短編小説『もし100万円あったら』

 中学生の男子が2人、下校している。

「もし100万拾ったらどうする?」

「そりゃ交番に持っていくでしょ」

「……じゃあ、宝くじで100万もらったらどうする?」

「え? 誰に?」

「えーと、じゃあ親戚のおじさんとか」

「なんでくれたの?」

「それは……おこづかい的な、お年玉的な感じで」

「そもそもそのおじさんはなんの仕事してるの?」

「なんでそれは知りたいの?」

「やっぱりお金にもきれいなお金かどうかっていうのもあるし。ヤクザ的な危ない人からのお金はもらいたくもないし」

「じゃあおじさんはふつうの企業の会社員で、まあまあ偉くて、100万とかでは痛くもかゆくもないの」

「ふつうの企業の社員で100万円の支出が痛くないっていう君が言う『ふつう』の感覚の異常性には触れないことにするけど、仮にお年玉としてもらったとして、その前の年とか、おこづかいはどれくらいもらってたわけ?」

「……そりゃ、1万とか5000円とか」

「そこはふつうなんだ……なんでそんな爆増したの?」

「じゃあいいよ! いつも100万もらってたってことにするよ!」

「じゃあ僕はお年玉やらおこづかいやらなんかしらの節目節目でのお祝いごとで2000万くらい持ってるってこと?」

「……ていうか100万あったら何したいかっていう質問だよ?
 なんで増えちゃったのマジで。意図を汲み取ってくれよ……」

「まぁまぁ、泣くなよ。
 100万あったらかー。これから高校、大学とお金がかかるからね。
 貯金でしょ」


おわり

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