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滑走路を読み終えて


歌集『滑走路』萩原慎一郎(著)を読み終えました。
僕自身歌集の本を手に取って読んだのは初めてでした。今までは小説、自己啓発、映画に関する本、そして詩集などは読んだことはあったが、今回歌集を読んでみて、また詩とはちがった味わい、感じ方ができた。

内容が、日常により近く、僕自身の生活と重ねて読むことができたからなのかもしれない。

この歌集『滑走路』を読むまで、歌がどういうものかというのをちゃんと今まで知らなかった。

短歌とは
短歌は、五七五七七の五句三十一音の形式で表現される文芸です。
歌人・文芸評論家の三枝昂之さんは短歌について、「短歌は人の体温に一番近い表現形式」と表現しています。
日々の暮らしの中で感じた事などを表現出来るのが短歌の魅力です。

著者の萩原さんは32歳の若さで亡くなりました。32年間の人生。萩原さんの壮絶な過去を知った上で読むと、より心にくるものがある。
共感できる箇所や、萩原さんの視点で見つめる社会。その萩原さんの人柄が表れた歌集を通して、僕も自分と重ねて読むことができた。

破滅するその前にさえ美はあるぞ 例えば太陽が沈むその前
青春のいのちが果てる切なさよ 特攻隊の映像を見た
作業室にてふたりなり 仕事とは関係ない話がしたい
きみのために用意されたる滑走路きみは翼を手にすればいい

目の前に続く人生。どうやって飛んだらいいんだろうか。翼を広げればいいだけのこと。あとは前に進むだけ。なかなか飛び立てないでただただ走っているな〜と最近思うこの頃。うまく翼を広げて、大空高く飛び立てればどんなにいいか。

占いの結果以上にぼくたちが信じるべきは自分自身だ

人間は弱い。だから何かにすがるし、信じたりする。でも自分で自分を信じてあげなきゃ誰が1番最初に自分を信じてあげられる。まずは疑うことじゃなくて信じてあげること。

家にいるだけではだめだ ぼくたちは芭蕉のように旅人になれ

込もった生活をずっと送っていると、より一層この歌に共感する。もっと自分の目で見て、触れてたくさんのことを経験したい。僕の世界は今はPCの中にある。こんな四角いモニターの先に何があるのか。流れてくる情報に戸惑い、疑うことばかり。環境を変えたい。もっと自分を変えていきたい。

手を伸ばし足を伸ばして転がれる真夜の孤独を何と呼ぼうか

何て呼べがいいのかな。実際手足を伸ばせるくらいの余裕がって快適なのに、でもちゃんと孤独を感じる。まぎれもない孤独を。

もう少し待ってみようか曇天が過ぎ去ってゆく時を信じて

空を見上げて過ぎ去っていくのを待ってみる。その情景が鮮明に浮かんでくる。悪いこと持っていれば晴れて良いことはきっとくるはず。そのときまで根気よく待ってみる。信じたい自分のやってきたことの全てを。

君からのエールはつまり人生を走り続けるためのガソリン
あのときのベストソングがベストスリーくらいになって二十四歳
脳裏には恋の記憶の部屋がありそこにあなたが暮らし始めた
ソプラノでありし少年の日の声はもう戻らないもののひとつだ

大人にること。大きな明るい未来に、そして希望に満ち溢れていることを想像する。色んな経験が自分という人間を作っていく。一方で多くのことも同時に失っていく。純粋さが失われていく。あの日の声が、高かれし頃のソプラノの声を出す少年はどこに行ったのだろう。あの時、僕は何を見つめていたのだろう。
そして僕は今どこにいるのだろうか。自分のあの時の声をもう思い出せない。

遠くからみてもあなたとわかるのはあなたがあなたしかいないから

大学の時に付き合った彼女を思い出した。

遠くにいるきみと握手をするように言葉と言葉交換したり
天丼を食べているのだ 愛しても愛しても愛届くことなく
疲れていると手紙に書いてみたけれどぼくは死なずに生きる予定だ
この火とは誰のための火か?さつまいも一緒に焼こうよ。この恋の火で
達成はまだまだ先だ、これからだ おれは口語のうまとなるのだ


他にも書ききれないほどたくさん共感した歌がある。今日はこのぐらいにして、また次の投稿でいくつか載せていこうかなと思う。たぶん時代時代で共感する歌もちがうし、その時の自分と今の自分も当然ちがってくるんだろうな。ソプラノの声を持った少年の頃のように、未来の僕も純粋な少年の心を忘れないでいたい。

萩原さんに、萩原さんの遺してくれた歌に出会えてよかった。

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