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【Wine ワイン】第39回収穫記念祭ロゼワイン


【Wine ワイン】第39回収穫記念祭ロゼワイン

収穫記念で頂いて美味しかったのでお土産に購入。
最近日本酒を飲む機会が多いためか、酸が控えめで僅かに甘さを持つワインに傾倒している。このワインは残糖が11.9g/ℓとExtra Dry寄りでちょうど良い感じ。
どこか地中海沿岸部の緩いロゼワインという感じで、休日には最適。

■Producer (生産者)
⁃ Coco farm & Wnery

■Country / Region (生産国 / 地域)
⁃ 日本 Japan

■Variety (葡萄品種)
⁃ 50% Merlot
⁃ 14% Mascat Baily A
⁃ 11% Dornfelder
⁃ 6%  Cabernet Sauvignon
⁃ 5%  Koshu
⁃ 4%  Chardonnay
⁃ 3%  Cabernet Flanc
⁃ 2%  Petit Manseng
⁃ 5%  Other Grapes


■Pairing (ペアリング) 
⁃ pan con tomate パン・コン・トマテ

■ Production area overview(生産地概要)
⁃ 日本

■プロフィール
日本は南北に細長い島国で、総面積は37,800,000ha。これはほぼドイツと同じ面積だが、日本の場合、列島の真ん中を急峻な山脈が縦に走っており、国土の75%が山間部になっている(一方、ドイツははるかに平野部が多い)。現在は47都道府県のうち、北は北海道から南は沖縄までほとんどの都道府県でワインが造られるようになった。以下に日本のワイン産業の特徴を挙げる。


ブドウのブドウの面積は16.500ha、収穫量163,400t (2020年農林水産省)。

 日本ワインの生産量は、下のように17,775kℓ 750mℓ

1位
山梨県(5.503kℓ)

2位
長野県(3.559kℓ)

3位
北海道(3,294kℓ)

4位
山形県(1,370kℓ)

5位
岩手県(585kℓ)

6位
新潟県(514kℓ)

7位
岡山県(391kℓ)

8位
島根県(287kℓ)

9 位
栃木県(281kℓ)

10位
大阪府(188kℓ)

上位3道県が占める割合は山梨県が31.0%、長野県20.2%、北海道18.5%、3道県の合計で日本ワインの全生産量の7分割をする。

 この日本ワインの生産量は、海外原料を排除たワインも含めた国内製造ワイン、85,415kℓの20.8%に当たる。 ちなみに日本ワインのうち、白ワインが占める割合は44.3%、赤ワインは44.1%、スパークリングワインは4.5%、その他が7.1%となっており、白ワインと赤ワインは、ほぼ同量といえる。
 一方国内市場におけるワインの流通量の構成比では、輸入ワインを含めたワイン全体の4.9%が日本ワインと推計されている。また、国内におけるワイン原料用ブドウの生産量は、合計22,365tである。主要6道県のブドウ生産量は、山梨県、長野県、北海道、 山形県、岩手県、新潟県の順である。最も多いのは山梨県が6,563tで、長野県が5,289tと山梨県に次ぐ。 さらにこの後を、 北海道が4,350t, 山形県が2,543t、岩手県が512t、新潟県が319tと続いている。


 [日本ワイン生産量17,775kℓ(2,370万本)]

山梨県5.503kℓ 31.0%
長野県3.559kℓ 20.2%
北海道3,294kℓ 18.5%
山形県1,370kℓ 7.7%
岩手県585kℓ 3.3%
新潟県514kℓ 2.9%
その他2,910kℓ 16.4%

 日本ワインの生産量は山梨県、長野県、北海道、山形県を除くとかなり少なく、どの都道府県も全体に占める割合は5%にも満たない。

国税庁データによれば、「日本ワイン」の生産量は、17,663kℓ。750mℓ換算で約2,355万本になる。

生産量上位10道府県
1位山梨県(737.3万本)
2位長野県(542.9万本)
3位北海道(391.0万本)
4位山形県(159.3万本)
5位岩手県(72.3万本)
6位新潟県(52.1万本)
7位岡山県(50.7万本)
8位宮崎県(47.1万本)
9位島根県(35.5万本)
10位兵庫県(34.9万本)
(すべて750m換算)。

上位3道県が占める割合は山梨県が31.3%、長野県が23.1%、北海道が16.6%、3道県の合計で日本ワインの全生産量の7割を占める。この日本ワインの生産量は、海外原料を使ったワインも含めた国内製造ワイン、87,325kℓの20.2%にあたる。ちなみに日本ワインのうち、白ワインが占める割合46.1%、赤ワインは42.7%、スパークリングワイン3.9%、その他が7.4%となっており、白ワインの生産が、やや赤ワインを上回ってはいるものの、ほぼ同量と言える。一方国内市場におけるワインの流通量の構成比では、輸入ワインを含めたワイン全体の4.1%が日本ワインと推計されている。国産生ブドウの受入数量は、合計23,302tである。主要6道県のブドウ生産量は、山梨県、長野県、北海道、山形県、岩手県、宮崎県の順である。もっとも多いのは山梨県が7,503tで、長野県が5,740tと山梨県に次ぐ。さらにこのあとを、北海道が3,485t、山形県が2,505t、岩手県が569t、宮崎県が511tと続いている。

■1.多様性
 日本ワインの特徴としてまずあげるべきは多様性だ。ワインの原料を目的としてブドウが育てられている土地をみると、北限の北海道名寄は北緯44.1度、南限の沖縄県の恩納村は26.3度で、その差は約18度になる。フランスのワイン産地の北限のシャンパーニュと南限のコルシカ島の緯度の差が約6度であるのを考えると、日本のワイン用ブドウの産地がいかに南北に離れているのかがわかる。当然ながらそれぞれの気候は大きく異なっている。ブドウ園が拓かれてきたのは本州では全体的に盆地の辺縁部の扇状地が多いものの、なかには、標高900mを超える山間部にある畑や海岸に近い標高2mの畑などがあり、地形も多岐にわたっている。もうひとつ挙げられるのが品種の多様性である。ヨーロッパの伝統的なワイン産地は基本的にはヴィティス・ヴィニフェラ種(欧中東系品種)のみからワインが造られている。ところが日本では、ヴィティス・ヴィニフェラ種に加えて、ヴィティス・ラブラスカ種、そして自生している野生ブドウ(山ブドウ)、そしてこれらの交雑種あるいは交配種からもワインが造られている。これはまるで、和食以外に、イタリアン、フレンチと海外の料理を貪欲に取り入れてきた日本人食生活の様相とも似ている。

■2.発展途上の新しい産業
 日本で本格的なワイン造りが始まったのは明治の初めとされており、その歴史の長さは約140年間におよぶ。ただし2018年、熊本大学永青文庫センターによる新たな見解が発表され、歴史の見直しが検討されている(後述)。ブドウ栽培に根ざしたワイン造りが盛んになり始めたのは1980年以降。今、まさに日本のワイン産業は発展の最中にいる。それはワイナリーの設立の動きからも見てとれる。2000年以降、この動きが活発化しており、ワイナリー数は約200軒以上増え、国税庁のデータでは369軒に達している(ただし日本ワインを生産していない醸造場も含む)。前述のように、少なくとも日本ワインを製造中のワイナリー数は277軒とされている。

(本稿でワイナリー数については、国税庁のデータではなく、2017年末時点での、各自治体への聞き取り調査に準拠している。)

 2021年に発表されたデータによるとワイナリーの数は山梨県、長野県、北海道、山形県、岩手県、新潟県の順に多く、日本ワインの生産量の順位と毎年ほぼ同じ。全ワイナリー数の約4分の1が山梨県に集中している。しかし、近年、北海道と長野県でワイナリーは急増中で、これら2道県においてワイン造りが活発化し、産地が生まれようとしているのがうかがえる。
各都道府県における実質的に稼働しているワイナリー数は前述のようになかなか捉えにくい。


注:ただし国税庁のデータでは以下のとおり。山梨県:85場、長野県:55場、北海道:42場、山形県:17場、岩手県:11場、新潟県:10場277軒という数字は、調査に回答した304軒の中で、国産ブドウを使用しているワイナリーの数になる。調査に回答しなかった65.軒の中にも日本ワインを製造しているワイナリーが含まれることが予想される。

■3.捉えにくかった実態
 現在、国税庁では、2つの手法で国内において生産される果実酒の年間生産量を調べている。ひとつは課税数量の把握を主な目的とした調査で、もうひとつは果実酒製造業の実態についてのアンケート調査になる。     
 しかし、2015年、国税庁は、後述する「果実酒等の製法品質表示基準」(ワインラベルの表示ルールと呼ばれている)を定め、ワインのラベル表示に関する法制度を整えるとともに、その前年から詳細な調査を実施し、現在に至る。
 そして、こうした調査により、日本ワインの生産の実態が明らかになりつつある。日本ワインの生産量を公的な組織が発表した意義は非常に大きい。国税庁から発表された資料にはかなり詳細にわたっており、赤ワイン用、白ワイン用合計20品種の使用実態が明らかになった。ただし日本ワイン生産量の上位6道県以外の生産実態はいまだ捉えにくいのが現状だ。

■4.海外原料への依存
 国税庁では、国内製造ワイン(日本ワインに加えて、海外原料も使用した果実酒も含む)における、日本ワインの比率も公表している。2019年度の国内製造ワインの製造数量は85,415kℓ、うち日本ワインの製造数量は20.8%の17,775kℓとしている。つまり約8割が海外原料に依存しており、海外原料への依存状態がここ半世紀は続いている。

■5.多様な栽培形態
 ワイン用ブドウの生産数量のうち、契約栽培によるものが50.5%とほぼ半数を占める。購入が31.7%、自社農園が16.2%、受託醸造が16%となる。

日本ワイン全体のうち、自社畑産のブドウで造られたワインは徐々にではあるが増加傾向にある。日本におけるこのドメーヌという言葉には法的な定義がないが、国税庁では原料ブドウを自営農園から最も多く受け入れているワイナリーを自営農園としており、その数は87軒に達している。ともあれ現状では、ワイナリーは、契約農家やJAと良好な提携関係を築いていくことが原料ブドウの確保には生命線となる。

■6.小さな生産規模
 国税庁のデータからは現在稼働しているワイナリーのうち約84%は年間生産量が100kℓ未満の小規模ワイナリーでこの比率はここ数年増加している。つまり小規模ワイナリーがさらに増えていることが指摘できる。この傾向は依然として続いており、2000年以降設立されたワイナリーだけを見ると90%以上が小規模ワイナリーになる。
 また日本のブドウだけでワインを造っているワイナリーの中でもっとも生産量が多い北海道ワイン㈱でも、年間生産量は約260万本(750mℓ換算)で(北海道ワインからの聞き取り)、他のワイン産出国の大規模ワイナリーに比べると規模は小さい。


■歴史

■1.ワイン造りの始まり
 日本のワイン造りの始まりは、今から約140年前の明治初期に端を発するとされてきた。1874年、山田宥教(ひろのり)詫間憲久(のりひさ)の両名が甲府にて初めて本格的ワイン造りを始めたのだ。以降、明治政府の殖産興業政策の一環として、山梨県はもとより、北海道、山形県、茨城県、神奈川県などでブドウ栽培とワインの試験醸造が始まる。1877年には、今の勝沼にあたる祝村に初めての民間のワイナリー、「大日本山梨葡萄酒会社(通称祝村葡萄酒醸造会社)」が立ち上げられた。続いて山形県や新潟県、さらに大正時代には大阪府でもワイナリーが誕生している。ただし2018年、熊本大学永青文庫センターによる新たな見解が発表された。小倉藩奉行所の日次記録には、1627〜1630年までの4年間、小倉藩細川家の管轄下において葡萄酒(ぶだうしゅ)造りが実施されていたことが記されている。同センターではこの葡萄酒がワインであるとしている。これが事実だとすると、初の本格的なワインは1627年には、福岡県において造られていたことになる。1926年(昭和元年)には、山梨県のワイナリーは319軒に達する。また、やや時を前後するが、1893年には、新潟県でワイナリー、「岩の原葡萄園」が川上善兵衛によって設立。川上は、私財を投げ打ち、日本の風土に適したワインの原料となるブドウをもとめて研究を続け、1922年22品種を優良品種として発表した。27年には、マスカットベーリーAやブラッククイーンなどの日本独自の改良品種を新潟県で開発。これらの品種は今の日本のワイン産業を支える重要な役割を果たしている。山梨県のワイナリーは増減を繰り返しながらも、全体としては増加傾向で39年にはその数が3,694軒に達した。
 40年代半ば、太平洋戦争末期には、ソナー(水中聴音機)の資材用の酒石をワインから獲得するために軍が各地のワインの生産を奨励して生産量はさらに増加した。ただしワイナリーの数自体は、戦争中の強制統合によって著しく減少する。
 そして戦後、戦争中の無理な増産の反動を受け、ワイン産業は低迷した。加えてこの頃人気を博したのは、甘味果実酒であった。しかしその一方で、製糸業、養蚕業の衰退とともに、養蚕にかわる農産物としてブドウを育てる者も出てきた。

■2.生産の拡大
 60年代から80年代になると、東京オリンピック、大阪万博が開催、経済の高度成長を追い風に、日本ワインの生産と消費が拡大し始める。60年代、70年代には各地で村おこしや地域振興を目的とした第3セクター、JA、地方自治体のワイナリーの設立が活発化する。73年は「ワイン元年」と称される。というのも、石油ショックにより日本経済は混迷するが、この3年前の大阪万博の影響もあり、ワイン消費量が一挙に前年比162%に上昇したからだ。さらに、75年には、ワインの消費量が甘味果実酒のそれを上回る。
 この間、62年の酒税法の改正によって、干しブドウを使ったワイン醸造が認められ、70年代にはワインの原料に国産生ブドウ以外を原料とする動きが生まれた。60年代より日本は諸外国から、農産物貿易の自由化を迫られていたが、そして、70年代の自由化をきっかけに特恵国のバルクワインと濃縮マストの関税が引き下げられた(濃縮マストは無税になった)。その結果、ワインの原料のためのバルクワイン、次いで濃縮マストの輸入が激増していく。

■3.ワインブームと品質向上
 80年代頃には、大手ワイナリーを中心に日本のワイン造りにも変化が生まれ出していた。シャルドネやメルロなどの中近東を原産とするヴィティス・ヴィニフェラ種(欧・中東系品種)の本格的な栽培が始まったのだ。
 2000年を過ぎると、企業ではなく、一個人が自分で育てたブドウでワインを造ろうとする動きが生まれる。そして北海道や長野を中心に、ワイナリーの設立が活発化して、設立数は約200軒に達している。こうしたワイナリーの多くは生産量が10万本以下の小規模ワイナリーで、異業種からの参入も多い。ただし、近年は異業種の企業の参入、さらには地方自治体が関与したワイナリー設立も目立つ。ワイン用ブドウを付加価値農産物とみなし、耕作放棄地の解消にブドウ園を開園する動きも見られる。一方、こうしたブドウ栽培を重視したワイン造りは大手ワイナリーでも進んでいる。各社が北海道、長野県、山梨県に自社管理畑を次々と開園しているのだ。大手や中規模ワイナリーの10〜30haの規模の開園に加えて、新規のブドウ園の開園も続き、全国的な苗木不足が発生している。こうした動きに対応して、植物検疫所でも海外からの輸入する苗の検疫を2018年1月に緩和している。
 またワイナリーにおいても、極めて小さなロットで仕込めるような小型のタンクが普及しだした。ワイン造りの現場では、適地適種の検討の動き、クローンの見直し、ワイナリー設備の刷新、内外の生産者同士の交流も続く。一連の動きが実を結び、この10数年でテロワールを表現した日本ワインが増加、ひいては品質の向上として実を結んでいる。
 近年の特徴として都市型ワイナリー(アーバンワイナリー) の増加が注目される。2013年に大阪市中央区という街中にワイナリーが誕生した。 醸造場の2階に飲食店を設け、顧客は醸造設備を見ながらワイナリーのワインと料理を楽しめるというスタイルだ。物流の発達により、醸造場がブドウ畑に隣接する必要がなくなったために可能になった。ワインと消費者の新しい接点として注目される。現在は東京、大阪、小樽、 金沢などで営業しており、全国の都市部で増加傾向 にある。


■気候風土
 ブドウの栽培地は基本的には他の果樹の栽培も盛んな盆地の辺縁部や平野の入り口の扇状地が多かった。しかし近年はさらに多様化して、冒頭でも触れたように、海岸近くの砂地でブドウ栽培をしている事例もある。
 南北に長い日本列島は、日本全体をみると内陸性気候のところが多いものの、北と南でも気候は大きく異なる。
 北海道の後志(しりべし)地方と空知(そらち)地方は前者が海洋性気候、後者が内陸性気候だが、いずれも梅雨がないことが指摘できる。4〜10月の降水量は日本の他の栽培地に比べてもっとも少なく676〜693mm。しかしその反面、秋が短く、積雪もあるために、成育期間が短いのが特徴だ。山形県では、庄内地方を除き、内陸性気候の栽培地が多い。秋雨に悩まされることが少なく、成育期間が長くとれるのが特徴だ。長野県はすべての栽培地が内陸性気候。4〜10月の降水量は北海道こそ、若干上回るものの683〜789mmとなる。東御市の4〜10月の平均気温はディジョンとほぼ同じ。9〜10月に晴天が続くのも特徴だ。山梨県は同じく盆地の内陸性気候。降水量はやや長野にまさり、849〜925mm。日照量はほぼ長野と同じになる。興味深いのが九州の宮崎で、確かに4〜10月の降水量も多いが、日照量ももっとも多い(データはアメダスの1981〜2010年の平均値を参照している。アメダスの計測地点はワイナリーのブドウ園の近くを採用ディジョンのデータはJ.Gladstonesの「Viticulture&Enviroment」を参照)。



■ワイン法
 日本におけるワインに関する法律は、主として酒税法と「酒税の保全及び酒類業組合等に関する法律(以下、酒類業組合法という。)」が定められている。
 酒税法では酒類の分類、定義及び税率が定められている。酒税法では、酒類をアルコール分1度以上の飲料(薄めてアルコール分1度以上の飲料とすることができるもの(省略)または溶解してアルコール分1度以上の飲料とすることができる粉末状のものを含む。)と定義して、以下の4つに分類して、税率を定めている。
1.発泡性酒類(ビール、発泡酒、その他の発泡性酒類)
2.醸造酒類(清酒、果実酒、その他の醸造酒)
3.蒸留酒類(連続式蒸留しょうちゅう、単式蒸留しょうちゅう、ウイスキー、ブランデー、原料用アルコール、スピリッツ)
4.混成酒類(合成清酒、みりん、甘味果実酒、リキュール、粉末酒、雑酒)
 ワインは果実酒に、またフォーティ・ファイド・ワインは一般的に甘味果実酒に含まれる。酒税法によると果実酒の定義は以下のとおりになる。

[果実酒]
 次に掲げる酒類でアルコール分が20度未満のもの(ロからニについては、アルコール分が15度以上のものその他政令で定めるものを除く。)

⁃ イ)果実又は果実及び水を原料として発酵させたもの
⁃ ロ)果実又は果実及び水に糖類(政令で定めるものに限る。ハ及びニにおいて同じ。)を加えて発酵させたもの
⁃ ハ)イ又はロに掲げる酒類に糖類を加えて発酵させたもの
⁃ ニ)イからハまでに掲げる酒類にブランデー、アルコールもしくは政令で定めるスピリッツ(以下「ブランデー等」という。)又は糖類、香味料もしくは水を加えたもの(ブランデー等を加えたものについては、当該ブランデー等のアァルコール分の総量(既に加えてブランデー等があるときは、そのブランデー等のアルコール分の総量を加えた数量。)が当該ブランデー等を加えた後の酒類のアルコール分の総量の百分の十を超えないものに限る。)


[甘味果実酒]
次に掲げる酒類で果実酒以外のものをいう。

⁃ イ)果実または果実および水に糖類を加えて発酵させたもの
⁃ ロ)(果実酒の定義で定められている)イもしくはロに掲げる酒類又はイに掲げる酒類に糖類を加えて発酵させたもの
⁃ ハ)(果実酒の定義で定められている)イからハまでに掲げられている酒類又はイもしくはロに掲げる酒類にブランデー等又は糖類、香味料、色素もしくは水を加えたもの(ブランデー等を加えたものについては、当該ブランデー等のアルコール分の総量が当該ブランデー等を加えた後の酒類のアルコール分の総量の百分の九十を超えないものに限る。ニにおいて同じ。)
⁃ ニ)果実酒又はイからハまでに掲げる酒類に植物を浸してその成分を浸出させたものもしくは薬剤を加えたもの又はこれらの酒類にブランデー等、糖類、香味料、色素もしくは水を加えたもの

以上酒税法3条13号および14号
 現行の酒税法の「果実酒」では、ブドウとブドウ以外の果実の区別はされておらず、「水」や「アルコール」を使うことも出来る。

*また、「酒税法及び酒類行政関係法令等解釈通達」において、原料となる果実には、果実を乾燥させたもの、果実を煮詰めたもの、濃縮させた果汁又は果実の搾りかすを含むとしている。

