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リチャード・フライシャー【スパイクス・ギャング】|普通で、美しい、普通じゃない映画

とても気に入ってしまった映画ほど、書くのを後回しにしてしまいます。
だからと言って、渾身の記事を書くわけでもなく、むしろそっけなくなる傾向があります。
しかし、記憶も薄らいでしまうので、ここらへんで触れていこうと思います。
またも、リチャード・フライシャーの映画です。

リチャード・フライシャーは、監督した長編映画47本、フィルム・ノワール、喜劇、犯罪実話もの、冒険活劇、SF、戦争もの、史劇とジャンルも多岐に渡り、映画史上の傑作にもこと欠かないフィルモグラフィーの中で、ただの一本も自分から出した企画はなく、「100%私の映画は注文仕事だ」と云う(引用:『B級ノワール論』吉田広明 著,作品社)

■用を突き詰めた美
映画監督の先輩に紹介されて観始めたのですが、すっかりフライシャー好きなっています。
フライシャー映画はどれを観ても、起伏のない、無駄のない、いらんことしてない、感じがします。
それは、予算や期限内で出来るだけ面白い作品を完成させるために、いわば職人監督が経済的な方法で撮ったからに他ならないからだと思います。
そのいらないものが削ぎ落とされた映画の姿が、まるで柳宗悦らの云う「用を突き詰めた美」のようなものと同じではないかと感じてしまいます….(しらんけどw)
(*この言葉はロベール・ブレッソンにふさわしいかと一瞬思いましたが、フライシャーにも同じように思ったので使いました)
【スパイクス・ギャング】もまた、その極致ともいえる映画になっています。

■えもいわれぬ映画
3人の青年が、初老のアウトローに憧れて、厳格な父親に反発し、家出をして銀行強盗の道に入っていく活劇と転落の青春西部劇。
町山智浩曰く、この映画は旧約聖書の放蕩息子の話であり、老アウトローはタイミングよく現れるサタンであると、的確な解説をされていました。
ただ、この映画を観てえも言われぬ感激を覚えた私としては、その解説は映画のスケールを小さく感じされるものでした。
【スパイクス・ギャング】は、解説できる範疇を超えてしまっているんです。
普通なのに、えも言われぬ、変な映画なんです。
そして、美しい。

allcinema【スパイクス・ギャング】

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