることが多いのですが、この作品は違うんですね。
それがこの映画の良さというか、今までの作品とは一味違う味付けになっているということですね。
しかしこの映画がアクションヒーロー映画としての落とし所がちゃんと付けられているのが、最後の演奏ですね。
メインテーマ シーン9
2:18:28
指パッチンで消えたみんなが帰ってきて、ヒーロー対ヴィランの全面対戦になるシーンです。
これはキャプテン・アメリカのアッセンブルというセリフが聴ける名シーンですね。
ここはまさにメインテーマが一番演奏されて欲しいシーンです。
使われ方も戦況の変化、押され気味の展開から対等に、なんなら少し優勢にことが進んだことが演奏の動機となっていますね。
この今までの作品でも演奏されていた動機で演奏されることで、一気にアクションヒーロー映画をみているという実感が湧くそんなシーンですね。
今までは王道のアクションヒーロー映画らしい演奏ではなかったので、このシーンでの演奏がより際立ちますし、ちゃんとアクションヒーロー映画としての王道も通ることで、この映画に充足感を得ることができたんだと思います。
そしてこれがこの劇中で演奏される最後の演奏なのも、少し物悲しくていいですね。
本来はラストシーンなどで演奏することで、次に繋がるような演出として、これからもアベンジャーズの活躍に期待、みたいな演奏がされそうですが、今回はそれがありません。
アベンジャーズの物語はここで幕を閉じて、また新たなヒーローたちの活躍を楽しみにまつという仕掛けになっています。
1作目の映画アベンジャーズや映画アベンジャーズ/エイジオブウルトロンではラストにもちろん演奏されています。
しかし今回のラストシーンでは使われず、次の演奏はエンドクレジットまでありません。
ここまでして演奏を絞るのもまたこの作品が名作と言われる理由のひとつですよね。
そしてこれは脱線なのですが、エンドクレジットではハリー・ジェイムス&ヒズ・オーケストラの「イッツ ビーン ア ロング タイム」という楽曲が演奏されています。
この時にキャプテン・アメリカことスティーブ・ロジャースさんが大戦中の恋人であるペギーカーターさんとダンスをするシーンで演奏されているソースミュージックです。
この楽曲は1945年にリリースされ、第2次世界大戦の終結を受けて大ヒットした楽曲です。
キャプテンアメリカはもともと第2次世界大戦で活躍したとされるキャラクターなので、ヒーローとしての仕事を終え、恋人と居るあのシーンで「イッツ ビーン ア ロング タイム」が演奏されているのはピッタシですね。
さらに、タイトルのイッツ ビーン ア ロング タイムは訳すと、お久しぶりという意味になるので、それもピッタシです。
この楽曲はエンドクレジットまで続き、その後に演奏される楽曲がまた非常にいいです。
ヒーロー音楽のテンプレートのような楽曲なのですが、ゆったりしていてアクションヒーローのメインテーマと大きく違う趣の楽曲です。
ここもヒーローたちを労うかのようなそんな印象を受けます。
とても感動的な楽曲から、メインテーマが演奏されて映画は幕を閉じます。
ここはとても好きですね。
なんか物思いにふけってしまうような楽曲の演奏順です。
ここまでがメインテーマの演奏されていたシーンです。
とてもよかったですね。
今までのような演奏のされ方とは違い、ヒューマンドラマを見ているかのような移入感から一変、まさにアクションヒーローといった使われ方がされていて、この両極をうまく一つの作品に落とし込んでいるからこそ、全く新しいアクションヒーロー作品へと昇華させられたのかもしれませんね。
【エンディング】
今回はメインテーマの演奏をみてきました。
中盤から後半にかけては、現状を打開するために動き出した時に演奏されていて、クライマックスでは王道な演奏がされていました。
ですので、今までのアクションヒーローとは少し違う使われ方と王道の使われ方の2通りの方法が入り混じることが、この映画が名作へと昇華している理由でしたね。
サブスクリプションでは「アベンジャーズ」をやろうと思います。
アベンジャーズ1作目ですね。
そして次回は「トップガンマーベリック」をやろうと思います。
年明けですね。
最後までお読みいただきありがとうございました。
映画にみみったけ、放送時のパーソナリティはヨシダがお送りいたしました。
podcastのエピソードは毎週日曜日に配信中ですので、そちらでもまたお会いいたしましょう。
ではまた!
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