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英語のそこのところ 第17回 共感してもらうのは、難しい。

著者 徳田孝一郎
イラストレーター 大橋啓子

 あれは月例ミーティングでのことです。私のいた前の会社では、月一回のペースで業務報告や数字共有を行うための全体会議をしていたんですが、同時にそこは、社長からの新規事業の相談会? というか、提案の場にもなっていました。
 当時の会社では、講師の紹介業務部門と受講生のスキルアップ部門が収益の柱になっていて順調な成績だったんですが、競合他社の参入もあり、新たな収益の柱を作らないといけないという焦りが社長にあったようです。
 毎回毎回、まぁ、いろいろ思いつくものだというぐらい案を持ってこられるわけですが、もともと教育産業出身でないので、う~ん、と反応に困るものが多い。
 例えば、英会話力(口頭英語力)をはかるテストに基づいて学習カリキュラムを自動生成するプログラムを作って売るのはどうだろうか? とか、Native English Speakerの講師とNative Japanese Speakerの通訳を一緒にしてレッスンを行うのはどうだろうか? 色々な案が出てくる。一聞するとよさげに聞こえるわけですが、前の案はテストという嫌なものをみんなが進んで受けたいわけではない(ある程度の強制力が必要なんです。講師から受けてね と言われるような)というところが問題ですし、あとの案は損益分岐点が異常に高くなってしまう上に、通訳者は「講師」ではないので、結局Native English Speakerと通訳者だけが話してしまうという事態が発生しがち(笑)で、レッスンにならない。

 そういう際には、教育畑出身の私などが柔らかく話を受け取っておいて、あとで社長と一緒に検討するんですが、あるとき、社長としてはどうしても譲れない新規事業があって、相談してもらう前に見切り発車されたことがあります。

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