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(サッカー)2023.11.24_地域CL_ジョイフル本田つくばFC×福山シティFC@栃木グ


introduction

今日は栃木県グリーンスタジアムで行われている、全国地域サッカーチャンピオンズリーグの決勝ラウンドを観に来ている。1次ラウンドから生き残った4チームがJFL昇格枠「1.5」を賭けて争う総当たり戦は、今日が2日目。10:45から行われた第1試合は、一昨日の初戦で敗れていた地元の栃木シティFCがVONDS市原FCに1-0で勝利。初戦で勝利している市原が敗れたことで、栃木と市原が共に勝点「3」で並んだ。13:30から行われる第2試合は、初戦で市原に0-1で敗れた関東1部リーグのジョイフル本田つくばFCと、同じく初戦で栃木に2-1で勝利した福山シティFCの対戦である。

第1試合の「市原×栃木」が終わると、第2試合に向けてゴール裏の横断幕の入れ替えや各チームのサポーターの移動があり、少しの間スタンドが賑わいを見せる。第1試合は観客数が691人だったが、栃木サポーターが一部帰路についたこともあり、第2試合の観客数は416人となった。自分としては2試合セットで観るのが当然というくらいのスタンスでいるが、11月下旬ともなれば第2試合が始まるまでの1時間近くを寒い中待つのも面倒だ、という人も多いのかもしれない。第2試合に向けた選手たちのアップが始まると、つくばと福山の両チームのサポーターも声出しの応援が始まった。

ジョイフル本田つくばFCは、今季の関東1部リーグで5位。どちらかといえば平凡な戦績に終わったが、10月に行われた全国社会人サッカー選手権大会で2位に入り、全社枠を獲得しての地域CL出場を決めた。1次ラウンドではグループCに入り、BTOP北海道(北海道)、福井ユナイテッドFC(北信越1部)、アルテリーヴォ和歌山(関西1部)の各地域リーグ王者と同組だったが、1勝2分の勝点「5」を獲得。勝点と得失点差が共に並んだ福井を総得点数で上回り、僅差で決勝ラウンド進出を決めている。一昨日に行われた第1戦は、同じ関東リーグの王者でもある市原を相手に0-1で惜しくも敗戦。この試合で敗れるとJFL昇格は極めて難しくなる状況だ。

一方、中国リーグ王者の福山シティFCは、ブランデュー弘前FC(東北1部)、wyvern、FC刈谷(共に東海1部)と同居した1次ラウンド・グループBを2勝1分の勝点「7」で乗り切り、堂々の首位通過。福山に関しては、1次ラウンドの第1日・wyvern戦(5-2で勝利)を現地で既にチェック済だ。その試合に関しては攻撃の引き出しの多さにとにかく驚かされたのを今でも覚えている。この決勝ラウンドにおける各チームの力量を観るうえでも個人的に「ものさし」として観てみたいチームだ。一昨日の第1戦では、地元開催の栃木を相手に2点を先行し、終盤に1点差に詰め寄られながらも逃げ切りに成功、大きな勝点3を獲得している。この試合で勝利すれば勝点は「6」となり、勝点順に「6-6-6-0」の得失点差勝負となるケースを除いて2位以上を確保できるだけに、福山としては一気に決めてしまいたいところだろう。

1st half

前半両チーム共にリスクを冒さず静かな立ち上がり。つくばのシステムは3-3-2-2だが、守備時には山崎と青木の両WBが最終ラインに吸収され、2トップの一角に入る恩塚も1列下りて5-4-1の並びになる手堅い戦い方だ。シンプルに後ろが重心となるため、サイドにスペースが生まれにくくなる。福山は1次ラウンドで観た際と同じ4-4-2で、高橋(大)と濱口の両サイドハーフが縦に崩すところからチャンスを窺いたい様子に見えるが、その攻撃の取っ掛かりをなかなか掴めない時間が続く。

しかし、それでも福山が徐々にチャンスの場面を増やしていく。19分、福山は右サイドのスローインをボックス内に走り込みながら受けた濱口が浮き球で折り返し、中央で待ち受ける高橋(佳)がヘディングで合わせるが、僅かにゴールの左へ。フリーで撃てた場面だけにこれは決めたかった。22分には福山のフリーキックの競り合いでGK・阿久津がボールをキャッチできずにこぼれたボールを高橋(佳)が回収。反転してシュートへ持ち込むが、これはつくばの守備がブロックしてゴールを許さない。

