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最近の迷惑メールは感情移入させる

僕のもとに一通の迷惑メールが届いた。

今まで何度も受信させられてきたが、今回のそれは斬新であり、心を揺さぶるものだった。

最初に断っておくと、僕はたいてい小説を書いているけどこれは創作ではなく、実際に届いた迷惑メールについて書いている。それではご紹介していこう。

今まで迷惑メールを受信したことがない方のために説明すると、あからさまに拙い日本語、というか舌足らずで幼い漫画のキャラクターみたいな言葉で送られてくることはほぼない。

大抵「1億円当選しました!」というお金系と「いまひまー?あおー?」のような性を匂わすものだ。

寧々からメールが届くのは、一日二通くらいだったと思う。友達になろう、みたいなメールばかりだった。僕はこのメールに対して「ロリコンをターゲットに絞ってきたかー(笑)すごい角度からアプローチしてきたな」と思っていた。

このしゃべり方がおもしろかったので、僕は寧々からのメールをちゃんと読んでいた。

しかし、事態は急変する。

寧々ちゃんが韓国人に監禁されたらしい。この一大事を知らせてくれたのが寧々ちゃんの親御さんだった。残念ながらこのときのメールは削除してしまった。

当然、親御さんは娘の寧々ちゃんのために僕の説得を試みた。

なぜだか知らないが、親御さんによると僕が手紙を受け取れば万事解決するとのこと。(つまり住所が知りたいのはわかった。)

しかし僕の意志は固い。心を鬼にして無視を決め込む。そんなとき、さらに親御さんの辛い思いが伝わるメールが送られてきた。

「最後だけ、事務的!てかなんでチャドいんの!娘大変なことなってるんだけど!!」とツッコミを返信したい衝動を我慢しようと、食いしばって奥歯が砕けそうになりかけるくらいの気持ちでなんとか耐えた。

それにしても「共犯者」という言葉は、身に覚えがなくてもなかなか響くものがある。

そしてこの迷惑メールがすごいところは、「寧々」だけでなく「親」を出してきたこと。登場人物を増やしたことで、この迷惑メールに説得力が出た。

また登場人物を増やしてきた。amazonという企業名を使って。

インターネットに日ごろ触れていない人なら騙されちゃうんじゃないの?って思うほど、あらゆる角度から嘘を語って説得力を強化する。

アマゾンが日本郵便に委託するっていうありえないことが起きてるし、メールアドレスも明らかにおかしいんだけど、アマゾンもよく知らない、メールアドレスまで気が回らない高齢の方だったら危ない。

まぁ、8000万があり得ない。

すごくかわいそうな気持ちにさせる。初めは楽しかった舌足らずなしゃべり方が同情を誘う。しかも障害のある人だったという事実。僕は寧々を憐れんだ。

最初はただの迷惑メールのようでありながら、ちょっと興味を引く内容で読ませる。いつの間にか、寧々という少女に引き込まれる。

そのあと彼女は監禁され、暴力を受けていると知らせる。

起承転ができている。

そして、冷静に読んでみると一文一文はちゃんと意味が通るようになっていて、文章になっても自然だ。しゃべり方だけが幼いところに、悪い大人の影を感じた。

そして韓国人が現れる。返信はなぜかブログから。あと韓国人は日本人をジャップと呼ぶのか。

と冷静になろうとするけど、寧々への憐れみの気持ちの方が勝る。

そして現在もこういうメールが繰り返し繰り返し届いている。何回も保険に入って、死のうとしている。「トラックにひかれたらすぐ死んじゃういうてたなの」って言ってくる。


まとめ┃迷惑メール、気をつけましょう!

迷惑メールは当たり前のようにはびこっている。長年世の中に定着している分、内容も進化している。

だから手の込んだやり口を使うようになったのだと思う。

最後は、感情に訴えかける。騙されているとわかっていながら、個人情報を渡してしまう人もいるかもしれない。

対策はメールアドレスを簡単に公開しないこと。あと、迷惑メールが来ても無視しましょう。

メールアドレスに届く情報は、現実とつながっている。ここにいる自分に向かって言葉が届いている。そんな気持ちにさせる。

でも、送り主がこの世にいないこともある。本当に、この世にいなくてよかったと思えることもある。


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