補足:ちなみに、世界各国には、ブドウの栽培規制、ワインの醸造方法、地理的表示、流通規制、そしてラベルの表示ルールなど、ワインに関するさまざまな法制度がある。これらすべてをまとめた包括的な法律があるわけでなく、一般的には、これらさまざまな法制度を総称してワイン法と呼んでいる。

 一方、酒類業組合法では、品目やアルコール分といった表示義務事項を定める他、財務大臣が酒類の製法、品質その他政令で定める事項の表示にっいて必要な基準を定めることができる(法86条の6第1項)とされている。そこで国税庁告示により「果実酒等の製法品質表示基準」、「酒類の地理的表示に関する表示基準」等が定められている。
 『果実酒等の製法品質表示基準』(平成27年国税庁告示第18号)は2015年10月30日に国税庁によって定められた。これにより、ワインのラベル表示を規定する法制度が整った(施行は2018年10月30日)。この法制度は一般的には「ワインのラベルの表示ルール」と呼ばれている。以下に表示ルールの制度について説明する。

■1.表示ルール
 従来、一般的に「国産ワイン」と呼ばれていたものには、輸入濃縮果汁や輸入ワインを原料としたものもあり、国産ブドウのみで造られた「日本ワイン」とそれ以外のワインの違いがラベル表示だけではわかりにくかった。そのため、消費者が適切に商品選択を行えるよう、表示をわかりやすくすることなどを目的として、表示基準を定めた。
 この基準では、「日本ワイン」は、国産ブドウのみを原料として、日本国内で製造された果実酒と定めている。一方「国内製造ワイン」は、日本ワインを含む、日本国内で製造された果実酒および甘味果実酒をいう。つまり輸入原料も使った果実酒も含まれている。
 また今回の制度では、「日本ワイン」という表示に加えて、原料ブドウの産地や品種やその収穫年の表示についても規定が定められた。

[表ラベル]
 日本ワインの場合にのみ、「日本ワイン」という表記、地名、ブドウの品種名、そしてブドウの収穫年を記すことが可能となる。海外原料を使った場合には、上記を記すことはできない。また海外原料を使った場合には、「輸入濃縮果汁使用」「輸入ワイン使用」など、その旨を記すことが義務となる。

(1)地名の表示ルール
①ワインの産地名(「塩尻ルージュ」の塩尻などの表示)
⁃ 地名が示す範囲内にブドウ収穫地(85%以上使用)と醸造地がある場合上記の場合、塩尻市内で収穫したブドウを同市内のワイナリーで醸造。

②ブドウの収穫地名(「塩尻産ブドウ使用」等)の表示
⁃ 地名が示す範囲内にブドウ収穫地(85%以上使用)がある場合上記の場合、塩尻市内で収穫したブドウを原料としている。

③醸造地名(「塩尻醸造ワイン」等)の表示
⁃ 地名が示す範囲に醸造地がある場合(併せて「塩尻は原料として使用したブドウの収穫地ではありません」等)上記の場合は塩尻市内にワイナリーがあるが、ブドウは塩尻市外。 

注:収穫地と醸造地が異なる場合でも、ブドウの収穫地と同一都道府県内の隣接した市町村までの範囲内にワイナリーがあるときは①の表示が可能。

(2)ブドウの品種の表示ルール
①単一品種の表示
⁃ 単一品種を85%以上使用した場合

②2品種の表示
⁃ 2品種合計で85%以上使用し、量の多い順に表示する場合(2品種の場合、使用量の割合を併記する必要なし)

③3品種以上の表示
⁃ 表示する品種を合計85%以上使用し、それぞれの品種の使用量の割合と併せて、使用量の多い順に表示する場合

(3)ブドウの収穫年の表示ルール
⁃ 同一収穫年のブドウを85%以上使用した場合

[裏ラベルの一括表示欄]
 裏ラベルには、記載事項をまとめて表示した一括表示欄をもうける。一括表示欄には以下のような表示義務がある。表示する字の大きさは8ポイント(200mℓ以下の容器の場合は6ポイント)以上(酒類の品目の表示を除く。)と定められている。なお一括表示欄は、基本的に枠で囲む必要がある。

①日本ワイン(日本ワインの場合、日本ワインと表示する義務がある)

②品目(果実酒など。表ラベルに表示した場合には、裏ラベルの一括表示欄への表示は省略できる):例 果実酒

③原材料名:例 ぶどう(日本産)*

④製造者:例 〇〇株式会社〇〇県〇〇市○-○

⑤内容量:例750mlℓ

⑥アルコール分:例12%

*「日本産」の代わりに地域名(「長野県産」「塩尻市産」)を表示することも可能。


■2.日本における地理的表示制度
 地理的表示制度とは、商品の確立した品質や社会的評価がその商品の産地と本質的な繋がりがある場合に、その産地名を独占的に名乗ることができる制度である。
 前述のワインの表示ルールでは、地名を記載する際の一般的な規則が定められている。地理的表示はさらにその産地のワインが、生産された土地に起因するような品質特性を備えて一定期間製造されており、その特性を維持するための管理が行われている場合にのみ、地理的表示として指定を受けることができる。つまり、指定された産地内で造られたワインであっても原料や製法、製品規格などの基準(生産基準)を満たしていないワインには当該産地名を表示できない。その表示規制の効果は酒類販売業者にも及ぶなど、地理的表示制度は排他的な特徴を持つ。
 日本ではWTO(世界貿易機関)の発足に際し、ワインと蒸留酒の保護が加盟国の義務とされたことから、国税庁が「地理的表示に関する表示基準」を平成6年に制定し、国内外の地理的表示に関し適正化が図られてきた。この制度の下、国内の地理的表示については6地域が指定されていたが、地理的表示の指定の要件が具体的に示されていないこともあり、十分な活用が進んでいなかった。更なる制度の活用のため、平成27年10月に制度の見直しが行われ、指定を受けるための基準が明確化されるとともに全ての酒類が制度の対象となった。また、地理的表示を名乗る酒類には、その容器、包装、その他類するものに「地理的表示○○」等の表示を行うことが義務化された。これらは、「酒類の地理的表示に関する表示基準」(平成27年国税庁告示第19号)及び「酒類の地理的表示に関するガイドライン」で定められている。
 現在、地理的表示制度において指定されている地域は以下のとおり。ちなみに、地理的表示山梨については2017年、生産基準の見直しが実施された。

・焼酎(蒸留酒):壱岐、球磨、琉球、薩摩
・清酒:白山、山形、灘(なだ)五郷、はりま、三重、利根沼田、萩、山梨、佐賀、長野、日本酒(国レベルの地理的表示)
・ぶどう酒:山梨、北海道、山形、長野、大阪
・その他の酒類:和歌山梅酒

■3.ワイン産地が地理的表示の指定を受ける要件
 国税庁長官は、酒類の産地に主として帰せられる酒類の特性が明確であり、かつ、酒類の特性を示すための管理が行われていると認められるときに、生産基準、名称、産地の範囲及び酒類区分を地理的表示として指定することができる。
 つまり、指定要件は次の2つである。

①酒類の産地に主として帰せられる酒類の特性が明確であること。

②酒類の特性を維持するための管理が行われていること
 この2要件の具体的内容は、下記の「地理的表示に関するガイドライン」に記されている。

1.酒類の産地に主として帰せられる酒類の特性が明確であること
以下の要素を全て満たしている必要がある。
(1)酒類の特性があり、それが確立していること
(2)酒類の特性が酒類の産地に主として帰せられること
(3)酒類の原料製法等が明確であること

(1)酒類の特性があり、それが確立していること
①酒類の特性があること
酒類の特性については(a)品質、(b)社会的評価のいずれかの特性(又はその他の特性)があることが必要である。

(a)品質について
品質について特性があるとは、他の地域で製造される同種の酒類に比べて、原料・製法や製品により、区別できることをいう。
(例)
⁃ 原料の種類、品種、化学的成分等が独特である場合
⁃ 独特の製法によって製造される場合
⁃ 製品が、独特の官能的特徴や化学的成分等を有している場合

(b)社会的評価について
社会的評価があるとは、広く社会的に評価及び認知されていることを言い、それが新聞、書籍、ウェブサイト等の情報により客観的に確認できることが必要である。また、表彰歴や市場における取引条件などにおいて、他の地域で製造される同種の酒類と区別でき、それが広く知られていること。上記特性は、次の要素により整合的に説明できる必要がある。
⁃ 官能的要素(香味色たく、口あたり等)
⁃ 物理的要素(外観、重量、密度、性状等)
⁃ 化学的要素(化学的成分濃度、添加物の有無等)
⁃ 微生物学的要素(酵母等の製品への関与等)
⁃ 社会学的要素(統計、意識調査等)
上記のすべての要素を網羅的に説明できる必要はなく、その酒類の特性に必要な要素のみ説明できればよいが、官能的要素については必ず説明できることが必要である。説明に当たっては、「おいしい」「味が良い」「良質」「すばらしい」又は「美しい」等の抽象的な表現は使用しない。

②酒類の特性が確立していること「酒類の特性が確立している」とは、酒類の特性を有した状態で一定期間製造されている実績があること。

(2)酒類の特性が酒類の産地に主として帰せられること
「酒類の特性が酒類の産地に主として帰せられる」とは、酒類の特性と産地の間に繋がり(因果関係)が認められることであって、その産地の自然的要因や人的要因によって酒類の特性が形成されていることをいう。
 ワインの場合、以下の2点が合理的に説明できる必要がある。単にその産地内のブドウを原料としているだけでは、不十分である。
 自然的要因:地形(標高、傾斜)、地質、土壌、気候(気温、降水量、日照等)等がブドウの品種、糖度、酸度、香味等にどのような影響を与えているかなど。
 人的要因:ブドウの栽培方法の改良等がどのようにその産地のワインの特性を形成しているかなど。産地の範囲については、酒類の特性に鑑み必要十分な範囲である必要があり、過大過少であってはならない。

注:原則として行政区分。それらによる区分が困難な場合には、経緯度、道路や河川等により明確に線引きできる必要がある。

(3)酒類の原料・製法等が明確であることワインの場合、次に掲げる項目を満たす必要がある。なお、これら以外の項目についても、酒類の特性を明確にする観点から産地が自主的に定めることができる。

①原料
⁃ 産地内で収穫されたブドウを85%以上使用していること
⁃ 酒類の特性上、原料とするブドウの品種を適切に特定し、品種ごとのブドウの糖度の範囲を適切に設定すること
⁃ 原料として水を使用していないこと
⁃ 原則として、ブランデーやアルコール等を加えていないこと

②製法
⁃ 産地内で醸造が行われていること
⁃ 酒類の特性上、製造工程において貯蔵が必要なものについては、産地内で貯蔵が行われていること
⁃ 糖類及び香味料を加えること(補糖-甘味化)を認めること又は認めないことを示していること。認める場合については、加えることのできる糖類及び香味料の量を適切に設定すること
⁃ 酸類を加えること(補酸)を認めること又は認めないことを示していること。認める場合については、加えることのできる酸の量を適切に設定すること
⁃ 除酸することを認めること又は認めないことを示していること。認める場合については、減ずることのできる酸の量を適切に設定すること
⁃ 総亜硫酸の重量を、ブドウ酒1kg当たり350mg以下の範囲で設定すること

注:補糖・甘味化、補酸、除酸及び総亜硫酸の値の設定に当たっては、地域の気候風土やブドウ品種を勘案し、過大なものであってはならない。



3製品
⁃ 「果実酒等の製法品質表示基準」に規定する「日本ワイン」であること
⁃ アルコール分について適切に設定すること
⁃ 総酸の値を適切に設定していること
⁃ 揮発酸の値を適切に設定していること

2.その酒類の特性を維持するための管理が行われていること
 「酒類の特性を維持するための管理」が行われていると認めるためには、一定の基準を満たす管理機関が設置されており、地理的表示を使用する酒類が、
(1)生産基準で示す酒類の特性を有していること
(2)生産基準で示す原料・製法に準拠して製造されていること
について、管理機関により継続的に確認が行われている必要がある。管理機関の主要業務は、(1)及び(2)の確認(「確認業務」)である。つまり、管理機関は、地理的表示を付すワインについて、第三者的な立場から、原料及び製法が生産基準に適合しているかや、その産地名を名乗るにふさわしい酒類の特性を有しているかを、ワインの出荷前に書類等の確認、理化学分析及び官能検査により確認することとなる。


3.その他の指定に関する留意事項
(1)酒類製造業者の同意について地理的表示の指定に当たっては、原則として産地の範囲内でワインを生産する全ての事業者が、適切な情報や説明を受けた上で、地理的表示として指定することについて反対していないことが確認できた場合に行う(著者注つまり一者でも反対した場合には指定を受けることはできない)。
(2)産地の範囲の重複について
 産地の重複については、原則として、次に掲げる場合にのみ認められている。
⁃ ①ある地理的表示の産地の範囲以内に含まれる、狭い範囲の地理的表示を指定する場合には、その生産基準が広い範囲の地理的表示の生産基準をすべて満たした上で、その産地に主として帰せられる酒類の特性を明確にしていること。
⁃ ②ある地理的表示の産地の範囲を含む、より広い範囲の地理的表示を指定する場合には、狭い範囲の地理的表示の生産基準を踏まえた内容であること。
(3)地理的表示の名称について
 地理的表示の名称は、原則として地名(産地名)である必要がある。
 地名(産地名)には、行政区画(都道府県、市町村)、郡、区、市町村内の町または字等の名称のほか、社会通念上、特定の地域を示す名称(例えば旧地名)として一般的に熟知されている名称が含まれる。

■4.地理的表示に関する手続き
 地理的表示の指定は、原則として、産地からの申立てに基づき行われる。ワインについて例示すると、

1.産地のワイン製造業者を主たる構成員とする団体は、生産基準(案)、名称及び産地の範囲について、産地のすべてのワイン製造業者と協議した上で、当該産地の範囲を所轄する国税局長(沖縄国税事務所長を含む)を通じて国税庁長官に、「地理的表示の指定に係る申立書」により、申立てを行う。

2.申立てを受けた国税局長は、産地の範囲(必要に応じて産地の近隣)の酒類製造業者からの意見聴取、現地調査等を行った上で、申立ての内容が指定条件に適合しているか等を確認し国税庁長官に報告する。

3. 国税庁長官は、国税局長からの報告内容及び関係書類を精査した上で、下記を定める。
名称:「山梨」などの保護すべき名称
産地の範囲:産地を明確に線引き
酒類区分:ぶどう酒
生産基準:①産地に主として帰せられる酒類の特性、②酒類の原料および製法、③酒類の特性を維持するための管理、④酒類の品目

4.パブリックコメント等により、広く一般の意見を求める。行政手続法第39条に基づき、少なくとも30日間行う。5.国税庁長官は、一般の意見募集の結果を踏まえ、地理的表示として指定することが適当であると認める場合には、地理的表示の指定を行う。指定に当たっては、地理的表示の名称、産地の範囲及び酒類区分について官報に公告する。また、生産基準については、国税庁ホームページに掲載する。

■5.統一的な表示(2017年10月30日以降に使用する地理的表示から適用)
 消費者が地理的表示制度に基づいた酒類であるかどうか区別できるよう、消費者にわかりやすい統一的な表示ルールとして、酒類の容器または包装に地理的表示を使用する場合は、使用した地理的表示の名称のいずれか1ヶ所以上に
「地理的表示」
「Geographical Indication」
「GI」
の文字を併せて使用する。



■品種
 日本においてワインの原料として使われているブドウは、じつに多岐にわたる。明治時代にワイン造りが始まった頃、欧米から、ワインの原料用ブドウの苗木が日本にもたらされたが、栽培では困難にぶつかった。フィロキセラやその他の病害など、とりわけ欧・中東系品種では深刻だった。
 そのため、政府がワイン造りの振興に力を入れた山梨県では、すでに栽培されている日本固有の品種である甲州からワインが造られた。その後、ワイン造りが発展していくにつれ、ヨーロッパとは異なる気候に適応する品種を求めて、交雑交配による品種の開発も進んだ。とりわけ川上善兵衛は私財を投じて、日本の風土に適した品種の交配育種に努めた。今の日本で、甲州に次ぐ醸造量のマスカットベーリーA(赤では最多)など、彼が開発した品種は、今の日本ワイン造りにおいても重要な位置を占める。近年では、日本ワインを海外への輸出するケースも見られるが、その流れを受け、(独)酒類総合研究所からの申請により2010年には甲州が、13年にはマスカット・ベーリーAがO.I.V.(国際ぶどうぶどう酒機構)のリストにブドウ品種として掲載が認められた。これにより、これらの2つの品種のワインをEUに輸出する際に、品種名をボトルに記載できることになった。日本ワインの原料となっているブドウは以下のとおりに分類できる。

東洋系品種
 日本固有の土着品種や中国原産の品種が含まれる。甲州など。甲州はDNA解析では、ヴィティス・ヴィニフェラとヴィティス・ダヴィーディの遺伝子を引き継ぐことが近年の研究で明らかになった。

欧・中東系品種(Vitis Vinifera ヴィティス・ヴィニフェラ種)
 ヴィティス・ヴィニフェラという言葉は「ワインを造るブドウ」という意味を持つ。最近はこの種に属する品種の種類が増加するとともに、醸造量も増加。日本の気候下では、他の種に比べると比較的病害に弱い。ワイン用ブドウとほぼ同義。専用種と呼ばれることもある。赤ワイン用品種では、メルロが最も多く、カベルネ・ソーヴィニヨン、ツヴァイゲルトの順に多い。また白ワイン用品種では、シャルドネが最も多く、ケルナー、ソーヴィニヨン・ブランと続く。

アメリカ系品種(Vitis Lubrusca ヴィティス・ラブラスカ種)アメリカ系交雑/交配品種
 生食用に使われることが多いが、この種からもワインが造られる。その独特な香りが、「フォクシーフレーバー」「キャンディ香」と称されて、欧米人やワイン愛好家から敬遠されることもある。デラウェア、キャンベル・アーリー、ナイアガラなど。

日本野生ブドウ(Vitis Coignetiae ヴィティス・コワニティ / Vitis Amurensis ヴィティス・アムレンシスなど)
 日本で自生している野生ブドウで山ブドウという総称で呼ばれることも多い。山で自生しているブドウを採取、それを栽培して、ワインも造られている。「ヤマブドウ」はヴィティス・コワニティになる。ヤマブドウ(ヴィティス・コワニティ)は種に相当しており、日本でヤマブドウと称されているものでも、かなりの種類があると思われる。

日本特有の交雑/交配種
 日本の気候に適した品種を求めて開発された。アメリカ系品種、野生ブドウ、そのほか欧中東系品種を交雑したものなどがある。大半が、川上善兵衛が開発したアメリカ系品種を使ったもの。

欧・中東系の交雑品種
 フランスで開発され日本にもたらされた品種。ケルナー、ドルンフェルダーなど、欧中東系品種同志の交配種は、欧中東系品種に含めた。



■甲州

■プロフィール
 やや薄い藤紫色の甲州ブドウは、日本の在来の生食用兼用種。醸造量は最多で、甲州ワインは日本人にとって馴染み深いワインだ。また、山梨県で日本初の本格的ワインが生産されたのもこの甲州ブドウからだった(ただし、赤ワインはヤマブドウから造られた)。

■歴史
①2つの説
 甲州ブドウの来歴については確かな記録が残っていない。一般的に知られるのが「雨宮勘解由(あめみやかげゆ)説」。1186年に、甲斐国、八代郡祝村の(現甲州市勝沼町)の住人、雨宮勘解由が付近の山である「城の平」で山ブドウの変生種を見つけて改良し現在の甲州ブドウの元をつくったという説だ(「甲州葡萄栽培法上巻甲州地方葡萄樹繁殖来歴」福羽逸人(1881))。
一方、これとは別に「大善寺説」が伝わる。718年、僧の行基が西方より到来、甲斐国内を廻った末に柏尾に至り、岩石の上で祈願を続け、21日目に、右手にブドウを持った薬師如来が霊夢となって岩の上に現れた。行基はこの霊夢に従い、薬師如来の姿を刻みこの地に大善寺を建て、ブドウの種を日川流域の原野に蒔き、甲州ブドウの栽培方法を教えたというもの。修復前の形姿では、薬師如来はブドウを持っていなかったが、現在ブドウを左手に載せた状態で祀られている。薬師如来像は平安時代の作と言われ、国重要文化材に指定されている。
 いずれにせよ、2つの説は伝説の域を出ていなかったが、2013年、(独)酒類総合研究所の後藤奈美氏が甲州のDNAを解析し、甲州のルーツを解明した。甲州には欧・中東系品種であるVitis Vinifera ヴィティス・ヴィニフェラのDNAに中国の野生種のDNAが少し含まれていることが明らかになったのだ。野生種とは、Vitis Davidii ヴィティス・ダヴィーディ。このヴィティス・ダヴィーディが甲州の母方の祖母に当たると推定されている(日本ぶどうワイン学会誌、24、109-110(2013))。
 ヴィティス・ダヴィーディは枝に刺のある野生ブドウで、中国では栽培もされ、とげ刺ブドウと称されることもあった。実際、甲州の枝の付け根にも小さなトゲがある。「甲州はカスピ海付近で生まれたヴィニフェラが中国を渡り、おそらく何百年、何千年もかけて野生種と交雑しながら日本に伝わってきたことがDNA解析で示された」とのことになる。