すると33分、中盤左サイドで福山が組み立てるところをつくばの山崎が素早いアプローチでインターセプト。そのままカウンターで攻め込み、シュートまではいけないがゴール正面でファウルをもらう。時間を掛けながらボールをセットして蹴るのは鈴木。右足を振り抜いてゴール右隅を狙ったキックはクロスバーを叩きながらもゴールネットを揺らして1-0。ここまで押され気味だったつくばがセットプレイで先制点を奪う。福山がこの大会でリードを許すのは、1次ラウンド初戦のwyvern戦以来だ。

リードを許した福山はすぐさま反撃開始。再開直後のプレーで高橋(大)の折り返しに中央の高橋(佳)が合わせるチャンスを作ると、37分には角田の折り返しのこぼれ球を有田がダイレクトで押し込もうとするがキックミス。フィニッシュの部分の精度が上がらない。その後はややゲームスピードが上がったものの、両者ゴールには至らず1-0で前半終了。つくばにとって、まずはひと息のハーフタイムだ。福山は攻めながらも一発を決められてリードを許す展開。ストレスを抱えずに戦えるかが後半のポイントだ。

2nd half

福山は後半の頭からボランチの角田を下げて田口を投入。選手交代で流れを変えようとする。後半序盤はやはり福山がボール保持で上回るが、人数をかけて守るつくばを前に、これといった決定機が来ない。60分には高橋(佳)のポストプレーからボールを受けた有田が激しいマークを受けながらもキープして残したボールを右SBの澤田が攻撃参加して引き取り、DFラインの間隙を抜けてシュートまで持ち込むチャンスを迎えるが、これは僅かにゴールの右に外れてしまう。64分にはつくばも2トップの熊谷と恩塚を同時に下げる采配で、前からプレッシャーをかけるユニットを取り換える。

すると72分、つくばは菅谷が中央でパスを受けて持ち運んだところを福山の選手2人に潰される形でファウルを受け、正面で直接FKを獲得。やや距離は遠いが、蹴るのは先制点のFKを決めた鈴木だ。もしかして・・・という空気が漂う中、鈴木が右足を振り抜くと、壁を越したシュートがゴール左上隅のクロスバーを叩きながらまたしてもゴールイン。鈴木のこの日2度目となる直接FKの得点により、つくばが2-0とリードを広げる。

2点のビハインドを背負った福山は、失点直後に2枚替え。濱口と高橋(大)の両サイドハーフがここでベンチに退く。ここまで何度と無くサイド攻略にトライしていた2人だが、つくばの築く守備を攻略できないまま上野監督が遂に諦めた瞬間だった。ここから福山はシンプルにゴール前へボールを集める形が増えてくる。76分には左からのクロスに高橋(佳)がトラップから反転して入れ替わり、チャンスを迎えそうになるが、阿久津がカバーを見せてシュートを撃たせず。80分には再び左のクロスからの折り返しを途中出場の若宮が拾って押し込もうとするが、ボールタッチが伸びて阿久津に押さえられてしまう。せめて1点返したい福山だが、その1点が果てしなく遠い。

87分、福山は高橋(佳)を下げて本石を投入。本石を前線に据えてパワープレイを増やしていく。しかし、つくばも中盤からしつこくボールを追い回して簡単には放り込みをやらせない。追加タイムにはつくばもカウンターでチャンス。須田のスルーパスに郡司が抜けだして3点目かと思われたが、これはGK・宮﨑がストップ。とどめを刺しそこねたつくばだが、しかし勝敗は揺るがなかった。タイムアップのホイッスルの瞬間、福山の選手ではなく、つくばの選手が何人かピッチに倒れ込む光景が印象的だった。直接FKによる2得点を全員で守り抜いたつくばが2-0のクリーンシートで逃げ切りに成功。大きな勝点3を獲得し、4チームが勝点3で並んだ中、唯一の得失点差「+1」で一気に首位へ浮上。一方の福山は逆に得失点差が「-1」となり、第1戦から一転して難しい状況に追い込まれた。

impressions

率直な驚きと、ちょっとした戸惑いを隠せない結末となった。つくばの完勝だった。1次ラウンドの現地観戦や、一昨日の第1日のYouTube配信を観た限りでは、福山の優位は揺るがないと思っていたが、まさかその福山がここまで完璧に抑えられる試合を観ることになるとは全く予想していなかった。ただ、試合がどう転ぶかは試合をしてみるまで分からない。特に短期間で一気に日程を消化するこの大会のような特殊な状況下での試合においては尚更だろう。オンザピッチにおけるつくばの健闘を称えるのは大前提として、改めて地域CLという舞台の恐ろしさを垣間見たような気がした90分間だった。

