小説 階段話

「私、階段が大好きなんですよ。
怖い方じゃなくて、昇り降りする階段の方。
怪談は嫌いですよ。怖がりなんで。
階段が使えるって奇跡なんです。
小さい頃は使えないでしょ。
年取ったら膝が痛くて使えない。
それ以外にも怪我したら階段の昇り降りは難しい。
階段は本当に奥が深いんです。
私は子供の頃、毎日のように母と
母の友達のお兄さんに殴られたり、
蹴られたりしてたんです。
本当に痛かった。
だから殴られたくなくて、どうしたらいいかを
必死で考えたんです。
それでテレビドラマの真似をして、
家の階段の上から母と母の友達のお兄さんを
力一杯押しました。
やってみたら2人とも2度と私を
殴らなくなったんです。
階段が無かったら、私は死んでたかも
知れないですね。階段のおかげです。
今も高台の急な階段の上にあるアパートに住んでます。最近、変な男の人にまとわり付かれてるんで、
また階段の上から力一杯押してみようと
思ってるんです」
屈託なく笑う彼女はとても可愛かった。
(終わり)

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