②日本各地への伝搬
 山梨県では1601年頃まで栽培は甲州地方(甲斐国と同義)のみに限定され、約160本の栽植に過ぎなかったという。甲州は年貢の対象で、江戸が開府され甲州街道が整備されると、将軍とお世継ぎに毎年甲斐国からブドウが献上された。江戸時代中期には献上品の残りを名産品として神田市場に卸すことが許可された。
 1620年代には、甲斐の徳本(医師)によって棚作りによる栽培方法が考案され、農民たちに指導、栽培が一気に広がった。元禄時代の「本朝食艦」(1695年)、および「農業全書」(1696年)、および「勝沼町史」によると、当時甲州は、甲州(山梨)のみならず、駿州(静岡)、武州八王子(東京)、また関西では、京師および洛外(京都)にも産地ありと記されている。これらには“紫 "ブドウ、江戸”ブドウ、および“緑“ブドウの名があった。山梨県では、1716年の正徳検地の時点で8.5ha、1841年には上岩崎村だけで15.8haの甲州ブドウが栽培された。大半は江戸の問屋に運ばれていた。

注:岩手県、山形県、長野県、新潟県、大阪府、九州についてはそれぞれの章を参照のこと。

その他
 明治時代には島根県、広島県、徳島県で、大正時代には石川県など、各地で甲州ブドウの栽培が試みられている。島根県は今でも甲州ブドウの大産地で、生産数量では116tで山梨に次ぐ。


■甲州ブドウの特徴
 果皮が比較的厚く、欧・中東系品種に比べて耐病性はある。樹勢は比較的強い。晩生とされているが、収穫時期は9月中旬から10月後半までと幅広い。甲州ブドウの一大産地である甲府盆地でさえ、東部の標高の高い土地、中央部の盆地の底部など、土地によって熟し方は異なる(土地の特徴は山梨の章を参照)。欧・中東系白ワイン用品種に比べて、糖度が上昇しにくく、地理的表示「山梨」を名乗る際の甲州の糖度基準が14度(比重から換算)なのもこうした特徴が背景にある。そのため、大半のワインメーカーが補糖してワインを造る。土地の違いに加えて、ワインメーカーの考えで収穫時期を変更するため、ワインのスタイルも多様。最近では、ブドウ中の匂い物質(チオール系物質)の前駆体の量に注目して、収穫時期を決めるケースもある。その一方、最近では果皮とともに醸し発酵をした、いわゆるオレンジ・ワインの造りを導入する生産者もいる。

■仕立て
 基本的には棚仕立て。大半が「X字型剪定」で、一部「一文字型短梢剪定」も採用。山梨では、晩腐病対策のため傘かけをする生産者も多い。また、山形県では、棚に雨よけをかけている。樹勢が比較的強く、「垣根仕立て」には適さないと言われてきたが、近年、山梨県、大阪府で取り組む生産者がいる。棚仕立てに比べて、収量は激減するが、粒も小さくなり、糖度も上がることが報告されている。その他の仕立てに「ジェノヴァ・ダブル・カーテン(GDC)」がある。

■甲州ワインの産地
 甲州ブドウの生産数量は3,376t。日本でワイン用に使われているブドウの中でもっとも多く、全体の15.1%を占る。これは甲州ワインが日本ワインの中で最多の生産量であるのを示している。

1.山梨県
山梨県の甲州ブドウの生産数量は3,138t。昭和初期の頃まで各地に広まりつつあった甲州だが、現在栽培地は、山梨県に集中している。日本の甲州ワインの93.0%が山梨県産の甲州ブドウで造られている一方、山梨県全体のワイン原料用国産生ブドウの生産数量の47.8%が甲州になる。
 しかし同県の甲州の醸造量は2000年以降激減し、2010年には醸造量が99年の3分の1まで落ち込んだ。その後、若干も持ち直して3,000t前後が醸造量だ。栽培面積は県全体で438.1ha。県内ブドウの全栽培面積では約1割を占めるだけ。なおこの面積には生食用に出荷されている甲州ブドウの畑も含まれている。
 甲州ブドウの発祥の地の甲府盆地東部で集中的にこの品種が栽培されており(2006年関東農政局調べ)、甲州市と笛吹市の栽培面積を加えると山梨県で甲州の栽培面積の半分以上を占める。栽培方法は大半がX字型剪定。
 北杜市の甲州の栽培面積は盆地東部よりはるかに少ないが、同市明野町では、中央葡萄酒が自社管理農園において、2002年より甲州の垣根仕立ての栽培に本格的に取り組む(大半の区画で高前式を採用)。このブドウを使ったワインがロンドンの「デカンタ・ワールドワイン・アワード2014 Decanter World Wine Awards(DWWA)」で、甲州ワインとしてはもちろん、日本ワインとしての初の金賞および地域最高賞を受賞。海外での甲州の注目度も上がった。

2.山形県
 江戸時代から栽培が続く歴史ある産地だが、近年栽培農家は激減し、前述の赤湯では栽培している農家はもはや皆無に近い。赤湯では甲州の酸が高く、収穫を11月初旬まで待つことが多い。積雪量の多いこの地域では、収穫後極めてタイトなスケジュールで降雪前に剪定を終える必要があり、農家にとって栽培の負担が大きい事が畑の減少の背景にある。
 また、庄内地方の西荒屋は甲州の栽培最北の地。樹齢40〜50年の古木の甲州があり、雨よけをかけて棚仕立て栽培している。農家の数は30軒で、緩やかに減少傾向。収穫時期は10月末。2014年の国産ワインコンクール(現日本ワインコンクール)ではこのブドウの甲州ワインが山形県産の甲州ワインとして初の金賞を、さらに17年には、日本で開催されているジャパンワインチャレンジで、金賞よりさらに格上のトロフィーを受賞した。18年の日本ワインコンクールでも山形県産の甲州ワインが金賞を受賞している。

3.その他
 一方で、近年は、今まで前例のなかった土地で甲州の栽培に取り組む動きが国内外で見られる。日本では、長野県東御市や宮崎県都農町、そして大分県安心院町で中小のワイナリーが自社管理農園で一文字型短構剪定の棚仕立てで甲州の栽培に挑戦中だ。また、2019年日本ワインコンクールにおいて島根県の島根ワイナリーの甲州が部門最高賞を受賞した。いずれの甲州も単独で瓶詰めされ、商品化されている。どのケースも収量は山梨県内に比べるとかなり少ない。
 海外では、ドイツのラインガウで2003年より垣根仕立てで試験栽培開始。現在の栽培面積は0.7haに達しており、ワインは日本にも輸入されている。


[品種]


東洋系品種
甲州 Koshu(別項参照)

善光寺 Zenkoji 白ブドウ
栽培地:長野県
2019年度の生産数量は146tで全体の全国の0.8%を占める。甲州に近い。明治時代より長野県の善光寺周辺で栽培されたきたことに名前は由来する。1970年代にはマンズワンインが苗木を配って栽培を奨励。ワインは味わい、香りともニュートラル。竜眼とも呼ばれる。


欧中東系品種
アルバリーニョ Albarino 白ブドウ
栽培地:新潟県、富山県、長野県ほか
香りの豊かさと耐病性が評価され、近年、新潟県、富山県、大分県などで増加中。

カベルネ・フラン Cabernet Franc 黒ブドウ
栽培地:長野県、岩手県ほか
フランスではボルドー系品種の補助品種としてブレンドされることが多かったが、日本では近年単独で仕込まれることが多い。長野県で増加中。

カベルネ・ソーヴィニヨン Cabernet Sauvignon 黒ブドウ
栽培地:長野県、山梨県、山形県ほか
1930年代に本格的な栽培が山梨で始まる。2017年の生産数量は463tで全国の2.0%を占め、第10位。山形県が最多の生産数量で山形県、山梨県、長野県が肉迫。

シャルドネ Chardonnay 白ブドウ
栽培地:長野県、山形県、兵庫県ほか
2019年の生産数量は1,456tで全国の6.5%を占める。白用品種では第3位。欧中東系品種では最も多い。生産数量が最多なのは長野県で山形県、兵庫県が続く。本格的な栽培が始まったのは1980年代。長野県は2000年以降裁培面積が3倍以上になった。仕立ては垣根仕立てが主流だが、一文字型短梢、H字型短梢などの棚仕立てもある。

ゲヴュルツ・トラネール Gewürztraminer 白ブドウ
栽培地:北海道、長野県ほか
ドイツ系品種、日本ではまだ馴染みが薄いが北海道で増加傾向。

レンベルガー Lemberger 黒ブドウ
栽培地:北海道ほか
1970年代に北海道で栽培開始。道外の取組みは皆無に等しい。日本では軽快な赤ワインが造られることが多い。別名ブラウフレンキッシュ。

メルロ Merlot 黒ブドウ
栽培地:長野県、山梨県、山形県、岩県、兵庫県ほか
明治初期に日本に苗木が伝わる。本格的な栽培開始は1980年代以降。増加傾向が続き、北海道から大分まで広く栽培。2019年の生産数量は1,442tで全国の6.5%を占める。赤用品種では第3位。欧中東系品種ではシャルドネに次ぐ。長野が最多で、山梨県、山形県が続く。長野県の塩尻市の桔梗ヶ原はメルロの産地として名高い。棚仕立てが主流だったが、垣根仕立てが増加中。

プティ・マンサン Petit Mansan 白ブドウ
栽培地:栃木県、長野県、山梨県、山形県ほか
フランスのジュランソン、アメリカのバージニア州など夏湿潤な土地でも、高糖度で酸を保ち、耐病性がある品種として注目を浴び、増加中。

プティ・ヴェルド Petit Verdot 黒ブドウ
栽培地:山梨県、長野県、大分県ほか
ボルドー系品種の補助品種としてブレンドされることが多かったが、日本の温暖な気候下でも、着色し酸が残る。山梨以南で増加中。単一で瓶詰めしたワインの評価も急上昇。

ピノ・ブラン Pinot Blanc 白ブドウ
栽培地:北海道、山形県、長野県、京都府ほか
ピノ・グリ同様、ピノ・ワールの突然変異種。北海道で微増傾向。別名ヴァイス・ブルグンダー。

ピノ・グリ Pinot Gris 白ブドウ
栽培地:北海道、長野県ほか
1970年代に北海道で栽培開始。近年、北海道、長野、山形など冷涼な地域で増加。日本ではピノ・グリと呼ばれることが多いが、ピノ・グリージョ、グラウ・ブルグンダーと別名多数あり。

ピノ・ノワール Pinot Noir 黒ブドウ  
栽培地:北海道、長野県、山梨県、青森県ほか
1881年、ドイツから初めてシュペートブルグンダーの苗木が導入。その後の行方は不明。1970年代から本格的な栽培開始。生産数量は219tで気候が冷涼な北海道で激増中、全国の半分以上を占める。赤用品種で11位。垣根仕立てが主流だが、棚仕立てを採用する生産者もいる。

リースリング Riesling 白ブドウ
栽培地:秋田県、北海道、長野県、兵庫県ほか
他のドイツ系品種に比べると晩生のため、積雪のある北海道ではなかなか普及しない。

ソーヴィニョン・ブラン Sauvignon Blanc 白ブドウ
栽培地:長野県、北海道、青森県ほか
2019年度の生産数量は228tで全体の1.0%増加中。白用品種で第6位だが、長野県が約半数を占める。

セミヨン Semillon 白ブドウ
栽培地:長野県、山梨県、広島県ほか
栽培開始は明治初期だが衰退。近年見直す動きがある。広島では貴腐ワインも生産されている。

タナ Tannat 黒ブドウ
栽培地:長野県、栃木県、大分県ほか
比較的降水量が多い気候にも適応するため、近年増加、すでに単独で製品化されている。

ツヴァイゲルト Zweigelt 黒ブドウ
栽培地:北海道、岩手県、新潟県ほか
1970年代に北海道ワインがオーストリアのクロスターノイブルグ修道院から苗木を取り寄せその後普及。2019年度の生産数量は281tで全体の1.3%、赤用品種では第8位。北海道の余市町で栽培が盛ん。

交配品種
バッフス Bacchus 白ブドウ
栽培地:北海道ほか
ドイツ系品種、大半が北海道で栽培。早生。2017年度の生産数量は55t。●(シルヴァーナー×リースリング)×ミュラートゥルガウ

ドルンフェルダー Dronfelder 黒ブドウ
栽培地:北海道、長野県ほか
1956年に登録されたドイツ系品種。豊産型で、北海道と長野で取組みがある。
●ヘルフェンシュタイナー×ヘロルドレーベ

ケルナー Kerner 白ブドウ
栽培地:北海道、長野県、新潟県ほか
1973年にドイツから北海道に苗木を導入。大半が北海道で栽培される北海道の代表的な品種。2019年度の生産数量は374。日本ワイン全体の中では1.7%を占め、白用品種の中で第5位。主に低価格帯の白ワインが造られてきた。辛口、中甘口、極甘口、スパークリングワインとスタイル多様。●スキアーヴァ・グロッサ(トロリンガー)×リースリング

ミュラー・トゥルガウ Múller-Thurgau 白ブドウ
栽培地:北海道、岩手県ほか
本格的な栽培は1970年代から北海道で始まる。現在も大半が北海道で栽培されてきたが、近年栽培面積は激減。2017年度の生産数量は103t、●リースリング×マドレーヌ・ロイアル


アメリカ系品種・アメリカ系交雑/交配品種

アジロンダック Adirondac 黒ブドウ
栽培地:山梨県ほか
1852年アメリカで交配育種された生食用品種。アメリカ系品種香が強い。第2次世界大戦直後まで甘味果実酒原酒用に山梨県で大量に栽培。今は激減。

キャンベル・アーリー Cambell Early 黒ブドウ
栽培地:北海道、岩手県、宮崎県、秋田県ほか
アメリカで交配育種され、1897年に川上善兵衛が日本に導入。生食用兼用品種。2019年度の生産数量は1,402t。日本ワイン全体の中では6.3%で第4位。中甘口のロゼ、スパークリング、甘ロの赤などがある。●ムーア・アーリー×(ベルビデレ×マスカット・ハンブルグ)

Concord コンコード 黒ブドウ 
栽培地:長野県
明治初期にアメリカから伝来した生食用兼用品種。2019年度の生産数量は1,530t。全国では6.8%を占め第2位。アメリカのマサチューセッツ州のコンコードで栽培が始まったと伝わる。甘味果実酒の原料でもあった。中甘口の軽快な赤ワインから極甘口のワインまである。

デラウェア Delaware 白ブドウ
栽培地:山梨県、山形県、大阪府など
果皮は赤みがかかった灰色。明治初期、アメリカから伝来し山梨県で栽培開始。生食用兼用。アメリカのオハイオ州のデラウェア原産。2017年度の生産数量は1,566t。全国では6.7%で第5位。白用品種では第3位。県別で最多は山形県で808tで次いで山梨県。近年、山形県ではワイン用を想定し種ありの栽培ケースが増加。スパークリングワインが急増中。

ナイアガラ Niagara 白ブドウ
栽培地:長野県、北海道、山形県ほか
アメリカのナイアガラで交配。明治時代に日本に伝来。2019年度の生産数量は2,677t。日本ワイン全体では12.0%で第3位。白用品種で第2位。県別で最多が北海道で1,186tで長野県が続く。アメリカ系品種特有香が強い。中甘口のワイン、スパークリングワインが多い。


日本の交雑/交配品種

アメリカ品種系
ベーリー・アリカントA Bailey Alicante A 黒ブドウ
栽培地:新潟県、山梨県
川上善兵衛が開発し、1929年に品種登録した赤ワイン用品種。果肉が赤く、着色用にブレンドされることが多い。●ベーリー×アリカント・ブスケ

ブラック・クイーン Black Queen 黒ブドウ
栽培地:長野県、山形県、新潟県、岩手県ほか
1927年川上善兵衛が開発。用途がワイン用のみのために栽培面積はさほど多くない。タンニンが穏やかで酸が豊かなワインに仕上がる。2019年度の生産数量は358t、日本ワイン全体では1.6%。赤用品種の中では第6位。●ベーリー×ゴールデン・クイーン

甲斐ノワール Kai Noir 黒ブドウ
栽培地:山梨県
山梨県果樹試験場が開発し1992年に登録。糖度は上がりやすく着色良好。ピーマン香が特徴的なワインに仕上がることが多い。●ブラック・クイーン×カベルネ・ソーヴィニヨン

巨峰 Kyoho 黒ブドウ
栽培地:長野県、山梨県、福岡県ほか
1937年、大井上康氏が交配した生食用ブドウ。2019年度の生産数量は358t。日本ワインでは1.6%で、赤用品種の中で第7位。県別では最多が山梨県で長野が次ぐ。ワインは中甘口〜甘口が多い。●キャンベル・アーリーの4倍体化品種石原早生×センテニアル

マスカット・ベーリーA Muscat Bailey A 黒ブドウ
栽培地:山梨県、山形県、長野県、新潟県、岡山県、宮崎県ほか
1927年、川上善兵衛が開発して登録。生食用兼用種。2019年度の生産数量は3,192t。日本ワイン全体の中では14.3%で甲州に次ぎ第2位。赤用品種では最多。県別では山梨県が最多で1,773tで全国の55.5%を占める。赤ワイン、ロゼ、スパークリングワインなどスタイルは多様。渋味が穏やか。仕立ては棚仕立てが主流。●ベーリー×マスカット・ハンブルグ

レッド・ミルレンニューム Red Millennium 白ブドウ
栽培地:新潟県ほか
1933年、川上善兵衛が開発し品種登録。生食用兼用種。香りが華やかなワインに仕上がり、最近評価が上がっている。●未詳1号×ミルレンニューム

サン・セミヨン Sun Semillon 白ブドウ
栽培地:山梨県、長野県ほか
山梨県果樹試験場が白ワイン用品種として開発。2002年に登録。香り豊かだが褐変化しやすい。●笛吹(ミルズ×アンジェロ・ピロヴァーノ)×セミヨン(グロー・セミヨン)

野生ブドウ系
ふらの2号 Furano 2gou  黒ブドウ
栽培地:北海道
北海道で1985年に交配育種された。耐寒性にすぐれ、日本では極めて珍しいアイスワインが造られている。●ヴィティス・アムレンシス×セイベル

小公子 Shokoshi 黒ブドウ
栽培地:島根県、秋田県、山梨県、大分県、広島県ほか
育種家で日本葡萄愛好会の澤登晴雄氏が開発。ヒマラヤヤマブドウやロシアや日本の野生ブドウの流れを引くという説があるが定かではない。ヤマブドウのような極めて小さい粒でバラ房。野趣ある香りと豊かな酸が特徴的。近年アイテムが増加。交配不明。

山幸 Yamasachi 黒ブドウ
栽培地:北海道
北海道で開発され、2006年に登録された。耐寒性にすぐれており、厳寒の十勝平野でも越冬が可能。色合いも濃く、酸も豊か。●ヤマブドウ×清見

ヤマ・ソービニオン Yama Sauvignon 黒ブドウ
栽培地:石川県、山形県、長野県、北海道ほか
1990年、山梨大学の山川祥秀氏が開発し、登録。山梨以北で主に栽培。カベルネ・ソーヴィニ
ヨンほどタンニンはないが酸が豊か。2019年度の生産数量は256t。日本ワイン全体では1.1%で、赤用品種で第9位。●ヤマブドウ×カベルネソーヴィニヨン


欧中東系品種など

ビジュ・ノワール Bijou Noir 黒ブドウ
栽培地:山梨県ほか
山梨県果樹試験場が開発し、2006年に品種登録。温暖な地域でも着色良好で糖度も上がり、熟期も早い。メルロやカベルネ・ソーヴィニヨンに比べて酸が穏やかだが、色濃く、タンニンは豊か。●山梨27号(甲州三尺×メルロ)×マルベック

アルモ・ノワール Harmo Noir 黒ブドウ
栽培地:北海道、山梨県ほか
山梨県果樹試験場が開発し、2009年に品種登録。冷涼な気候に適する。熟期はメルロとカベルネ・ソーヴィニヨンの間。タンニンが豊かで、ビジュ・ノワールより軽やかなスタイルに仕上がる。●カベルネ・ソーヴィニヨン×ツヴァイゲルト 

甲斐ブラン Kai Blanc 白ブドウ
栽培地:山梨県ほか
1992年に山梨県果樹試験場で開発、甲斐ノワールと同時に登録。糖度は比較的上がりやすい。●甲州×ピノ・ブラン

リースリング・リオン Riesling Lion 白ブドウ
栽培地:岩手県、栃木県ほか
サントリーが開発し、1975年に登録。リースリングより早生。柑橘系ですっきりしたワインができる。沖縄サミットの乾杯にこの品種のスパークリングワインが使われた。2019年度の生産数量は88tで大半が岩手県で栽培。●甲州三尺×リースリング

信濃リースリング Shinano Riesling 白ブドウ
栽培地:長野県、静岡県、兵庫県ほか
温暖な地方では栽培が困難とされるリースリングに代わる品種として、マンズワインが開発し、1992年に登録。シャルドネの栽培のしやすさとリースリングの芳香性を生かす狙いで交配。リースリングにも通じる華やかなアロマが特徴的。●シャルドネ×リースリング