つくばは守備が完璧に機能した。両WBが最終ラインに降りてきて5バックを形成してサイドを埋め、なおかつ裏のスペースも使わせなかった。「3バック+WBでサイドを埋める」対応は、幅を広く使うチームへの対策として王道ともいえるセオリーであるが、これが福山には覿面に効いた。WBに関しては単純なベタ引きだけではなく、要所で前に出ていく対応も良かった。例えば先制点に繋がるFKは、右WBの山崎がインターセプトで奪ってからカウンターを仕掛けて獲得したもの。この切り替えの良さが勝ちを呼び込むきっかけになったと思う。鈴木の直接FK2発に関しては、もはや論じるまでも無いほど完璧だった。ただでさえ直接FKを決めるのは簡単でないが、この地域CLの大舞台で、しかも2発となれば、これはもう「持っている」というしかない。流れの中では福山も悪くない守備を見せていただけに、セットプレーで試合を決められたのはつくばにとって大きかった。

福山はまさかの敗戦となった。やりたいことを完全に封じられてしまった90分間だった。前半はまだ多少は相手の嫌なポイントにボールを入れてゴールに迫る場面もあったが、リードを許してからの時間帯、特に後半はまるで打つ手が無かった。濱口と高橋(大)の両サイドハーフは1次ラウンドを観ただけでもかなりのやり手と見ていたが、今日はサイドに追いやられて蓋をされてボールを失う場面が多く、仕事をさせてもらえず。ベンチもおそらく2人の打開に期待してピッチに残したが、結局73分まで引っ張った末に最終的には代えざるを得なかった。スタンドから観ていた限りでは、割り切った戦い方になかなか切り替えられなかったような印象が残った。

今日の第2戦は、第1戦で敗れた市原とつくばが勝利し、これで全チーム1勝1敗。勝点の並びが「3-3-3-3」という横一線の状態で第3戦を迎えることになった。福山にとって最も手痛いのは、「1点差で敗れた」ことだろう。仮に今日福山が敗れるとしても、せめて1点返しておけば全チームが得失点差「±0」で並び、総得点数で福山が首位に踏みとどまれていた。これは即ち、第3戦で「市原×福山」がドローに終わっても、「つくば×栃木」で勝敗さえつけば、福山が2位に入れたことを意味している。しかし2点差での敗戦によって福山のみ得失点差が「-1」となり、最下位に転落。福山は第3戦で何が何でも勝たなければならなくなった。こういった点を考えても、福山は今日の試合でなんとしても1点差の敗戦にとどめるべきだったと思うのだが、その割には2点差になっても終盤まで「正攻法」にこだわっていた感があった。その点については少し疑問が残った。今季公式戦でほとんど負けていない福山にとって、このショッキングな敗戦から中1日でどこまで立て直せるかは重要なポイントになりそうだ。一方のつくばは、最終戦で栃木を相手にドロー以上ならば2位以上を確保できる見込みが出てきた。関東リーグ勢同士の対決でやりにくさはあるだろうが、そのストレスは相手も同じであり、今日のようなしぶとい戦いを見せればワンチャンスはありそうな気がした。

個人的には、今季も地域CLの1次ラウンドと決勝ラウンドを観る機会に恵まれ、地域リーグの今季総決算ともいえる戦いを観ることができたので、良かったと思っている。明後日の第3戦でどのチームがJFL昇格を掴むかはまだ分からないが、地域CLらしい驚きに満ちた展開になるか、結果を楽しみにしたい。帰りは観戦帰りの客でぎゅうぎゅう詰めのLRTに揺られながら宇都宮駅に帰還。ちょうど新宿に1本で戻れる湘南新宿ライン直通の宇都宮線に時間が合ったので、グリーン車を使ってのんびりと帰宅した。

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