小説 下戸の気遣い

「ホーリー塚本の人生相談のコーナーです。
早速、ご相談を読んでいきます。
『ホーリーさん こんにちは。
私は29歳 女性です。
最近、健康や節約について考えています。
その中の一つとして断酒をしようと思っているのですが、おすすめの断酒方法はありますか?』
という質問ですね。
念の為の確認ですけど、
アルコール依存症ではないですよね。
もし依存症なら専門家に聞いて下さい。
あくまで普通に断酒する方法ですね。
断酒の一番いい方法は、転職と絶縁です。
例えば、
会社の飲み会でウーロン茶頼んだとするでしょ。
そしたら、隣に座ってる先輩が
なんでソフトドリンクなの?
もしかして妊娠?とか聞いてくるんですよ。
あれは面倒ですね。
あと、年配の下戸の先輩が
『かたちだけだから』って
乾杯用にグラスに注いだビールを『これ飲んで。
口つけてないから大丈夫』って言ってきたりね。
私の経験上、飲む人より飲まない人、
すなわち下戸の方が面倒なんですよ。
飲む人も厄介だけど、ちょっと休憩、とか
わかるんです。
それぞれ飲むペースがある事を
わかってくれる人が多い。
でも下戸の人は、それがわからない。
ジンジャーエールを頼んだのに、
ジンジャーハイボールが
出てきたから、なんで?って思っていたら、
下戸の先輩が『訂正しといたよ』って
自信満々に言ってくるからテーブル
ひっくり返そうと思いましたね。
『グラス空いてるけど、次飲む?』
『もういらない』
『ああ そう』
と言う会話ができないんですよ。下戸は。
勝手に店員さん呼んだり、
無言でメニュー突きつけてきたり。
本当にイラっとする。
で、あとから『塚本さんって酒豪ですよね』
とネチネチ絡んでくる。
まぁ下戸の人は、自分が飲まされないように
相手に飲ませるんですよ。
やられる前にやれ、的なね。
今はアルコールハラスメントがあるから、
そういうのも減っていくでしょうけど。
下戸は飲み会にいちゃいけない存在と
思ってます。
で、話を戻すと断酒をするならあなたが
お酒を飲める事を知っている
人たちとは縁を切る事ですね。
だから転職と絶縁。
断酒くらいで転職なんて大げさと
思うかもしれませんけどね。
朝礼かなんかで、私は断酒します!
と宣言を出来ますか?
妊娠?妊活?とか色々言われても無視。
あらぬ噂を立てられて、
色々詮索されても気にしない事です。
そのうち周りも飽きるでしょう。
この人は飲まない人なんだなぁ、と認識されます。
プライベートの飲み仲間なら絶縁は簡単ですよね。
連絡先を削除すればいい。
断酒してるんだ、なんて言わない方がいいですよ。
そこは会社と違います。
なんだかんだ言っても会社は仕事する場所。
いる時間も限られている。
でも、プライベートは違う。
逃げられませんからね。
人の挑戦をあの手この手で妨害してくる人
はいます。
会社なら飲み会に出ない。
プライベートなら連絡先削除。
非情と思うかもしれませんが、
人の縁は切れても、また新しい人との縁が繋がる。
これは断酒に限った事じゃないです。
止めるんじゃなくて、始めるんです。
断酒の経過報告お待ちしております。
では、人生相談のコーナーでした」
(終わり)

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