日本野生ブドウ

ヤマブドウ Yamabudo 黒ブドウ
栽培地:岩手県、長野県、北海道ほか
学名はヴィティス・コワニティ。北海道、東北地方、中部以南に生息。雌雄異木。粒が小さく、色濃く極めて酸が高い。国内ではほかにサンカクヅル、エビヅル(別種)などの野生ブドウが自生。


欧中東系の交雑品種

セイベル9110 Seibel 9110 白ブドウ
栽培地:山形県、長野県、新潟県、北海道ほか
フランスのセイベル博士が欧中東系品種とアメリカ系品種を交雑した品種の総称で育種番号で区別。比較的冷涼な気候を好む。2019年度の生産数量は151t。全国の0.7%。

セイベル13053 Seibel 13053 黒ブドウ
栽培地:北海道、長野県ほか
耐寒性、耐病性にすぐれ、収量も安定。最近は減少傾向。清見はこの13053をクローン選抜したもの。




■日本の仕立て法
 日本では、さまざまな仕立て法が採用されている。大きくは棚仕立てと垣根仕立てに二分されるが、棚仕立ての中には日本特有のものも多い。垣根仕立ては世界中で広く採用されている仕立て法で、長梢剪定と短梢剪定がある。

棚仕立て
 温暖で高湿度という日本の気候条件のもと、主に生食用(アメリカ系品種)を育てることを目的に、江戸時代から日本中で採用され続けてきた仕立て法。長梢(5〜15芽残して長く切る)に仕立てる方法と短梢(2〜4芽残して短く切る)に仕立てる方法がある。
 甲州やマスカットベーリーAについては、この仕立てで栽培されることが多かった。

1. X字型剪定
 長梢に剪定したもの。日本の伝統的な仕立て法。「X」という文字を意識しながら、樹を仕立ててかたちづくっていく。また枝の伸びる勢いを考慮しながら、枝を配置。剪定など管理に熟練を要し、成木になるまでに時間がかかるが、枝の配置の自由度が高く、樹勢をコントロールしやすい。実際にはX字にはならず、自然な配置になっている場合が多い。

2.一文字型短梢剪定
 棚仕立てで短消に剪定したもの。水平方向に一文字に太い枝を配置する。新梢や房の管理作業が直線的になり、作業効率が高い。密植も可能。日本国内ではこの仕立て法を採用する栽培家が増えている。欧州系品種であるシャルドネやメルロにも採用されている。

3. H字型短梢剪定
 棚仕立てで短梢に剪定したもの。水平方向に左右に2列、H字の形に枝を配置する。一文字短梢と同様に管理作業がシンプルで、作業効率が高い。九州で1990年代以降拓かれたブドウ園ではこの仕立て法が採用されており、2列の枝の上にポリエチレンをかけて雨よけをしているケースが多い。

4.その他
 長野県塩尻市では、スマート・マイヨーガー仕立てを応用した、改良スマート仕立ての導入が進みつつある。

栽培方法の変化
 日本では棚仕立てが主流ではあるが、垣根仕立てが増 加傾向にあり全体の30.3%を占めるまでになった。
 棚仕立ての生産量上位5種はナイアガラ、甲州、マスカッ ト・ベーリーA、コンコード、キャンベル・アーリー。垣根仕立てはシャルドネ、メルロ、ケルナー、ツヴァイゲルト、カベルネ・ソーヴィニヨンとなる。


ワインの産地と特徴


北海道

■プロフィール
 北海道は、日本のワイン造りにおいて、長野県と並ぶ活気のある土地である。2000年以降設立されたワイナリー数は30軒を超え、現在のワイナリー数は42軒になった。08年以降は、毎年ワイナリーが設立され続けており、今後もこの傾向は続くと予想される。背景には、本州に比べてまとまった土地が格段に安く入手しやすいことが指摘できる。ちなみにこうしたワイナリーの大半が、年間生産量が13万本以下の家族経営の小規模ワイナリーであり、現在までワイナリーの設立は空知(そらち)地方と後志(しりべし)地方に集中していた。しかし近年、上川地方の富良野一帯など、2つの地方以外にもワイナリー設立の動きが広がっている。また、この2、3年は、広告業者、珈琲販売会社など異業種の企業による比較的規模の大きい開園やワイナリーの設立も見られる。さらに2018年には、フランスのブルゴーニュのドメーヌがワイナリー設立計画(函館ワインプロジェクト)を発表し、また2019年には大手ワインメーカーが20haの自社農園を開園するなど函館も注目を集めている。
 北海道のワインは、欧・中東系品種(ヴィティス・ヴィニフェラ種)のワインが多い。これらの品種は、ワイナリーおよび栽培農家によって栽培されており、日本では異例の欧中東系品種専業のブドウ栽培農家が数人いるのも特徴的だ(言い換えれば、北海道ではワイン用ブドウの栽培のみで生計が立つ)。また道内の小規模ワイナリーの自社畑率は、本州に比べて高く、原料ブドウがすべて自社畑産だという、フランスでいう「ドメーヌ」型ワイナリーも本州に比べると多い。北海道のワイン造りは、日本の中では、よりブドウ栽培に根ざしているのである。また、2012年、日本初の委託醸造を目的としたワイナリーが設立され、委託醸造によるワイン造りを継続的に続けているブドウ園、農家が増えつつあるのも指摘できる。
 また2018年には、国税庁が「北海道」を地理的表示として指定した。

■歴史
1.明治〜第二次世界大戦
 じつは北海道でワイン造りの息吹が芽生えたのは、日本でも有数の早さである。そしてその取り組み自体も、ブドウ栽培から手掛けるというものだった。殖産興業という視点から、ワイン造りは開拓使にとって重要なものだったのだ。北海道で 初めてワインが造られたのは1876年。山梨県において日本のワイン造りが始まったのとさほど変わらない。札幌に設立された「開拓使麦酒醸造所」の一画にあった「開拓使葡萄酒醸造所」において、ヤマブドウ(ヴィティス・コワニティ)で8石(1,443kℓ)のワインが醸造されたのが始まりになる。翌77年には同じ醸造所でアメリカ系品種を使ってワインが造られた。一方、75年の札幌ブドウ園の開園を端緒に、ブドウ園の拡大は続き、開拓使末期(82年)には、札幌一帯のブドウ栽培の総面積は100haを超えていた。(「新撰北海道史」)。またこの前年には、開拓使の顧問をしていたルイス・ベーマーによってピノ・ノワール、ピノ・ブラン、ゲヴュルツ・トラミネールなど欧・中東系品種17品種が日本に持ち込まれていたことが記録に残る。

2.戦後〜1990年代
 しかしその後北海道のワイン造りは半世紀以上にわたって中断、その沈黙が破られたのが1960年代のことだ。63年には十勝地方にある池田町の町長、丸谷金保によって、地域に自生している山ブドウ(日本で自生しているブドウ、野生ブドウ)を使ってワイン造りが行われた。さらに70年代には、ワイン造りのために、「道立中央農業試験場」(現在の地方独立行政法人北海道立総合研究機構農業研究本部中央農業試験場)や北海道ワインによって、40種類以上の欧中東系品種が次々と輸入されだした。そして79年、北海道ワインがミュラートゥルガウの収穫にようやく漕ぎ着けて、ワインが造られる。
 こうして明治以来、70年の時を経て、欧・中東系品種のワイン造りが再開する。81年さらに前述の試験場は、推奨品種として、ミュラー・トゥルガウ、ツヴァイゲルト・レーベ、セイベル13053、セイベル5279を選出している。84年には、余市町でも本格的な栽培が始まり、ここに北海道ひいては日本のワイン造りを支える一大欧・中東系品種の産地の基盤が出来上がっていく。時が前後するが、82年には余市の農家にピノ・ノワールの苗木が配られ、これらのブドウを選抜したものが、今も北海道で栽培し続けられている。


3.2000年代〜
 2000年以降、新たな動きが生まれた。日本ワインブームの追い風を受けて、各地でワイナリーが設立され出したのだ。2008年には、南西部側に浮かぶ奥尻島にワイナリーが誕生。また、後志地方余市町では、10年までワイナリーが1軒あるのみだったが、同年のドメーヌ・タカヒコの設立以降、毎年のようにワイナリーが設立される。それと平行して、ワイン用ブドウ畑の開園も続いている。町でもワイナリー設立を目指して新規就農する生産者を積極的に支援している。流れは、同じ余市平野に位置し、隣接する仁木町にまで波及し、同町でも10ha以上の自社農園を持つワイナリーが設立された。空知地方の動きも活発だ。12年には、同地方の岩見沢市に委託醸造(カスタムクラッシュ)を主たる目的としたワイナリーがアメリカ人のブルース・ガットラヴによって設立。同地方のみならず、道内全城の栽培農家がここで経験を積み、巣立っていくようになっている。道南でも新たな動きが見られる。12年に3軒目のワイナリーが設立されていたが、19年、ブルゴーニュのドメーヌと国内大手のワインメーカーが相次いでヴィンヤードを開園、話題を集めている。
 こうした動きに対して北海道庁は、道産ワインブランドカ強化事業としてワイン塾を開催するなど、道内のワイン産業の推進を図っている。

■気候風土
 北海道の面積は、約83.457㎢で東京都の39.7倍、オーストリア一国に匹敵する。北端のブドウ栽培地の名寄市と南端の栽培地である道南地方の北斗市の距離は296km、対して山梨県のブドウ栽培地の西端と東端の北杜市明野町と甲州市勝沼町では27kmに過ぎず、北海道の広大さがわかる。つまり一都道府県でありながらワイン造りも一言で語るのは難しい。
 北海道は北東をオホーツク海、東側を太平洋、西側を日本海に囲まれているひし形のような島だ。中央部には西側の天塩山地から夕張山地の列と東側の北見山地から日高山脈の列のふたつの山並みが走っている。    
 このふたつの列に対応して地質構造は西部、中央部、東部の3つに区分けできる。じつは北海道は4000年前、東部と中西部が合体してできあがった。ワイン用ブドウが栽培されている空知地方の大半と後志地方は、天塩山地から夕張山地の西側の西部に含まれる。例えば余市町は第四紀更新世、完新世の海中で形成された堆積岩類や新第三紀中新世の火山岩類(安山岩や玄武岩類)が多い。また十勝地方はほぼ東部に含まれている。地質は複雑に入り組んでいるが、中生代の地層に一部蛇紋岩が貫入している。土壌は火山性、泥炭土、そして水はけの悪い重粘土といわれる灰色台地土が多いが、生産産者たちは草生栽培をするなど、水はけの改善に努めている。余市町は細粒褐色森林土が主体。
 山脈と周囲を流れる対馬海流(暖流)、津軽海流(暖流)、そして親潮とも呼ばれる千島海流(寒流)は、北海道の気候に少なからず影響を与えている。気温、降水量、日照時間には地域差があるが、山地の西側は東側に比べて、冬季の冷え込みが穏やかになる傾向がある。世界的な視点からすると北半球の中緯度に位置する割には冬の平均気温は極めて低く、大部分は冷帯多雨気候に属している。これは大陸の寒冷な高気圧から吹き出す北西の季節風の影響に由来する。冬は寒さが厳しく、日本海側(西側)では積雪もあり、春の訪れは遅いが、低湿でからっとしている。梅雨もなく、台風が襲来することも稀だ。
 4〜10月の平均気温(主要栽培地の近くのアメダスの観測地点のデータを使用)は12.8〜14.6℃で日本のワイン用ブドウ栽培地の中では最も低く、その値はフランス北部のランス、ドイツのラインガウとほぼ同じ。池田町、富良野市、空知地方の岩見沢市、三笠市、浦白町が内陸性気候、後志地方の余市湾に面した余市町、画館湾に面した北斗市が海洋性気候である。

■ワイン生産量
 国税庁のデータによると日本ワインの年間生産量は3,294kℓ、750mℓ換算で約439万本。山梨県、長野県に次いで第3位で日本全体の18.5%を占める。2019年の北海道産のワイン用ブドウの生産数量は4,350t。そのうち北海道内で使用されたブドウの量(ほぼ醸造されたと考えられる)が3,982tだ。日本ワインの原料としての醸造量ではナイアガラとキャンベル・アーリーが、それぞれ1,186tと921tで、他の品種に比べベて桁違いに多い。気候変動による生産量の変化が比較的大きいのも北海道の特徴である。

■主要ブドウ品種
 他の日本各地のワイン生産地と同様に、ワイン用ブドウ品種、生食用ブドウ品種、欧・中東系品種とヤマブドウ系の交雑種、そしてワイン用ブドウと生食用ブドウの交雑種からワインが造られている。
 冷涼な気候を反映してドイツ系の白用品種が多い。生産数量は白用品種が44.2%、赤用品種が35.1%で圧倒的に白用品種が多い。受入数量が最多なのが生食用品種であるナイアガラで1,186t。次いで赤用品種であるキャンベル・アーリーが921tで続く。ほかの白用品種は、ケルナー、ポートランド、ミュラー・トゥルガウ、バッカスが挙がる。ドイツ系品種であるケルナーとミュラー・トゥルガウ、バッカスは日本における全醸造量の大半を北海道が占める。その他の赤用品種はツヴァイゲルト、ロンドン、山幸(やまさち)、ピノ ・ノワールが挙げられる。
 北海道特有の品種としては、赤用品種の山幸と清舞(きよまい)がある。池田町ぶどう,ぶどう酒研究所が、寒冷地においても栽培可能な品種を求めて、1978年に山ブドウと清見(きよみ/セイベル13053のクローン選抜)を交配して開発した。山幸は2020年にO.I.V.に登録された。
 現在はまだ栽培面積が小さいが空知地方や余市町を中心に、急速に増加しているのがピノ・ノワール。ピノ・ノワールの受入数量はすでに105tを超え、日本のピノ・ノワールの半分以上を占める。シャルドネやソーヴィニヨン・ブランも増加中。昨今の気候変動からもこれらの品種はいずれもさらに増加する見込み。

■主なワイン産地
 北海道庁の「ぶどう用途別仕向実績調査」によると、北海道の2018年のワイン用ブドウの面積は355ha。これは全道の食用を含むブドウ栽培面積の44%を占め、他の都府県よりも高い比率となっている。ワイン用ブドウの栽培の中心は、空知地方と後志(しりべし)地方であり、いずれも栽培面積は100haを前後。空知地方のワイン用ブドウの栽培面積は95.4ha、収獲量は211.0t。一方後志地方の栽培面積は137.2haで収穫量は655.4tになる(いずれも2018年)。
 石狩平野の端に位置する空知地方は、一般的に丘陵地帯でブドウが栽培されている。ワイン用ブドウの栽培面積、収穫量のいずれも後志地方を追っている。空知地方では、100haを超える日本最大のブドウ園がある浦白町、ブドウ園の開園やワイナリーの設立が活発な岩見沢市と隣接する三笠市で、主にワイン用ブドウが育てられている。岩見沢と三笠は一括りにして捉えられる。ここに初めてワイナリーが設立されたのが2002年で、以降、続々とワイナリーが設立されている。そのうちの1軒が冒頭でも記した、アメリカ人設立の日本初の委託醸造ワイナリーで、空知のみならず、北海道の生産者たちに大きな影響を与えている。品種は、ケルナーは減少傾向で、ピノ・ノワール、ソーヴィニヨン・ブランが増加傾向。
 一方の後志地方も、空知地方と並び、北海道の欧中東系品種(ワイン用ブドウとほぼ同義)の一大産地。2013年度にワイン用ブドウの栽培面積で空知地方を抜き、後志地方が栽培面積、収穫量ともに道内1位だ。
 後志地方のワイン用ブドウの栽培面積の大半を占めるのが余市平野に位置する余市町で、約30年前に欧・中東系品種の本格的なブドウ栽培が始まった。余市湾を望む丘陵地帯が、道内随一のブドウ産地となっている。同町のワイン用ブドウの栽培面積は急激な増加傾向にあり現在約151ha(2019年)。2000年の時点ではワイナリーが1軒あるのみだったが、10年の個人経営のドメーヌ型ワイナリー設立、11年に余市町がワイン特区の認定にも後押しされ、にわかにワイナリーの設立が活発化し、ワイナリー数は今や20軒に迫る勢いだ。直近では、全国展開をする珈琲の販売会社(カルディ)が著名イタリア人コンサルタントの協力を得て、最新の15万本規模のワイナリーを設立した。


東北

岩手県
■プロフィール
 岩手県は北東北に位置しており、気候は日本各地のブドウ栽培地の中では冷涼。とりわけ沿岸部の宮古以北はやませの影響を受けて、冷害などの気象災害に悩まされてきており、内陸部の一部を除き、果樹栽培が盛んだったとは言い難い。しかし同県では、じつは明治以前に野山に自生していたヤマブドウを発酵させて酒として飲むことが暮らしの知恵として続いていた(「村田柴太が語るエーデルワイン物語」)。手作りのワイン造りが長年にわたって続いてきた土地といえるのだ。
 1960年代、県内では比較的温暖な北上川流域の北上盆地にある花巻市大迫町でワイナリーが設立され、本格的なワイン造りが始まった。しかしその後はヤマブドウを使ったワイナリーが県北で設立されたのみだった。そして、2000年代になって、内陸部にワイナリーが設立されたが、大きな動きには至らず、ワイン産業が活性化し始めたのは、2011年の東日本大震災以降のことだった。
 ワイナリー数は11軒になる。また今後のワイナリー設立を目指してすでにブドウ栽培に着手している者や委託醸造でワインを造っている者もいる。
 岩手県で特徴的なのは、ヤマブドウを活かしたワイン造りの流れである。これに新たにワインを造ることを目指して欧州系品種の栽培に取り組む動きが沿岸部で生まれつつある。温暖化の影響もあり、新たな品種への取組みの結果が期待できる。

■歴史
1.明治以前〜第二次世界大戦
 岩手県では明治以前から、野山で自生しているヤマブドウを収穫して、甕(かめ)に仕込んで保存して、滋養のある飲み物として重用した。生ブドウ酒を室に貯えていた農家も多かった。戦争末期、政府は酒石酸の確保のために、全国の農家にブドウ酒づくりを奨励したが、県内農家の中にも酒造免許を取得したものがいた。(「村田柴太が語るエーデルワイン物語」)。

2.戦後〜2000年代
 本格的なワイン造りの歴史は、比較的新しい。戦後、農業構造改善事業の一環で北上川流域の花巻市や紫波町の中山間地を活かした農業として、ブドウ栽培が注力されるようになった。花巻市では、1947年、48年、キャサリン、アイオン台風によって基幹作物だった稲や葉タバコが甚大な被害を受け、これを機に新たな産物を求めて、初代民選の国分謙吉県知事が「北上山地一番がフランスのボルドー地方と似ている」という説のもと、ブドウ栽培を奨励した。当初は既存のリンゴに加えて、コンコード、アジロンダック、ナイアガラなどのアメリカ系の生食用ブドウが主に導入されたが、キャンベル・アーリーやデラウェア、ナイアガラに淘汰されたようだ。
 50年には、栽培試験や農家への栽培指導を行うために、国内初のブドウ試験場である「岩手県園芸試験場大迫試験場(通称ぶどう試験地)」が創設された。同試験場は、昭和30から50年代は、秋田や青森の生産を含め、北東北一番の指導に務め、58年には同町のブドウ栽培面積は100haを超えた。一方、紫波町では「赤沢果樹生産組合」が開発の中心だった。現在両市町とも県内では有数の生食用ブドウの産地である(ただし昨今になってブドウ園の面積は約50haまで半減してしまった)。
 県内初の本格的なワイナリーは、こうしたブドウの規格外品を加工する工場として大迫町(現花巻市大迫町)に62年に設立。大手メーカーの甘味果実酒の原料供給地としての役割を果たしていた時期もあったが、ワイナリーから改革の機運が高まり、ワイン造りを目的としたブドウ品種の検討そして栽培が始まった。こうして選抜されたリースリング・リオン(日本で開発された交配種)によって、それまでとはまったく異なるスタイルのワインが造られるようになった。そして現在は、この品種が県を代表する品種となっている。86年、県北の葛巻町では、地域おこしを目指して、野山で自生していたヤマブドウを原料としたワイン造りを、高橋吟太郎町長自らが推進し林業構造改善事業を導入した。町職員を国立市の日本ブドウ愛好会に派遣して、ブドウ栽培を学び、88年には第3セクターのワイナリーが設立された。

3.2000年代〜
 2001年、岩手県で初めてワイン造りを夢見た個人が立ち上げたワイナリーが登場する。花巻市のワイナリーの取締役が、自ら育てたワイン用ブドウでワインを造り始めたのだ。このワイナリーは、近年急増中のワインとシードルの両方を造るという形態をとる。
 紫波町では、05年に町内のブドウ生産者の声を受けて、「自園自醸」を調ったワイナリーが設立された。自分でブドウを育てて、自分で醸造するという考えは広く支持され、特に東日本大震災以降、地元を復興させようという機運ともあいまって、陸前高田市、大船渡町など沿岸部、遠野市で、ワイン造りを念頭にいれたブドウ栽培が始まっている。15年には、陸前高田市のブドウ園が、ワイナリー設立に遭ぎつけた。今後もこうした動きは続く見込みだ(後述)。
 一方で葛巻町にヤマブドウのワイン造りを調うワイナリーができたことで、このワイナリーに委託してワインを造るケースも増えている。16年野田村にはこうしたプロセスを経てワイナリーが設立された。

■気候風土
 岩手県は本州北東部に位置し、面積は15,275㎢。南北は約189kmで、南北にやや長い楕円の形をしている。面積は北海道に次いで広く、埼玉県、千葉県、東京都、神奈川県の合計面積を上回る。東側には太平洋、西側には秋田県との県境として南北に走る奥羽山脈がある。また奥羽山脈と平行して東部にはもっとも高い標高でも2,000m以下の北上高地が広がる。内陸部の大半は山岳丘陵地帯で占められている。また沿岸部の宮古以南は、日本でも代表的なリアス式海岸が続く。 
 ちなみに北上山地の地質は、国内でもかなり珍しく、古生代から中世代の堆積岩(砂岩、粘板岩、石灰岩など)および、花崗岩から構成されている。
 気象特性は、北上川沿いの北上盆地は盆地気候で、全般的に冬の寒さは厳しく、夏は暑い、そして雨量は県内の他の地域に比べると少ない。県北地域も比較的雨量が少ないが、冬の寒さはさらに厳しい。沿岸南部は、海洋性の気候でやや温暖だが、降水量は多め。宮古市以北では、寒流の影響を受け、全般的に気温が低く、年によってはやませの被害も出る。
 ブドウ栽培地のある県北の葛巻、沿岸部の大船渡、北上川流域の花巻市大迫町と紫波町のアメダス観測地点のデータでは、4月から10月のブドウの生育期間の平均気温は、15.0〜16.5℃で山形よりやや冷涼。

■ワインの生産量
 国税庁のデータによると日本ワインの年間生産量は585kℓ、750mℓ換算で約78万本だが、年による変動が大きい。国内で5番目に多い生産量となっているが、日本全体では約3.3%にすぎない。岩手県のワイン用生ブドウの生産数量は569t。そのうち岩手県内で使用されたブドウの量(醸造量とほぼ同じ)512t。そのう岩手県内だ使用されたブドウの量(醸造量とほぼ同じ)439tで85.7%。醸造量では、キャンベル・アーリー、リースリング・リオン、ナイアガラが多い。

■主要ブドウ品種
 岩手県においても、他県同様にワイン用ブドウ品種、生食用品種、交雑種からワインが造られている。ワイン用ブドウ品種ではリースリング・リオンが多く、生産数量は81tで県内の15.8%を占め、キャンベル・アーリーに次ぐ。それだけではなく、日本第一位の生産数量で、日本全体の92%が岩手県で栽培されている。生食用品種ではキャンベル・アーリーとナイアガラが挙げられ、その生産数量は、それぞれ167t(32.7%)、74t(14.4%)になる。前者のキャンベル・アーリーは、北海道、宮崎とともに3大産地のひとつになる。岩手県の場合、ヤマブドウがワインの主要原料として重要で、生産数量は84tで県全体の16.5%、赤用品種ではキャンベル・アーリーに次いで2番めに多い。また日本全体の34%を占めている。
 県内で醸造されているワインの原料としては、前述の品種に加えて、メルロ、ツヴァイゲルト、ロースラーが挙げられる。
 また岩手県では、各地の愛好家が山で採取した優良系の母樹を選抜し、代表的な系統が定まっている。それらは選抜者や産地の名前で呼ばれているが、県の林業試験場でも選抜によって、「涼紫1〜5号」として5系統を種苗登録している。

■主なワイン産地
 岩手県でワイン造りが行われているのは、県央から県南にかけての北上川流域と県北地域、そして沿岸部南部の3つになる。
 北上川流域は、前述のように岩手県内の中では雨量が少なく気候にも恵まれており、1950年代から続くブドウ栽培が盛んなエリアになる。県内で半数のワイナリーがあり、とりわけ花巻市にワイナリーが集中している。リースリング・リオンの栽培が盛んだが、ここのツヴァイゲルトのワインは、原産国、オーストリアのコンクールで最高賞を獲得している。石灰岩という日本では稀有(けう)な地質であることに着目して、リースリングに取り組むワイナリーもある。さらに2017年には磐井郡平泉町と遠野市にそれぞれワイナリーが設立された。いずれも今までワイン造りの前例がなかった土地になる。
 県北では、やや寒さが厳しいこともあり、長年にわたり、葛巻町に1軒のワイナリーがあるのみだったが、16年、隣接する野田村にワイナリーが設立された。いずれもヤマブドウによるワイン造りが中心だ。
 宮古以南の沿岸部周辺では、1軒もワイナリーがなかったが、震災前より営みを続けていた陸前高田市のブドウ園が、津波をかぶるという被災の苦難を乗り越えて、ワイナリーをスタートさせた。栽培品種についても欧・中東系のケルナーやアルバリーニョに挑戦中。ワイナリーの設立を視野にワイン用ブドウの栽培を始めたケースは他にもある。今までの実績はなく、可能性は未知数だが、今後の動きは注目すべきだ。
 また岩手県は17年に、ワイン産業を軸とした中山間地の活性化を図るため、いわてワインヒルズ推進協議会を設立した。今後は民間事業者や各市町村と連携をとりつつ、ワイン用ブドウの生産の振興やワイン生産者の育成を行うなど、ワイン生産基盤の安定強化を進めるほか、県内産ワインのPRに務める。

山形県

■プロフィール
 山形県の内陸部は、気候、土壌など、農業からみて比較的恵まれた条件にあり、古くから果樹栽培が盛んである。時代が前後するが、その中でもブドウ栽培は重要な位置を占めてきており、ワイン醸造も、山梨県に遅れることわずか10数年の明治中期には始まった。その後、1953年から70年にかけては、大手メーカーが甘味果実酒の原料供給地として、同県に注目し、工場が相次いで建てられた。しかし、皮肉なことに、1973年以降、世の中が本格的な辛口のワイン造りへと転換する頃には、大手は撤退し、工場は廃業となる(ちなみに辛口ワインが甘味果実酒を抜いたのは1975年になる)。
 2000年以降、北海道と長野県にワイナリーが次々と設立されるのに対して、山形県においては、この間、わずか5軒のワイナリーが設立されたのみ。ワイナリー数は国税庁のデータでは、17軒で、北海道や長野県の数の半分以下。しかし、ここ数年、日本のワイン産業の活性化の影響が出始めている。16年に上山市と南陽市がそれぞれ「かみのやまワイン特区」と「ぶどうの里なんよう」に、指定されて、ワイン造りとワイン用ブドウ栽培が俄に活況を呈してきている。

■歴史
1.明治〜第二次世界大戦
 山形県のワイン造りは明治中期に始まっている。1873年には、殖産興業の一環として県の官業畑が高畠町に開かれて、欧・中東系品種、アメリカ系品種のブドウの栽培が始まった。77年には、なんとジンファンデルやシャスラード(シャスラのことだと思われる)などの試験栽培までもが実施されたという。さらに山形随一の伝統的なブドウ産地である赤湯町では、87年に酒井爾惣(やそう)、石岡喜十郎、神保米吉ら3人が、コンコード、スイードリンク、ニギリの棚栽培を始めた(「山形の果樹産地」)。酒井は赤湯町長も務めた進取の気質に富む人物で、山形県においてイギリス人のチャールズ・ヘンリー・ダラスが牛肉と相性の良い酒を求めていると聞き、1892年より、ワイン造りを開始した(酒井家談)。ただしその時の品種についての記録は残っていない。ダラスは山形県で米沢牛が名産となるのに一役かった人物でもある。ちなみに酒井によって設立された酒井ワイナリーは、現在東北最古のワイナリーとなっている。
 ブドウ栽培自体は、300から350年前から甲州ブドウが栽培されていたと推定されている。伝来には2説ある。現在の置賜地方南陽市にある旧中川村および赤湯町の金沢には、寛永年間に(1624〜1645年)金山があり、この金山に集まる人によって、甲州がもたらされたという説。もう一説では、月山、湯殿、羽黒三山への関東方面から参詣者によってもたらされたという説。しかしいずれも年代は不明だ。
 赤湯町の金沢にあった老木は1727年に植えられたと言われており、置賜地方には少なくとも約290年以前には甲州ブドウが存在していたことになる。江戸時代は、屋敷の空き地に植えられた柿、栗、杉などの立木に絡ませて栽培していたが、江戸末期には、垣根仕立てや、細木を立て、縄を張り、簡単な棚をつくってその上に藁(わら)をしいて、蔓を這わせるようした棚仕立てが採用されていた。明治時代には、甲州ブドウの栽培も本格化する。明治天皇が東北巡幸の際、山形にも立寄り、甲州を献上したとの記録も残る。
 また庄内地方の西荒屋地区にも、伝来を伝える石碑が残る。1760年代、庄内藩家老水野氏が江戸のブドウの苗を持ち込み、1877年には北海道に出荷するほどだった。同地区では今もワイン用としても甲州の栽培が続く。
 一方で欧米系のコンコード、シャスラ、ブラックハンブルグが南陽市を中心に栽培され始めた。しかし、こうして広がりつつあったブドウ栽培地も、1916年から20年代にかけて、フィロキセラによって壊滅的な打撃を受け、これを機に各地のブドウ品種は、山梨から伝来した保存性に優れたデラウェアに切り替わっていく。そしてこれがのちに山形県がデラウェアの栽培面積で第一位となる端緒となる。当時、各種台木の栽培を手がける農家も現れ、現在台木生産の7割を山形県が占める土台となった。
 30年代には赤湯町のブドウ栽培面積は100haに達し、このブドウの加工のためのワイナリーの誘数が行われ、36年にはハチブドウ酒で知られる神谷醸造株式会社赤湯工場が設立。同年、新潟県の川上善兵衛から、屋代村の高橋利義が、マスカット・ベーリーA、ブラック・クイーン、レッドミルレンニュームを譲り受け、すでにワイナリーを立ち上げていた須藤鷹次とともに苗木を育成した。この頃、植えつけられたと思われるマスカット・ベーリーAの古木が、赤湯町の須藤ぶどう園と上山市のタケダワイナリーの自社農園に残っている。後者については古木単独のワインも造られており、日本随一の古木のブドウのワインとなっている。第二次世界大戦中には、政府がロッシェル塩を入手するために、日本各地にワイナリーを造らせて、朝日町にも44年にワイナリーが設立されている。

2.戦後〜1990年代
 1953年には、天童市の荒谷地区で前述の神谷醸造株式会社が山寺工場を新設し、その後、各地に甘味果実酒の下請け工場を探していた山梨県の寿屋(今のサントリー)や大黒屋(大黒ぶどう酒醸造だと思われる)の進出も続き、一帯にはワイナリーが集積した。寿屋は、一方で52年、朝日町のワイナリーにも甘味果実酒の原酒造りを依頼している。原料はコンコード、ナイアガラ、キャンベル・アーリーだった。しかし70年代になって、甘味果実酒人気が落ち込み、大手は次々と撤退、合同酒精(神谷醸造株式会社を吸収)による1980年の山寺工場の閉鎖で大手のワイナリーは姿を消した。
 一方上山市では、70年代以降、ワイン用ブドウの栽培が拡大。きっかけは市内のタケダワイナリーによる自社農園での欧中東系品種を取り組みだ。同ワイナリーは独自に苗を入手して、シャルドネ、メルロ、カベルネ・ソーヴィニヨンなど欧・中東系品種の栽培に着手。当時、日本全国を見渡しても、家族経営のワイナリーで欧・中東系品種の栽培に乗り出した事例は稀有で(大手メーカーを含めても先駆的な取り組みだった)、現在、これらの品種の樹齢は日本でもかなり高い。
 2つの任意の生産者組合でも相次いで栽培が始まった。1は山形県のワイン用ブドウ栽培のパイオニアである南果連協同組合のワイン部の取組みだ。74年、欧中東系品種の適地を探していた大手メーカーの協和発酵工業株式会社が山形盆地南端にある南果連のブドウ園をブドウ栽培適地とし、同組合、生産者の3者と栽培契約を結んだことにワイン部は始まる。セイベル9110から始めて、83年からはシャルドネ、メルロ、カベルネ・ソーヴィニヨンといった欧・中東系品種を植栽。その後のワインブームで栽培面積も拡大した。一方、76年に設立された上山葡萄・葡萄酒研究会でも新しい農業の可能性を模索して、79年にはメルロの栽培を手がけ始めている。また、90年には、置賜盆地の高畠町でワイナリーが設立される。ワイナリーに原料ブドウを供給するために、翌年にはワイン用ブドウの栽培に特化した高畠ワインぶどう部会が発足して、欧・中東系品種の栽培も始まる。

3.2000年代〜
 山形県では、1990年以降、ワイナリーの設立はなかったものの、一方で、同県の欧・中東系品種の品質には定評があり、県外からの引き合いは増加傾向だった。こうした状況のもと、ワイン用ブドウの栽培農家がワイナリー設立をするケースもでてきた(2013年)。
 上山市は15年に「かみのやまワインの郷プロジェクト協議会」を発足、ワイン用ブドウの栽培面積の拡大など、ワイン産地としての発展を目指し、翌16年に「かみのやまワイン特区」を取得。将来のワイナリー設立を視野にいれて就農する動きがうまれた。一度は増加した後、2014年までは減少傾向にあったワイン用ブドウの栽培面積も、ようやく増加に転じた。ちなみに上山のシャルドネで造られたスパークリングワインは洞爺湖サミットでも使われたことで注目を集めた。また高畠町では県外のワイナリーからの働きかけにより、ジベレリン処理なしの種ありデラウェアの栽培に乗り出すケースも多い。南陽市も16年には、ワイン特区を取得済みだったが、17年にはワイナリーが設立された。
 (「山形騒の葡」昭和28年8月山形懸農林部農薬改良課、「山形果樹研究会山形の果樹産地」)

■気候風土
 山形県は本州北東部に位置しており、面積は9.323㎢。南北は約164km、東西は約120km、県の北西部が日本海に面している。また県の面積の72%が森林になる。県の東側には奥羽山脈が南北に走り、それと平行して、県の中央に出羽丘陵、月山、朝日山地が連なっている。県の南端には飯豊(いで)山地、吾妻山地がある。これらの山系に源を持つ最上川は、県内を流れ、置賜盆地、山形盆地、新庄盆地、そして下流では庄内平野を形成している。ワイン用ブドウの栽培が行われているのが、置賜盆地の置賜地方、山形盆地のなかの村山地方、庄内平野に位置する庄内地方になる。気象特性は、中央部を走る丘陵地帯、山地によって大きく2分され、日本海側が海洋性気候、内陸側が盆地気候となる。置賜地方と村山地方は内陸部の盆地気候だが、前者は夏の気温は高く、冬は豪雪地帯となる。一方後者は夏の気温は高く、降雪量はやや少ない。高畠町と鶴岡市と山形市における栽培地近くのアメダス観測地点のデータでは、4月から10月のブドウの生育期間の平均気温は、17.4〜18.4℃と、高畠町以外は長野県の松本市の値より高い。同じ期間の降水量は、高畠町や山形市は1.000mmを下回るが、鶴岡市は1,000mmを超え、内陸部より多い。

■ワインの生産量
 日本ワインの年間生産量は1,370kℓ、750mℓ換算で約182.7万本。山梨県、北海道、長野県に続き、全国第4位。日本ワインの原料としての醸造量で最多なものはデラウェアで657t、次いでマスカット・ベーリーA、ナイアガラが挙がる。マスカット・ベーリーAのワインの醸造量は、山梨に次いで2番めに多い。一方2019年の山形県のワイン用の国産生ブドウの生産数量は2.543t。そのうち山形県内で使用されたブドウの量(ほぼ大半が醸造されたと考えられる)が1,686t。前述のように、ワイン用ブドウは県外のワイナリーからの引き合いも強く、県外への流出する割合は、生産量の33.7%も占めており、全国でもっとも高い。そのため、日本ワインの生産量とワイン用に用いられて生産数量にギャップが生じている。

■主要ブドウ品種
 ワイン用ブドウ品種、生食用品種、交雑種からワインが造られている。2019年の山形県のワイン用原料ブドウ生産量2,543tのうち、白用品種が51.4%、赤用品種が39.6%で、白用品種がかなり多い。
 赤用品種でもっとも多いのがマスカット・ベーリーAで634t。山形県の生産数量の24.9%を占め、赤用品種では、メルロ、ヤマ・ソービニオン、カベルネ・ソーヴィニヨンが続く。白用品種の生産数量では、栽培面積で全国1位を占めると推定されるデラウェアが最多で657t。次いでナイアガラ、シャルドネが続いている。
 1930年代に導入されたブラック・クイーンも山形県の赤ワインの重要な品種である。

■主なワイン産地
 ワイン用ブドウの産地として挙げられるのが、村山地方の上山市と置賜地方の南陽市と高畠町、庄内地方の西荒屋地区になる。
 上山市は山形盆地の南端に位置しており、ブドウ園は主に盆地辺縁部の傾斜地に拓かれている。水はけの良さ、日照量の多さ、年間降水量の少なさ、夏季の夜温の低さなど、ワイン用ブドウ栽培のための恵まれた条件が揃う。そのため、シャルドネやメルロ、そしてカベルネ・ソーヴィニヨンなどの欧・中東系品種の栽培が盛んで、これらの品種のワインの国内での評価も高い。上山市のワイン用ブドウの栽培面積は、1990年代後半をピークに減少傾向だったようだが、ワイン産業の活性化に伴い、2014年以降は増加傾向が続き、17年度末では約47.6haになり、今後もその傾向が続く見込み。市と地元金融関連業者と既存のワイナリー、そして栽培農家が協力して、産地形成を進めている。
 置賜盆地南陽市の赤湯町は、東北最古のワイナリーなど、県内ではワイナリーが集積している土地になる。ブドウ園は上山市と同様に、盆地の辺縁に多かったが、近年は耕作放棄が後を絶たず、江戸時代から続いていた甲州ブドウの栽培も今や途絶えようとしている。そうした中、斜面の畑や甲州ブドウを守ろうとする動きも生まれている。高畠町では前述のようなデラウェアを見直す流れが生まれている。また置賜盆地の長井市、白鷹町でもワイン用ブドウに取り組む動きも出ている。
 村山地方の朝日町のマスカット・ベーリーAは収穫時期が日本でも最も遅く、近年評価が上昇。また甲州ブドウの栽培としては北限の地である庄内地方の西荒屋地区で甲州ブドウの栽培が250年間続く。樹齢も高く、ブドウの糖度も高く、そのブドウで造られたワインも注目されだしている。朝日町、庄内地方の鶴岡市にそれぞれワイナリーが1軒ずつある。


東北その他

■プロフィール
 東北のその他の県、青森県、秋田県、宮城県、そして福島県にもワイナリーはある。「国税庁の国内製造業の概況」では、果実酒製造免許を取得した醸造場数が明らかになっている。先に記した岩手県を含めた青森県、秋田県における日本ワイン産業の動向は、この4、5年にわかに活況を呈している。秋田県のワイナリーは4軒で、2017年もワイナリーが設立されている。小公子など野生ブドウとの交配種のワイン造りに注力中。本州北端の青森県では2017年一気に5軒のワイナリーが設立されて、ワイナリーは7軒。下北半島の南側、日本最大のピノ・ノワールの畑をするワイナリーで、注目を浴び始めている。
 宮城県では明治30年代に桔梗長兵衛が沿岸部(現山元町)を開拓してブドウ栽培を始め、一帯を産地化、後にワイナリーを設立した。山梨の大手メーカーに甘味果実酒の原料を供給していた時期もあったが、東日本大震災で被災して廃業を余儀なくされた。しかしその後、2015年に仙台南西の秋保温泉にワイナリーがスタートするなど、復興とともにワイナリー設立が活発化し、現在のワイナリー数は4軒。メルロ、ピノ・グリ、ゲヴュルットラミネール、マルヴァジアなどに取り組むが、多他の品種も含めてまだ試行錯誤中だ。
 福島県はかねてより上質なブドウが収穫できることで知られており、大手メーカーの中には同県のシャルドネでワインを造り続けているところもある。ワイナリーは増加傾向で、震災後設立されたワイナリーが3軒。そのうちの1軒は震災の復興財団が関わっている。2019年には7軒になっている。


北陸

新潟県
■プロフィール
新潟県は本州の日本海側の真ん中よりやや北に位置した南北に細長い県である。ワイン造りの歴史は長く、すでに明治20年代にはワイン造りを想定したブドウ栽培が上越市高田で始まり、ワイナリーが設立された。しかし、気象条件がやや厳しいこともあり、同市内でのワイン用ブドウの栽培は広がらず、今もワイナリーが1軒あるのみ。近年では産地化の動きもある。新潟砂丘の一角の角田浜と越前浜にはワイナリーが集積し始めており、生産者たちが一帯を「新潟ワインコースト」と称している。
 特筆すべきは同県が日本のワイン産業の発展に多大な貢献を果たしてきたこと。県初のワイナリーを立ち上げた川上善兵衛は「岩の原葡萄園」を開き、ブドウの交配育種に力を注いだ。現在、日本の赤用品種のなかでもっとも醸造量の多いマスカットベーリーAをはじめとして、ブラック・クイーン、レッドミルレンニュームなどの品種は、彼の交配による。こうした功績ゆえに川上は日本ワインの父と呼ばれることも多い。

■歴史
1.明治以前〜第二次世界大戦
 新潟県では、ワイン造りが手掛けられる約10年前にブドウ栽培が始まっている。1884年、87年と相次いで白根地区(今の新潟市南区)で取組みが始まったという記録が残る。同地区は、現在も果樹栽培が盛んで、県内のワイナリーに原料ブドウを供給している(「新潟県における果樹の歩み2004」)。また前述の川上も、90年に自宅の庭園をブドウ園にかえて翌年に9品種127株を植栽し、93年に前述のワイナリーを創業、初仕込みを実施した。そのワイナリーは今も営みを続ける。明治時代後半には、新潟市のすぐ北の聖籠村(現聖籠町)で、北海道から持ち帰った苗を植え付けて栽培が始まった。

2.戦後〜2000年
 60、70年代に各地で見られた地域興しの動きが波及して、南魚沼市でも、コメ以外の特産物としてワインが注目され、ワイナリーが立ち上げられた。また93年には、前述の角田浜に欧・中東系品種のブドウ栽培にベースをおくことを謳ったワイナリーが設立。とはいえ、2000年までは県内のワイナリー数は3軒にとどまった。

3.2000年代〜
 2004年以降の日本ワインブームも追い風になって、角田浜と越前派ではワイナリー設立が活発化する。90年台に設立されたワイナリーが開設したワイナリー経営塾の卒業生たちが、次々と周辺にブドウ園を開園し、ワイン造りに取組み出したのだ。2006年から13年までに設立されたワイナリーは5軒となり、生産者たち自らがー番を「新潟ワインコースト」と称するようになっている。いずれのワイナリーも個人が立ち上げた小規模ワイナリーになる。
 この間、05年には、胎内市にもワイナリーができた。これは市が経営しているにも関わらず、100%自社畑産のブドウのみでワインを造ることをモットーとしている、「ドメーヌ型」の珍しいケース。県全体のワイナリー数は現在10軒となった。

■気候風土
 新潟県の面積は12,584km。日本海側に面した細長く伸びた県で、北端のワイナリーがある胎内市と南端のワイナリーがある上越市では144kmも離れている。これは山梨県の勝沼と長野県の塩尻の距離の86kmをはるかに上回る。北から東側、さらに南に至るまでの県境には、朝日山地、飯豊(いいで)山地、越後山脈や西頸城(くびき)山地、そして通称北アルプスと言われる飛騨山脈といった1,500から3,000m級の山々が連なる。飛騨山脈に水源を持つ信濃川(長野県では千曲川)と、阿賀野川の下流部には日本海側最大の広大な新潟平野、鯖石川下流には柏崎平野、関川下流には高田平野が広がる。
 3つの平野の海岸線から1kmくらいの地域には、新潟砂丘など砂丘が海岸線に沿って発達しており、その内陸側は低湿地であることが多い。そのためかつて新潟平野は「地図にない湖」と呼ばれていた。その後の土地改良事業によって排水改良が進み、今では美しい水田風景が広がり、日本を代表する穀倉地帯となった。
 気象特性は、沿岸部一帯は全般的には海洋性気候。降水量は、夏季だけでなく、冬季にも多く、日照時間も少ない傾向にある。冬季は気温が低く雪になることも多い。一方、内陸部は盆地気候になる。
 胎内市、角田浜と越前浜、南魚沼市、そして上越市のワイン用ブドウ栽培地に近いアメダス観測地点のデータ(それぞれ順番に中条、巻、小出、高田のデータ)では、4月から10月のブドウの生育期間の平均気温は、18.7〜19.7℃で長野や山形より暖かく、山梨より寒い。また、下越の胎内のほうが上越より冷涼。4月から10月の降水量は巻を除き1,100mm台と比較的多いが、巻は917mmで山梨県の華崎より少ない。ただし最近は、数年に一度、ゲリラ豪雨や台風の影響を受ける年もある。

■ワインの生産量
 国税庁のデータによると日本ワインの年間生産量は514kℓ、750mℓ換算で約68.5万本。国内では6位に位置しており、日本海側ではもっとも生産量が多い。ただし日本全体の生産量からみるとわずか約2.9%にすぎない。

■主要ブドウ品種
他県同様にワイン用ブドウ品種、生食用品種、交雑種からワインが造られている。しかし新潟県のワイン用ブドウの生産量は399t。そのうち上位10品種でみると白用品種が37.2%、赤用品種が49.9%と赤用品種が多い。生産数量の1位と2位をシャルドネ、メルロといった欧・中東系品種が占めているのが他道府県とは大きく異る。2品種合わせて141tには満たないものの、全体の36%になっている。赤用品種はメルロがもっとも多く83tで、次いでマスカットベーリーAが54tで続く。白用品種ではシャルドネがもっとも多く、58tになり、次いでセイベル9110が追う。現状では、県内で生産されるブドウですべての県内産ワインの原料は賄えておらず、生産者たちの新潟に適した品種の検討、農家への働きかけによる原料確保の努力が続いている。(2017年以降の詳細は発表されていないため、データは2016年のもの。ちなみに2019年のワイン用ブドウの生産量は514t)
 前述の川上は、交配した1万種以上の中から優良品種22種類を選抜。優良品種のうち、マスカット・べーリーA、ブラック・クイーン、レッド・ミルレンニューム、ローズシオターは今も上越市で栽培が続く。ローズシオター、レッド・ミルレンニュームは白用品種の生産数量では4位と5位に位置している。
 一方指摘すべきは、善兵衛品種とは別に、新潟ワインコーストのワイナリーがとりわけ欧・中東系品種でのワイン造りを謳っていること。耐病性も高いと言われているアルバリーニョも増加中だ。また胎内市と南魚沼市では欧・中東系品種によるワイン造りに力をいれている。前者はツヴァイゲルトレーベが高評価。後者はメルロ、カベルネ・ソーヴィニヨンが挙がる。
 県全体として栽培される品種で他に指摘すべきは、カベルネ・ソーヴィニョン、アルバリーニョ。特に後者は比較的降水量が多い土地にも適応し、今後産地化が進んでいきそうだ。

■主なワイン産地
 ワイン用ブドウ産地としては、北から胎内市、新潟市の南区、南魚沼市、上越市、そして前述の新潟ワインコーストが主要産地。胎内市以外はほぼ同じ生産規模。減少傾向が続く聖籠町も伝統的ブドウ産地だ。県内で、新潟ワインコーストに加えて、ワイン用ブドウの栽培とワイン造りの両方がほぼおなじ規模でおこなわれている地域としては、胎内市、南魚沼市が挙げられる。両市ともワイナリーは1軒あるのみだ。新潟砂丘に位置する新潟ワインコーストには、直線距離で300m以内に5軒のワイナリーが集まっており、ブドウ園の面積は合計約12ha。砂丘の砂質土壌を生かした産地形成を目指している。上越市の岩の原葡菊園では、マスカット・ベーリーAが生まれた土地として今もこの品種を中心としたワイン造りが続いている。


北陸その他

 富山県と石川県にはそれぞれ3軒、福井県には1軒ワイナリーがある。都道府県内のワイナリー数が2軒以下の際にはデータは公表されないため、日本ワインの生産量も不明。上位10品種の醸造量の記載もない。
 3県のなかで近年もっとも注目を浴びているのは富山県。同県には、最近増加傾向にある異業種企業が設立したワイナリーがある。江戸時代から続く鮮魚の仲卸問屋が氷見の活性化を目指して2011年にスタート。自社農園産のブドウのみでワインを造る「ドメーヌ型」ワイナリーで、シャルドネ、アルバリーニョが知られている。2017年には、このワイナリーのシャルドネが日本ワインコンクールで金賞を受賞して、注目を浴びた。石川県のワイナリーは3軒とも2000年以降設立され、能登半島でワインを造る。そのうちの1軒は10万本以上生産する中規模ワイナリーで、ヤマソービニオンのワインで定評がある。


■関東
 関東の7都県すべてにワイナリーがある。栃木県以外は生産量がかなり少ない。最多なのが栃木県で281kℓとなった。750mℓ換算だと37.5万本。全国で占める割合は1.6%だが9位に位置する。原料ブドウは必ずしも県内産ではないが、醸造量はマスカット・ベーリーAがもっとも多く、メルロ、シャルドネが続く。また県内ワイナリーの自社農園で育てられたリースリング・リオンのスパークリングワインが沖縄サミットの晩警会で乾杯に使われている。また埼玉県にはワイナリーが4軒あり、昭和初期より続く歴史の長いワイナリーもある。東京は2014年以降次々と街中ワイナリーが設立され、現在のワイナリー数は4軒になった。今でも原料ブドウは都外のものを使っているが、近年、練馬区、多摩地区などのブドウを使ってワインを造る動きが生まれており、ワイナリー数もさらに増えそうだ。千葉県には、生産量は少ないもののブドウ栽培からワイン醸造まで一貫した造りを実践するワイナリーがある。


■甲信
長野県
■プロフィール
 長野県は、日本のワイン造りにおいて、もっとも活気のある県だ。2019年度分調査によるとワイナリーの数は55軒。14年以降は毎年ワイナリーの設立が続き、2000年以降設立されたワイナリー数は40軒を超えて、2019年度で55軒になった(2020年9月の時点で61軒に増えている)。県や市町村など行政の支援の動きとも相まって、この傾向はしばらく続いていくのは間違いない。
 近年顕著に見られるのが、将来のワイナリーの立ち上げを視野に入れたブドウ園の開園である。2003年以降、ヨーロッパのワイン産地のようにブドウ栽培からワイン造りまでを手掛ける小規模ワイナリーが増えており、この後を追うようにブドウを育て始めている人が集っている。新規就農者の多くは県外からの移住者で、またこうしたブドウ園は県内の各市町村に点在している。一連の動きを後押ししていることのひとつに、長野県が13年に発表した「信州ワインバレー構想」が挙げられる。

■歴史
1.明治〜第二次世界大戦終戦
 長野県のワイン造りは明治の初めに端を発する。明治政府の殖産興業政策の一貫として果樹栽培とワイン造りが奨励された。山梨県と大きく異なるのは、本格的なブドウ栽培がワイン造りを目的として始まったことだ。
 1872年、西洋各国でワインが愛飲されていることに着目した百瀬二郎が松本県を通して山ブドウによるワイン造りの免許の許可を大蔵省に願い出た。これが日本初のワイン醸造に関する願書になる(「明治前期勧農事蹟輯録上巻」、農林省農務局編)。結局許可は下りず、県初のワイン造りは5〜10年後になる。
 ブドウの栽培自体は、江戸時代から甲州ブドウが東筑摩郡山辺村地帯(現在の松本市山辺地区)に育てられていたらしい。1688〜1710年頃、甲州ブドウが移入されたという伝承があり、柿や栗などの立木にからめて栽培されていたようだ。1877年頃より本格的に栽培を試みるものもいたが、養蚕の好況と病害のために衰退した。一方、長野市周辺では、善光寺ブドウの名で竜眼が1900年前後(明治30年)頃から栽培されるようになった。
 欧米系ブドウについては1879年山辺村の豊島新三郎が県勤業課より苗木を得て自宅で栽培したのが、県初だと言われる。新三郎の養子の理喜司は試験栽培を経て90年には桔梗ヶ原の赤松林を開墾して、欧米系両品種、コンコード、ナイアガラなど25、26種の本格的な栽培に着手。桔梗ヶ原のブドウ栽培の始まりだ。その後、他の品種より寒さに強いコンコードが枯梗ヶ原の主カ品種になった。
 1902年に理喜司は「信濃殖産会社」を創立して本格的なワインの醸造を開始した。同時期、県内各地でブドウの栽培が始まり、上高井郡や小県郡ではワインの醸造も試みられた。
 桔梗ヶ原のブドウ栽培面積は25年には100ha以上あったが、昭和になってコンコード人気に陰りが見えると、ブドウ農家は活路を求めてジュースやワインの原料として売却し、自らも甘味果実酒(注:これ以前に造られていた酒がワインだったか、甘味果実酒だったかは現存する資料からは不明)を造りだした。ワイナリー数(醸造場数)は約10軒を数えた。
 31年、満州事変が勃発すると物資の輸出入が困難になった。そのため甘味混合果実酒を造っていた寿屋洋酒店(現サントリー・ワイン・インターナショナル)や大黒衛菊酒株式会社(後に三楽オーシャン・現メルシャン)が戦禍の拡大につれて、桔梗ヶ原に原料を求めて進出してきた(前者は36年、後者は38年に免許取得。大手2社はいずれも主たるワイナリーを山梨県に構え、塩尻に建てたのはブドウ酒工場のようなものだった)。35年には醸造場数は18軒に増え生産能力は2,050石に達する。山梨県(1,030石)を達かに上回る日本一のワイン産地だった。

2.戦後〜1990年代
 戦争中に横行した粗悪な酸っぱいワインも1949〜50年には減少したが、ワイン原料としての消費は生食用に比べてはるかに少なく、価格も上がらず、くずブドウや規格外品を原料にしたワイン造りが依然として続く。55年以降、桔梗ヶ原は、コンコードの天然果汁(ブドウジュース)で一躍注目を集める。貿易自由化で入ってきたアルゼンチン産の濃縮果汁の圧迫も受け、ブドウの価格は低下するものの栽培面積自体は増加した。
 一方、68年頃からマンズワインが上田市の気候と善光寺ブドウに注目して長野県に進出、69年には小諸にワイナリーを設立、県経済連、塩田町農協と契約を結び、73年までに計35haの善光寺ブドウのブドウ団地が塩田と大里に形成された。のちに塩田、小諸一帯は前者がカベルネ・ソーヴィニヨン、後者はシャルドネとメルロの重要な産地となった。
 73年、石油ショックによって日本の経済は混迷。県内の大手2社の工場、さらには他の県内のワイナリーも次々と操業を停止、全盛期には27軒もあったワイナリーは75年には7軒に減少する。しかし日本のワイン市場としては、のちにワイン元年と呼ばれる、この73年を契機に新たな時代を迎える。70年の大阪万博の影響もあり、国内でワインが急激に売れだし、75年にはワインの消費量が甘味果実酒のそれを抜く。この頃までの大手メーカーは、地方の小さなワイナリーから、デラウェアの原酒を買って、これに高品質の輸入ワインを多量にブレンドして高級ワインに変身させていた。しかしこれを機に欧・中東系品種を使ったワインが各地で少しずつ造られるようになった。
 そして、甘味果実酒の原料産地として続いていた桔根梗ヶ原も大きな転換期を迎えた。1970年台半ば、大手メーカー2社が桔梗ヶ原の農家とメルロの買い取りの契約を結ぶようになり、メルロの本格的な栽培がスタートする。その後、89、90年の「リュブリアーナ国際ワインコンクール」で桔梗ヶ原産メルロを使ったメルシャンのワインが大金賞を連続受賞すると、桔梗ヶ原はメルロ産地として注目されるようになり、メルロの栽培面積が増えていく。
 70年代には、千曲川流域の小諸や長野盆地右側の北信の上高井郡でもワイン造りが始まった。72年に上田に、73年に小諸に植えた善光寺を醸造する目的で、73年、マンズワイン小諸ワイナリーが小諸に設立されている(この年はワイン消費が一気に増加した年で「ワイン元年」と言われている)。ただし品種のついては、80年台後半の大雪で、善光寺から欧-中東系品種であるシャルドネ、メルロ、信濃リースリングへの切り替えが一気に進んだ。さらに80年代から90年にかけて、小布施町、高山村、須坂市一帯で、地元の小規模ワイナリー、大手メーカーと契約した地元の農家によってシャルドネなど欧・中東系品種の栽培や本格的なワイン造りの息吹が芽生えた。

3.2000年代〜
 2000年代に入ると長野県はさらに新しいステージを迎える。03年、04年と東御市と塩尻市にブドウ栽培に根ざした個人経営の小規模ワイナリーが相次いで立ち上げられたのだ。これを機にワイナリー設立を視野に畑を拓く人が増加を始めるのだ。04年以降の日本ワイン人気も追い風となり、実際にワイナリー数も増えていく。
 13年には、県が信州ワインバレー構想を発表し、ワイン産業の推進を始めた。08年東御市のワイン特区認定を皮切りに、高山村(2011年認定)、坂城町(2013年認定)、山形村(2014年認定)、塩尻市(2014年)、上田市(2014年)、小諸市(2015年)、松川町(2016年)、下篠村(2016年)が特区の認定を受けている。また、2015年には、千曲川ワインバレーの8市町村(上田市、小諸市、千曲市、東御市、立科町、青木村、長和町、坂城町)が広域で特区の認定を受けている(同時に市町村ごとの特区認定は取り消し)。
 長野県では高品質な農産物や農産加工品を提供しながら生産者情報を開示、消費者の信頼を得て、地域振興を図ろうと、「長野県原産地呼称管理制度」を2002年に創設、認定基準と官能審査を有する制度として、2003年度から運用を始めた。また、2016年4月に、長野県庁に「日本酒ワイン振興室」が設置された。

■気候風土
 長野県は本州の中央部に位置しており、面積は約13,562㎢で東京都の約6.2倍。南北は約212km、東西は約120kmで、南北に長い。周囲を北アルプスと呼ばれる飛騨山脈、中央アルプスと呼ばれる木曽山脈、南アルプスと呼ばれる赤石山脈で囲まれる、どこも海に接していない内陸になる。農地は、松本盆地、上田盆地、長野盆地、伊那盆地の4つの盆地に主に広がっている。これらの農地の80%以上が標高500m以上の高地になる。ブドウ園は主に前の3つの盆地の辺縁部に拓かれており、標高は350mから900mにわたる。
 4盆地の気候はいずれも盆地気候で、年降水量が少なく、昼夜、夏冬の気温差が大きく、果樹の栽培には有利な条件が揃う。とりわけ長野盆地から上田盆地、佐久盆地にかけての一帯は、北海道東部に次いで雨が少ない。長野の主なワイン用ブドウの栽培地近くのアメダスのデータを見ると、4〜10月(ブドウの生育期間)の平均気温は、15.6〜18.6℃と幅がある。東御市は15.6℃とブルゴーニュのディジョン(15.4℃)やアルザスのコールマール(15.6℃)とほぼ同じ。4から10月の降水量では長野が最低で683mm、次いで上田が711mmで、東御、松本と続く。ただし年間で見ると上田がもっと少ない。(2003年1月〜2012年12月間での平均値/気象庁ホームページ)。
 長野県におけるワイン用ブドウの栽培は、盆地の際の斜面で実施されている。そのため、前述のように県内、さらには一つの市町村内でさえ、ワイン用ブドウの畑の標高差が大きく、気象条件、土壌の多様性が生まれている。ひいてはそれが後述するような品種の多様性をもたらしている。

■ワイン生産量
 国税庁のデータによると日本ワインの年間生産量は3,599kℓ、750mℓ換算で約479.9万本。山梨県に次いで第2位で日本全体の20.2%を占める。日本ワインの原料としての醸造量で最多な品種はコンコードで1,530t、ナイアガラも995tと多いが減少傾向が続く。ー方メルロとシャルドネはそれぞれ847tと492tと増加。2017年の長野県産の国産生ブドウの生産数量は5,289t。そのうち長野県内で使用されたプドウの量で4,759tと県外流出率は低い。ワイン用プドウの生産では、長野県は山梨県に肉迫している。

■主要ブドウ品種
 長野県も山梨県、北海道等と同様に、ワイン用ブドウ品種、生食用ブドウ品種、そしてワイン用ブドウと生食用ブドウの交雑種からワインが造られている。今までワイン用ブドウの栽培の前例のなかった土地での取り組みも生まれており、収穫に至っていないブドウ園も多い。今後のワイン用ブドウの生産数量は増加傾向が続く。
 気候条件に恵まれており、日本で栽培されている欧・中東系品種のなかで、メルロ、シャルドネ、ソーヴィニヨン・ブランの生産数量はいずれも長野がトップ(メルロが847t、シャルドネが492t、ソーヴィニヨン・ブランが121t)。アメリカ系品種も含めると、コンコードと、ナイアガラの生産数量がいまだ多く、2品種で長野県の48%も占める。ただしこの2品種が占める割合は微減傾向が続いている。2019年の長野県のワイン用原料ブドウ生産量5,289tのうち、上位10種の内、白用品種が34.4%、赤用品種が56.8%で、赤用品種の占める割合がかなり高いことも特徴的。北海道、山梨県など他道県に比べて、赤用品種の栽培に適した条件が揃っているのを物語る。
 ほかに増加傾向なのがカベルネ・ソーヴィニヨン、カベルネ・フラン、ピノ・ノワール、ソーヴィニヨン・ブラン。まだ栽培面積自体は微々たるものだが、適地を選んで増加していきそうだ。近年、ピノ・グリ、ゲヴュルツ・トラミネールも増えだしている。



■主なワイン産地
 長野県では、13年に県が発表した「信州ワインバレー構想」のもと産地化が進む。松本盆地、上田盆地(佐久盆地も含む)、長野盆地、伊那盆地の4つのエリアに区分けして、各エリアがワイン産地として発展すべく、生産者の育成、県産ワインのPRなど支援を行っている。これに伴い、ワイン特区を申請する市町村も増加、2020年1月時点で、「千曲川ワインバレー東地区」の8市町村(上田市、小諸市、千曲市、東御市、立科町、青木村、長和町、坂城町)、高山村、山形村、塩尻市、松川町、下篠村など12ヶ所がいわゆる「ワイン特区」に認定されている。2016年に長野県が発表した果樹振興計画によると、14年のワイン用ブドウも含めたブドウ栽培の面積は2,400haでそのうちワイン用ブドウの面積は200haになっており、25年には倍の400haに拡大する計画だ(2017年のブドウの結果樹面積では2,310ha)。

1.桔梗ヶ原ワインバレー
 松本盆地南端の塩尻市全域が含まれる。ここは明治の初期の殖産興業政策に刺激され、ワイン用原料(正確には甘味果実酒)としてブドウ栽培が開始。ワイン造りとブドウ栽培がほぼ同時期に始まった長野県のワイン造り発祥の地となる。歴史の長い中規模ワイナリーから個人の小規模ワイナリーまである。一帯は、約5万年前、奈良井川、鎖川、小曽部川により形成された広大な扇状地が河岸段丘化して出来上がった。川の流れに沿ったゆるやかな斜面が続き、桔梗ヶ原のみならず、「原」という言葉が付く地名が多い。「桔梗ヶ原」は、本来奈良井川の右岸の河岸段丘の上段を指すが、近年は下段、中段に加えて、左岸の段丘も含むこともある。背景にはこれらの地域にも、ワイン用のブドウ園が広がりつつあることがある。標高700〜800mの高地でブドウの生育期間の日照量は全国1位、2位を競い、栽培条件に恵まれる。桔梗ヶ原産メルロを使った地名を冠したワインが国際コンクールで金賞を受賞したこともあり、メルロの産地としても名高いが、ワイン原料としてもっとも多く使われているのがコンコード、次いでナイアガラで、メルロはこれら2品種に次ぐ。近年シラーが増えている。大半が棚栽培で、現地にはブドウ棚が連なる光景が広がる。農家の高齢化でブドウ畑の面積が減少の一途だったが地元のワイナリーが自社管理畑を増やす動きも活発化している。桔梗ヶ原の最上段は黒ボクでも粘土質を多く含み、中段、下段を川に近づくにつれて礫(れき)が増え、水はけも良好。また塩尻市は14年、ワイン特区に認定されるとともに、「塩尻ワイン大学」を開講している。さらに18年にメルシャンがワイナリーを設立し、同市でワイン造りを再開した。同市内の大手メーカーのワイナリー数は2軒になる。

2.千曲川ワインバレー
 千曲川ワインバレーは上流の佐久市から下流の中野市までの千曲川流域になる。県内でもっともワイナリー設立が活発な地域。長野県の55軒中およそ半数のワイナリーがこの地域にあり、その中で2000年以降設立されたワイナリーは20軒にもなるのだ。上流から下流に至るまで、生育期間の少雨という気候条件にも恵まれている。この地帯については、上流の上田盆地と佐久盆地とその周辺(佐久市、小諸市、東御市、上田市)と下流の長野盆地とその周辺に分けて記す(長野市、須坂市、高山村、小布施町、中野市、飯網町)。一つの市町村内の標高差が大きく、一つの市でもシラーのような温かい産地の品種から、ピノ・ノワールのような冷涼な産地の品種までもが栽培されている。

①上田盆地と佐久盆地周辺
 千曲川上流の佐久盆地と上田盆地は、浅間山およびそこから西に連なる南西斜面で、盆地の幅も狭く斜面の斜度も急で起伏に富む。ワイナリー設立の動きがもっとも活発なのが東御市で、2021年10月現在、ワイナリー数は12軒。巨峰が名産だったが、03年に誕生したワイナリーのシャルドネのワインが国内外から非常に高く評価を受けたこと、造り手を養成する「千曲ワインアカデミー」が開講されていることもあって、ブドウ畑が激増。東御市のワイン用ブドウの栽培面積は16年末現在で約60haを超えまだまだ増加しそうだ。栽培農家(ワイナリーを含む)数は25軒を超える。標高600〜900mの間にブドウ園は拓かれており、長野県の中でも冷涼。太陽の光を良く浴びる傾斜地で、ブドウの糖度は上がるが酸が保持される、シャルドネが特に高評価。ほかにはメルロ、ピノ・ノワール、ソーヴィニヨン・ブラン、ピノ・グリなど。垣根仕立てのブドウ園が多い。
 上田市、坂城町は東御市に比べると気候も温暖。上田は日本国内でも雨量が少なく、水はけが良い土地になる。大手メーカー2社が両岸にそれぞれ自社管理畑を営むほか、近年個人の生産者も畑を拓き、JAもワイン用ブドウの栽培に関わりだした。19年にはメルシャンが上田市にワイナリーを設立。品種は、大手メーカーが1992年から取り組んでいたカベルネ・ソーヴィニヨンなどボルドー系品種が主流だが、ソーヴィニヨン・ブランやシラーも高評価。小諸市は幾分冷涼でシャルドネに適しており、最近は標高900mの前後の土地でのワイン用ブドウ栽培が広がりつつある。13年ワイン特区に認定された坂城町では、町のワイナリー形成事業のもと、カベルネ・ソーヴィニヨン、メルロのなどの栽培が始め、18年にはワイナリーが初めて設立されている。
 東御一帯は左岸の八重原台地は粘土質が多いが、右岸は火山灰由来の黒ボクが多く、一部粘土質が混ざる。上田市の左岸は細粒褐色森林土と呼ばれる粘土質が多いが、塩田のあたりは、一部海底が隆起した区画もあり、今後さらに詳しい調査をする必要がある。

2 . 長野盆地とその周辺
 千曲川のさらに下流。長野市、中野市、小布施町・須坂市高山村にかけては千曲川に流れ込む鮎川や松川、夜問瀬川などの支流に形成された扇状地と千曲川によって造られた沖積地によって構成。右岸と左岸では扇状地の様相も異なる。
 高山村は千曲川の右岸、長野盆地(別名善光寺平)東端の扇状地に位置する。村が付加価値農産物としてワイン用ブドウに注目して、支援、東御市と並び、欧・中東系品種のブドウ園が激増。2015年以降、毎年ワイナリーが設立され、21年でワイナリー数は、6軒。村の欧中東系品種の栽培面積は、21(?)年春の時点で約60ha。ほぼ西向きの緩やかな斜面には垣根仕立てのブドウ園が広がり、標高差は400〜800mと一つの村内でも差は大きく、斜面の向きも複雑に入り組む。標高の低いところと高いところでは栽培されている品種も異なる。低いところではシャルドネ、メルロ、カベルネ・ソーヴィニヨン、カベルネ・フランなどが、高いところではピノ・ノワールも栽培されている。中野市と須坂市では近年ワイナリーが設立。18年には委託醸造を主たる目的にしたワイナリーが設立された。高山村は11年、長野県2番目のワイン特区に認定。
 右岸は基本的には南西から西向きに開けた洪積扇状地。緩斜面の畑の土壌は、黒ボク土が多いが、礫を多く合み水はけが極めて良好な礫粒褐色低地土の場所もある。飯綱町から長野市北部にかけてもワイン用ブドウの栽培が取り組まれている。標高600m以上で気候は冷涼。土壌は黒ボクと粘土質。

3.日本アルプスワインバレー
 長野県西部に南北に延びる松本幹地は松本平とも呼ばれる。この松本盆地から南端の塩尻市のみを除いたエリア。盆地北部からは西側に美しい稜線(りょうせん)の北アルプスが望める。盆地中央には松本で奈良井川と梓川、高瀬川が合流し犀川となる。これらの河川に流れ込むさまざまな支流によって形成された扇状地と沖積地で構成。
 エリアの東部は長野県でブドウ栽培が始まった土地。エリア内の現在の松本市山辺地区だと伝わる。西向きの扇状地にある山辺地区のブドウは明治の頃より、「山辺のブドウ」として「塩尻のドウ」と並び称されていた。土壌は礫を含む低地土と粘土質。池田町、安曇野市明科など安曇野を見下ろす南西斜面でも畑が増加中。高瀬川による洪積扇状地で、標を多く含む森林土。大手メーカーも10haを超える自社管理農園を営む。
 東向きの扇状地に位置する大町市ではこのバレーの中では気候も冷涼、2015年にワイナリーが3軒設立されている。ワイナリーは松本市と安曇野市にそれぞれ3軒。山形村と池田町にもワイナリーが新設された。

4.天竜川ワインバレー
 伊那盆地は、東は南アルプス(赤石山脈)、西は中央アルプス(木曽山脈)に挟まれており、「伊那谷」とも呼ばれる。古くからのリンゴや梨の産地でまだワイン用ブドウのブドウ園は少ない。ワイナリー数も5軒。最近はシードル生産が活発化しており、シードルの醸造を目的とした醸造場が設立されている。中央を流れる天竜川に流れ込む支流によって扇状地が、天竜川によって河岸段丘が形成。松川町の東向き斜面(標高700m)と比較的平坦な宮田村(標高650m)でワイン用ブドウが栽培。品種は長野の他のエリアと異なり、山ブドウとヤマソービニオンが挙げられる。土壌は黒ボクと礫を含む低地土。


山梨県
■プロフィール
 日本ワインの生産量もワイナリー数もいずれも日本随一で、今も昔も日本のワイン造りを支えてきたのが山梨県だ。ワイナリー数は85軒。
 近年、新たなワイナリーの設立は続いているものの、果実酒製造免許はあるが、休止中のワイナリーは上記の数に含まれていない。10数年前は日本で実質的に稼働しているワイナリーの半数以上を山梨県が占めていたが、現在は4分の1程度になった。
 こうした状況のなか、2013年、国税庁は「山梨」をワイン産地、すなわち地理的表示として指定した。一連の流れから日本のワイン造りにおける山梨県の役割も変わりつつあることが指摘できる。

■歴史
1.明治〜第二次世界大戦終戦
 山梨県は日本のワイン造り発祥の地。明治の初め、明治政府の殖産興業政策の一環としてワイン生産が奨励されたのだ。そしてその時すでに同県の勝沼祝村(現在の甲州市勝沼町上岩崎、後述の祝地区)では、甲州ブドウの栽培が盛んだった。
 1870、71年頃、甲府市の山田宥教(ひろのり)と詫間憲久(のりひさ)が、共同して甲府において試験的に山ブドウでワインを造り始めた。ねらいは赤ワインである。ただしこうした試験醸造は山田によって、明治維新前にも行われていたようだ(「大日本洋酒缶詰沿革史」)。そして、1874年、山梨で初めて本格的なワイン造りがこの二人によって実施されたことが記録に残る。赤、白、両方が造られたようで、赤は山ブドウで、白は勝沼産の甲州のワインだった(「日本のワイン・誕生と揺籃(ようらん)時代本邦葡萄酒産業史論攷」麻井宇介、甲府日日新聞、「山梨のワイン発達史 勝沼・ワイン100年の歩み」上野晴朗)。これを機に当時の山梨県令(現在の県知事)の藤村紫朗は政策を遂行すべく祝村の人々に声をかけ、1877年、初の民間会社である「大日本山梨葡萄酒会社」(通称祝村葡萄酒醸造株式会社)が設立される。さらに同年、この会社設立メンバーの子弟である高野正誠(当時25歳)と土屋助次郎(のちの龍憲、当時19歳)がブドウ栽塔とワイン醸造を学ぶために渡仏、1年7カ月の修業を経て帰国する。帰国後二人は、宮崎光太郎とともにワインの醸造を開始する。土屋は、欧・中東系品種の栽培に着手するが難しく、アメリカ系のコンコードやアジロンダックの導入を試みる。ちなみに現在も「大日本山梨葡萄会社」の流れを引くワイナリーがシャトー・メルシャンとまるき葡萄酒になる。
 さらに、1885年にはアメリカから持ち込まれたデラウェアの栽培が奥野田村(現在の甲州市塩山地区奥野田)で始まった。1890年代から1900年代初めにかけては、笹子トンネルの開通によるワインの輸送時間の短縮も追い風となり、ワインの売上げも増え、農家も含めた甲府盆地の勝沼周辺の人々にもワインが浸透した。
 1926年にはワイナリーが319軒、その後激増して39年には3,694軒という史上最高軒数に達した。前後するが、36年には、北巨摩郡登美村寿屋山梨農場(後のサントリー登美の丘ワイナリー)と篤農家土屋長男の畑でマスカットベーリーAが植え付けられる。ただし一般農家に広まったのは第二次世界大戦後になる。
 戦争末期になると、日本政府および軍部がソナーの原料としての酒石を確保するためにワインの増産を奨励、しかしワイナリー数は戦争中の強制統合により激減する。

2.戦後〜1990年代
 甘味果実酒全盛時代を経て、「ワイン元年」と称される73年へ。この年は、山梨のみならず、日本のワイン産業は大きな転機を迎える。ワイン消費量がー挙に前年比162%に上昇したのだ。2年後の75年には果実酒の消費量が1万4,545k ℓとなり、それまでの甘味果実酒のそれを抜いた。この間、特恵国のバルクワインや濃縮果汁の関税が引き下げられて、以降バルクワインや濃縮果汁の輸入量も増えていく。
 その後、85年のジエチレングリコール混入事件直後と、さらには90年に日本経済のバブル崩壊後の4年間のみの停滞期はあったが、すぐに回復、国内で製造されるワインの生産量と消費は急増した。こうしたワイン市場の拡大に伴い、山梨県の大手メーカーが、カベルネ・ソーヴィニヨンやメルロなど、欧中東系品種のウイルスフリーの穂木を輸入して本格的な栽培に乗り出し始めた。ただし栽培地は必ずしも山梨県とは限らなかった。
 県内の中小ワイナリーにも動きがあった。87年、勝沼町の中小12ワイナリーが勝沼ワイナリーズクラブを発足、協力してワインの品質向上とプロモーションに乗り出すようになった(現在は7社)。そして限定された面積だが、欧・中東系品種の栽培に取り組みだした。しかし、その一方で、ジエチレングリコール混入事件直後、一度は激減した濃縮果汁の輸入は、90年代にワイン市場の拡大とともに激増していった。

3.2000年代〜
 2000年以降、中央葡萄酒や本坊酒造マルス石和ワイナリーのように、醸造場自体は甲府盆地の中央部、東部にありながら、八ヶ岳山麓に自社管理農園を拓くワイナリーも出てきた。そこで垣根仕立てで栽培されたメルロ、カベルネ・ソーヴィニヨン、シャルドネ等、欧・中東系品種のワインの評価も上がりつつある。
 05年には、この地の自社管理農園で甲州の垣根仕立ての本格的な栽培も始まっている。日本では数少ないドメーヌ型ワイナリーもこの地に誕生。08年、北杜市が日本初のワイン特区「北杜市地域活性化特区」に認定されたのもこうした状況が背景にある。
 一方で、日本ワインを海外にアピールしていこうという動きも活発だ。09年、海外における甲州ワインの認知度を高めることを目的に県内のワイナリー数社、甲州市商工会、甲府商工会議所、そして山梨県ワイン酒造協同組合によって「Koshu of Japan」が発足、その後も毎年ロンドンでのPR活動を続けている。2020年も9社が参加しロンドンでプロモーションが行われた。
 10年には甲州が、13年にはマスカット・ベーリーAが、「国際ぶどうぶどう酒機構(O.I.V.)」のリストに登録され、この2品種を使ったワインをヨーロッパに輪出する際、ワインボトルのラベルに品種名を記載可能になった。
 さらに、最近ではワインの「産地」を守り、消費者に「産地」を伝えようとする動きも生まれている。10年、甲州市が「甲州市原産地呼称ワイン認証制度」を制定、全国で初めて審査部会によるブドウの出自の検証をベースにおいた、認証制度を実現させた。また、13年には国税庁が「山梨」をワインの地理的表示(GI)として指定し、17年にはGI山梨の生産基準の見直しも実施された。これにより、一定の生産基準を満たし、官能検査を経たワイン以外は山梨を名乗れなくなっている。

■気候風土
 山梨県は本州のほぼ中央部に位置している内陸県である。総面積は約4,465㎢で、東京都の約2倍である。東西、南北いずれも約90kmのイチョウの葉っぱのような形をしており、その中心部に甲府盆地がある。
 山梨県のワイン造りおよびワインの原料となるブドウの栽培は、大半がこの甲府盆地周辺に集中している。盆地の北西部や八ヶ岳山麓にも新たなブドウ園が増加中。
 山梨県には年間降水量の多い地域と少ない地域が混在している。富士五湖地方や富士川流域では、南岸低気圧・前線などの影響を受けやすく、降水量が盆地の2倍強に達するところもある。
 ブドウ栽培が盛んな甲府盆地では盆地気候になる。昼夜、および夏と冬の気温差が大きく、内陸特有の気温特性を示す。とりわけ勝沼周辺の降水量が少ないのが見てとれる。また県内全般に風が弱いこともあげられる。
 主なワイン用ブドウの栽培地近くのアメダスのデータ(勝沼、甲府、韮崎)を見ると、4〜10月(ブドウの生育期間)の平均気温は勝沼が19.9℃、甲府が20.8℃、韮崎が19.8℃になる。同時期の降水量は勝沼が849mm、甲府が874mm、韮崎が925mm。勝沼や甲府は長野より多いが、新潟や岩手より概ね少ない。一方で韮崎は大阪の八尾より多く、新潟の巻と比べてもやや多い。同じく日照量はすべての地域で1,200時間を超え、長野の各地とほぼ同じで日本では最高レベル。

■ワイン生産量
 国税庁のデータによると日本ワインの年間生産量は5,503kℓ、750mℓ換算で約733.7万本で日本最大の生産量を誇り、日本全体の31.0%を占める。山梨県内での日本ワインの醸造量で最多な品種は甲州で3,138t。次いでマスカット・ベーリーAで1,773t。さらにデラウェア、巨峰、メルロが続く。
 ワイン用ブドウの生産数量は6.563t。そのうち山梨県内で使用されたブドウの量が5.695t。県外での使用比率、つまり県外への流出するブドウの割合は、生産量の13.2%になる。 
 山梨県におけるワイン用も生食用も含めたブドウ全体の結果樹面積(実をつけることのできるブドウが植えられている面積)は2020年の値で3,790ha。日本一の広さだが、大半が生食用に出荷される。

■主要ブドウ品種
 山梨県の主要品種は甲州とマスカット・ベーリーAだ。栽培面積も醸造量も他の品種と比べるとはるかに多い。国税庁のデータによると、前述のようにワイン用ブドウの生産数量は6,563t。上位10種をみると白用品種が3.787tで赤用品種が2,327tで比率は62%:38%で圧倒的に白用品種の生産が多い。品種別にみると甲州が3,138tで全体の47.8%、次いでマスカット・ベーリーAが1,773tで27.0%を占め、2品種で山梨県の生産数量の74.8%になっている。甲州、マスカット・ベーリーAに加えてデラウェアが多いのも特徴的だ。
 上記の品種に比べると微々たるものだが、最近栽培面積の増加が見られるのがプティ・ヴェルドである。比較的温暖な気候下でも糖度が上がりやすく、ワインの評価も上昇中だ。

■主なワイン産地
 甲府盆地の地理的な特性を考慮してワイン用ブドウの栽培地を区分けすると、1.甲府盆地東部、2.甲府盆地中央部、3.甲府盆地北西部、4.甲府盆地西部の4つに分類できる(留意しておきたいのは、ブドウ園は区分け内に点在しているのが実情だということ。フランスなどのワイン産地のように一つの産地内にブドウ園とワイナリーが集積しているわけではない)。

1.甲府盆地東部
 甲府盆地の東部は甲州市、山梨市、笛吹市を含む。山梨県のみならず、日本のワイン造り発祥の地で、現在実質的に稼働している約80軒のワイナリーのうち7割以上がここにある。日本の大手メーカーのうち、サッポロビール、マンズワイン、メルシャンといった3社のワイナリーがある一方、夫婦で営む家族経営のワイナリーもある。ワイン造り発祥の地だけあって、歴史の長いワイナリーも多い。まさに山梨県のワイン造りの中心的な役割を担ってきた。
 全体的に傾斜地が多いものの、盆地の北東から東にかけて流れ込む笛吹川、重川、日川が形成する扇状地が複雑に入り組んでおり、斜面の向きも土壌も多様。土壌は基本的には標高が高くなるにつれて、粘土質を多く含む。ブドウ園は標高300〜600mに拓かれている。甲府盆地における甲州ブドウの主要産地であるが、メルロ、シャルドネなど欧・中東系品種の取り組みも、ワイナリーの自社農園を中心にわずかに見られる。
 東部は、以下の地区にさらに分類できる。

①甲州市塩山地区(標高400〜600m)
 甲府盆地の北東の端で笛吹川と重川にはさまれた一帯に重川の左岸の一部が加えられたエリア。旧村名である奥野田、松里、千野一帯になる。ブドウ畑が点在しているなか、モモやスモモやカキなど他の果樹の栽培も活発で、明らかに勝沼地区とは違った光景が広がっている。土質は地力のある砂土に粘土が混ざる。ゆるやかな傾斜地と急斜面の両方がある。甲州に加えて、デラウェアも栽培されている(日本においてデラウェアの栽培が始まったのが、塩山地区の奥野田である)。塩山地区の上小田原では、メルシャンが自社管理畑の開園を発表している。

②甲州市勝沼町(標高300〜600m)
 生食用、ワイン用間わず、甲州ブドウが集中して栽培されており、ブドウ棚が一面に敷き詰められた光景が広がっている。勝沼町は勝沼地区、東雲地区、菱山地区、祝地区の4つの地区に区分される(それぞれ旧村名でもあるが、今も小学校の区分などで使われており、ワイン名に使われている)。
 最も代表的な勝沼地区は傾斜地と平坦地の両方があるが、南から南西斜面で日照時間が長い。土壌は褐色低地土と火山灰土壌。「鳥居平」は高台に位置するこの勝沼区内の小字名で、こちらもワイン名にも使われている。祝地区は勝沼区とは斜面の向きが正反対で北から北西斜面。甲州ブドウ発祥の地とも言われ、甲州ブドウが集中して栽培されている。勝沼銀座と言われるようにワイナリーが12軒と集中している。菱山地区は、西から南西向きの斜面で、勝沼町で最も標高が高く、寒暖差も大きい地区。山から吹き下ろす風により気候は冷涼。土壌は粘土質。

③甲州市大和地区(標高450〜500m)
 勝沼の大善寺から大和の景徳院に位置する大和共和地区。まとまった面積で甲州ブドウが栽培されており、大半がワイン用。土壌は粘土質。

④山梨市牧丘〜万カ/笛吹市春日居地区
 笛吹川の右岸斜面で下流に向かうにつれて、斜面の向きは南東から南に変わる。基本的には粘土質が多い。17年、牧丘にある大手メーカー、サントネージュの自社畑産のシャルドネを使ったワインが、フランスで開催されている「レシタテルデュヴァン」で金賞を受賞。この土地のシャルドネが国際コンクールで金賞を受賞したのは初めてのことになる。甲州に加えて、マスカット・ベーリーA、ブラック・クイーン、デラウェア、そしてシャルドネなどが栽培されている。

⑤笛吹市一宮町、御坂町、八代町地区
 京戸川や金川などによって形成された扇状地の裾野。小字である伊勢原は御坂町内で、金川左岸の段丘に位置しており、土壌は砂襟質。品種は甲州やマスカット・ベーリーAなど。

2.甲府盆地中央部
 中央部は甲府市の旧里垣、旧玉諸、旧甲運の一帯。ワイナリーは4軒になる。一帯は甲府盆地の底部に位置しており、県内のワイン用ブドウの産地としては例外的。地下水の水位も高く、土壌はグライ土という粘土の一種で水分を多く含む。水はけの良いところを選んでプドウは栽培されている。生育期間の平均気温(アメダスの観測所は甲府が近い)は20℃を超え、勝沼や韮崎に比べると高い。甲州ブドウの収穫時期も早めで、かつては新酒の原料として人気を博した。近年はスパークリングワインの原料として使う生産者もいる。

3.甲府盆地北西部(標高350〜800m)
 2000年頃から新たな畑が次々と拓かれている注目のエリア。ワイナリーも設立され、その数は12軒に迫る勢いだ。行政区域としては、北杜市(明野町、小淵沢町、須玉町、高根町、白州町)、韮崎市(穂坂、上ノ山)、甲斐市を含む。甲府盆地の北に位置する茅ヶ岳(標高1,704m)の裾野から塩川まで続く南斜面と八ヶ岳山麓を含む。粘土質もしくは、火山灰土の下層に粘土質があるため、傾斜地は水が抜けるが平地はやや水はけが悪い。
 近年、ブドウ栽培からワイン醸造まで一貫したワイン造りを目指す、日本では数少ない「ドメース型」ワイナリー、ドメースミエイケノもこのエリアには誕生している。また中央葡萄酒や本坊酒造のように甲府盆地にワイナリーを持つ会社が別のワイナリーを建てるケースもある。一方甲斐市には、100年以上の歴史を持つ、大手メーカー、サントリーが広大なブドウ園を擁するワイナリーを構えている。
 標高が上がるにつれて、甲府盆地の他の地区に比べて、気温も降水量も下がり、日照量に恵まれる。そのため韮崎市穂坂町ではマスカット・ベーリーAやカベルネ・ソーヴィニヨンが、北杜市ではメルロ、シャルドネ、カべルネ・ソーヴィニヨンなどの欧・中東系品種が、主に取り組まれている。最近になってこれらのブドウを使ったワインの評価も上がってきている。また甲府盆地の東部や中央部にワイナリーを持ち、ここに自社管理農園を持つ生産者も増えている。また中央葡萄酒によって、甲州の垣根栽培が初めて本格的に取り組まれ、またその甲州のワインが世界的に評価されたのもこのエリアになる。

4.甲府盆地西部
 南アルプス市の白根町、八田一帯。南アルプスに水源持つ御勅使川(みだいがわ)が西から甲府盆地に流れ込む一帯の、広大な扇状地で、主に栽培地は川の右岸になる。背後に急峻な南アルプスの山を背負っているために、大きめの角張った礫を多く含む砂質土壌になり、非常に水はけがいい。甲州ブドウが主要品種。近年、このエリアにもワイナリー設立の動きが活発化している。

5.その他の栽培地
甲府盆地南部、富士河口湖町大石地区、山中湖村山中地区(標高1,000m)。いずれもワイン用ブドウを栽培中である。



東海
 日本ワインブームの影響を受けて、愛知県、三重県、静岡県にも新しいワイナリーが立ち上がっている。愛知県には障害者の自立を目指したワイナリー、イタリアで修業を積んだ夫婦が100%自社畑産のブドウのみのワイン造りをモットーとする「ドメーヌ型」ワイナリー(豊田市の特区制度を利用して設立された)など8軒。静岡県は中伊豆の観光施設の一貫として設立されたワイナリーなど全8軒。三重県では2軒、廃校を利用した、商工会議所による「ワインづくりプロジェクト」がスタートしている。岐阜県には1933年からミサ用のワインを作り続けている修道院を含め、2軒のワイナリーがある。
 4月から10月の降水量は1,000mmを超え、気象条件は厳しい。
 日本ワインの生産量は静岡県は6.7万本、愛知県は2.6万本である(三重県と岐阜県のデータは非公開)。


近畿

大阪府
■プロフィール
 大阪府は、じつは日本でも有数のワイン造りの長い歴史を持つ。商業ベースではないものの、すでに安土桃山時代から栽培したブドウでブドウ酒らしき酒が造られていたという記録がある。ブドウの栽培面積も1930年代の最盛期には山梨県を凌ぐ(しのぐ)ほどで、ワイナリー数も110軒を超えた。その後、昭和を迎え、ブドウ園もワイナリーも激減し、さらにブドウ園の耕作放棄が続いた。しかし近年、耕作放棄地を利用した新たなブドウ園の開園、大阪ワイナリー協会の設立など、大阪のワイン造りを復興させようとする動きが生まれている。
 大阪府は、ブドウ園やワイナリーが大阪市街という大都市の近くにある。そのため宅地化の煽り(あおり)を受けたブドウ園の減少のリスクに晒される一方、消費地との距離の短さがメリットとなる。

■歴史
1.明治以前〜第二次世界大戦
 安土桃山時代の天正年間(1573〜92年)に、大阪府南河内地方の富田林村(現在の富田林市)において、農家の軒先でブドウが栽培され、ブドウ酒が名産だったという記録がある(河内名所図会前編1801年、「大阪府におけるブドウ栽培の歴史的変遷に関する研究」1986年)。江戸時代にも同様の記録があり、こうした動きが後年の南河内地方、中河内地方におけるブドウ産地誕生のきっかけとなった(「大阪府におけるブドウ栽培の歴史的変遷に関する研究」小寺正史1986年)。また南河内地方の沢田村産の沢田ブドウが幕府に献上されていたという記録も残る(「藤井寺市史」)。
 明治時代には新宿御苑の甲州の苗木が沢田村の育苗園経由で、堅下村(現在の中河内地方の柏原市)に伝わり、同村で甲州ブドウの栽培が盛んになった。明治末期になると、ブドウ栽培が中河内地方、南河内地方全域に広がった。
 本格的なワイン造りは大正時代に始まった。堅下村の高井利三郎はブドウなどの果樹園を営んでいたが、規格外ブドウの活用のために、1914年ワイナリーを立ち上げた。そして前年には、デラウェアがこの地に導入され、栽培面積を増やしていく。ブドウ栽培の広がりとともに、それらの処理工場としてワイナリーを設立する農家も続き、1935年の最盛期にはブドウ畑の面積は800haを超え、ワイナリーの数は119軒を数えた(甲州ブドウがどの程度の面積を占めていたかは不明)。一方で当時の柏原市の甲州の栽培面積が1,200ha以上だったという記述がある。28年から10年の間においては、大阪府は山梨県、岡山県にも勝る日本一の栽培面積を擁するブドウ産地だった。

2.戦後〜2000年
 1959年の伊勢湾台風、61年の第2室戸台風の際に甲州ブドウに大きな被害が出てからは、急速な宅地化や他のブドウ産地の台頭の煽りを受け、ブドウ栽培面積は急激な減少傾向に転じる。ワイナリーも激減の一途だったが、1988年、大阪市内の酒販店が、自ら育てた100%羽曳野産ブドウでワインを造るワイナリーをスタートさせた。とはいえ、2000年代に入るまでワイナリーはわすずか5軒のみだった。

3.2000年代〜
 こうした状況に変化をもたらしたのが2004年以降の日本ワインブームだった。13年、もともと日本ワインの販売に注力していた酒販店が大阪市の街中にワイナリーを設立。同ワイナリーは南河内地方で放棄されそうな畑を引き継ぐことで原料を自ら調達して、ワインを造り、ワイナリーに併設する飲食店で自社ワインを販売した。耕作放棄地を引き継ぐ動きは他のワイナリーにも広がった。
 また2012年、100年以上続く、ブドウ栽培、ワイン造りの歴史を伝え、「大阪ワイン」のブランドを守っていくことを主旨として大阪ワイナリー協会が設立されている。現在ワイナリーは8軒を数える。

■気候風土
 大阪府の面積は1,899㎢で、都道府県では2番目に小さい。地形は、南北に長く、西側に湾曲している。西側は大阪湾(瀬戸内海)だが、東側の府境には北摂山地、生駒山地、金剛山地、そして和泉山地が連なる。ブドウ園は、主に金剛山地と和泉山地の一部の麓の斜面にある。
 地質は中河内地方と南河内地方の間を流れる大和川を挟んで南北に分かれおり、北側の中河内地方の柏原地区のブドウ栽培地の大部分の地質は花崗岩(表面は風化土壌)で一部は安山岩、南側の南河内地方の羽曳野市は玄武岩や第3紀層になる。
 気象特性は、全般的に温暖。南河内地方、中河内地方のブドウ栽培地の近くにアメダスの観測地がないが、少し離れた平地の八尾のデータを見ると、4月から10月のブドウの生育期間の平均気温は、22.8℃でほぼ九州と同じくらい。ブドウ園は中山間部に位置しており、これよりやや気温が低い可能性が高い。4月から10月の降水量は841mmと山梨県の勝沼とほぼ同じで、韮崎よりは少ない。

■ワインの生産量
 国税庁のデータによると日本ワインの年間生産量は188kℓ、750mℓ換算で約25.1万本。日本全体の生産量からみるとわずかで、1.1%だが国内10位。

■主要ブドウ品種
 大阪府のワイン用ブドウの栽培ではデラウェアが最多で、この地が古くからのデラウェアの産地だったことを物語る。

としての生産量については、2015年度はデラウェアが明らかになっていたが、16年度以降は不明。ただし15年度は81tを数え、山梨、山形に次ぎ全国で第3位。

国税庁のデータでワイン原料としての醸造量で最多なのもデラウェアで102tを数え、大阪で生産される日本ワインの40%強を占める。これにマスカット・ベーリーA、メルロが続き、ナイアガラ、カベルネ・ソーヴィニヨン、シャルドネ、キャンベル・アーリー、甲州などもある。
 大阪府農林技術センター(現在の大阪府環境農林水産総合研究所)の小寺は、安土桃山時代に栽培されていたブドウは山梨の甲州ではなく「紫ブドウ」だとして伝来について2説を挙げる。1説は、豊臣秀吉が16世紀末に朝鮮出兵した際、またはその前後に朝鮮からもたらされたという説。もう1説は山梨県由来の説である。小寺は、現在大阪で栽培中の甲州ブドウは、明治時代に新宿御苑から苗木を大阪に配布したもので、甲州ブドウと紫ブドウとは異なると主張。しかし近年の酒類総合研究所の後藤奈美の研究では、紫ブドウと甲州ブドウは同じか非常に近い品種であるとしている。広大にあった甲州ブドウの畑も激減して、点在する甲州の畑の面積を合算しても1.5haほどにすぎない。

■主なワイン産地
 現在の生食用、ワイン用も含めたブドウ栽培地は、大阪府北部に位置する能勢町、そして大阪府東部の3つの河内地方に点在。河内地方では、北河内地方の枚方市、交野市(かたのし)、中河内地方の柏原市、南河内地方の藤井寺市、羽曳野市、太子町、富田林市(とんだばやしし)、大阪狭山市、河内長野市の斜面の畑が多い。
 ワイナリーがあるのは、大阪市、柏原市、羽曳野市になる。


近畿その他
 大阪を除く近畿地方には、京都府(2軒)、兵庫県(3軒)、滋賀県(2軒)、和歌山県(2軒)で9軒のワイナリーがある。
 兵庫県には第3セクターのワイナリーがあり、平成初期のピーク時には自社管理畑の広さは100haを超え、年間生産量も90万本を数えていたが、その後激減。品種はシャルドネ、リースリング、メルロ、カベルネ・ソーヴィニヨンなど欧・中東系品種に注力していた。このワイナリーの存在が影響して、同県のワインの醸造量はアメリカ系品種ではなく欧・中東系品種の醸造量が多い。シャルドネが99tでもっとも多く、メルロ、カベルネ・ソーヴィニヨンが続く。また明治政府が開設した播州葡萄園の跡地を利用したワイナリーもある。
 京都には2軒のワイナリーがある。1軒は京都市街から30km以上離れた京丹波町に位置しており、1950年代から続く。自社農園での台木も含めた極めて多くの品種の栽培でも知られる。またはやくからピノ・ノワールでのワイン造りにも取り組んできた。さらに、ジョージア産のサペラヴィといった珍しい品種のワインも造っている。
 また2019年には北陸から九州の65ワイナリー(設立時)により西日本ワイナリー協会が設立された。

中国四国
 中国地方では、島取に4軒、島根に4軒、岡山に9軒、広島に7軒、そして山口に2軒のワイナリーがある。国税庁によって日本ワインの年間生産量は山口県以外が公表されている。  
 岡山県の年間生産量が391kℓ。750mℓ換算では52.1万本もあるのは、大手ワインメーカーのワイナリーがあるからだ。2016年には内陸部の新見市哲多に100%自社畑産のブドウのみでワインを造る「ドメーヌ型」ワイナリーも設立。そこは母岩が石灰岩で、テラロッサという石灰岩が風化した赤土もみられる日本でも極めて珍しい地質と土壌になる。また17年には、フランスのローヌ地方でワインを造ってきた生産者が帰国してワイナリーを設立している。同じ県内ながら、各ワイナリーの主力とする品種は、ヤマブドウ、マスカット・オブ・アレキサンドリアなど多様。広島県の年間生産量が144kℓ。750mℓ換算では19.2万本になる。
 島根県は甲州の生産数量が多い。トップの山梨県にははるかに及ばないものの、116tの甲州によるワインが生産されており、山梨県に次ぐ。また雲南市には乳業会社が母体のワイナリーがあり、このワイナリーの小公子のワインによって、この品種の全国的な知名度があがった。
 四国では、徳島県、香川県、にそれぞれ1軒、愛媛県、高知県にそれぞれ2軒ずつワイナリーがある。


九州・沖縄
 九州におけるブドウ栽培自体は、明治時代に始まったとされていた。しかし2018年、熊本大学永春文庫センターの研究により新たな史実が明らかにされた。小倉藩奉行所の日次記録には、1627〜1630年までの4年間、小倉藩細川忠利の命により、葡萄酒(ぶだうしゅ)造りが実施されていたことが記されている。同センターではこの葡萄酒が「がらみ」(ヤマブドウ)を原料としたワインであるとしている。つまり初の本格的なワインは1627年には、福岡県において造られたことになる。ただし、これが現在のワイン造りに繋がることはなかった。
 1905年に、福岡県で川上善兵衛の岩の原葡萄園や興津園芸試験場から欧州系のブドウの苗を数十種類導入して、適した品種を選抜して栽培を奨励したのだ。しかしこの取組みは実際のワイン造りには結びつかなかい(「果樹産業発達史」)。大正時代になると福岡県ではキャンベル・アーリー、デラウェア、甲州、甲州三尺が、熊本県ではキャンベル・アーリーが、また大分県でもカトウバやキャンベル・アーリーが導入されている。宮崎県では、50年に永友百二が、山形県よりキャンベル・アーリーの苗を入手し、栽培を始めたのがブドウ栽培の始まりになる。また鹿児島県では明治時代(1881)年にすでにブドウの植栽とワインの醸造の計画があったが頓挫(とんざ)した。
 九州初のワイナリーは72年に福岡県で設立された。そして数十年後の2000年前後(1994〜2005年)で、一挙に7軒のワイナリーが立ち上がり、現在、九州のワイナリー数は全部で19軒となった。ワイナリー数が多いのが宮崎県の6軒と大分県の5軒。次いで、福岡県と熊本県が各3軒、長崎県、鹿児島県ともに一軒。

大分県だは、60年代に日本各地で展開されていた国営総合開発パイロット事業の一環で、65年に安心院町にブドウ園が開園、栽培が本格化した。その事業により、当初その栽培面積は西日本一になるほどであった。品種はデラウェアを主体に、マスカット・ベーリーA、キャンベル・アーリーなど生食用のブドウが植えられた。これでワインを造る目的で、町の誘致を受けて、2001年にワイナリーが設立。ブドウ団地自体は減少傾向だが、一部はワイナリーとの契約に基づき、ワイン用ブドウが栽培されている。しかし近年では、そのワイナリー自体の自社農園の拡大が見られ、面積は倍増の見込み。また現在、主にワイン用ブドウを栽培しているのは、安心院町と竹田市になる。安心院町は周囲を山に囲まれた小さな盆地になる。竹田市は阿蘇くじゅう国立公園の中の標高800mを超える高原で、九州にも関わらず冷涼でピノ・ノワールやドイツ系品種、そしてヤマブドウ系の交配種の栽培を続け、ワインを造っている。大分県の日本ワインの生産量は130tで750mℓ換算で17.3万本。
 宮崎県においては、前述の永友百ニがブドウ栽培を始めた。当初は病害虫を防ぐのに苦労したが、同氏の努力より、都農町を中心にキャンベル・アーリーなどの栽培が広がった。現在のブドウの主要産地は都農町と小林市だが、後者は観光農園が主体。都農町では88年、地元のブドウを生かしたワイン造りへの機運が高まり、新たな品種の栽培も始めて、96年にワイナリーが設立。都城にもワイナリーがあり、ヤマブドウの交配種などを手掛ける。4月から10月の降水量は1,800mm以上と非常に多いのだが、日照量も多い。こうした気候条件のもと、ブドウ栽培では基本的に雨除けを利用している。
 熊本県では、大正時代からブドウ栽培が続いていたが、1998年、ワイナリーの設立の動きとともに山鹿市(旧菊鹿市)で、シャルドネなどワイン用ブドウ栽培が開始。99年にはワイナリーが設立。その後も、ワイナリーと同市が互いに協カしながら面積を拡大してきた。こうした経緯もあり、今もワイン用ブドウの栽培は山鹿市と隣接する玉名市を含む県北部に集中している。長崎県の五島列島にもワイナリーがある。
 九州でワインの醸造量が最多なのはキャンベル・アーリーでその数は岩手県とほぼ同じ。その大半を宮崎が占める。次いでマスカット・ベーリーA、シャルドネ、デラウェアが挙がる。安心院町のワイナリーでは当初はシャルドネが主力だったが、最近は、アルバリーニョ、小公子、プティ・マンサン、甲州などにも取り組む。また宮崎県ではシラー、ピノ・ノワールにも挑戦中。熊本県ではシャルドネが多い。
 日本ワインの年間生産量は九州全体で約123.4万本。県別の日本ワインの生産量は大分県以外は非公開となっている。
 沖縄には醸造場が1軒あり主にパイナップルから果実酒 が造られているが、日本ワインを造るワイナリーはない。 また 沖縄に自生する野生ブドウのリュウキュウガネブ (ガネブは ブドウの沖縄方言) からワイン造りが模索されている。

※本項のデータ類の出典について
特に記載のないものは国税庁発表の「酒類製造業及び酒類卸売業の概況」(令和2年調査分) による。このデータではワイ ナリーをブドウ (濃縮果汁を含む) を原料とした果実酒を製造している製造業社としている。そのため、日本ワインを造らず輸入原料を使用した国内製造ワインだけの製造業社もワイナリーに含 まれる。 またシードルやフルーツワインのみを製造している製造業者はワイナリーには含まれない。


参考資料 日本ソムリエ協会教本、隔月刊誌Sommelier  

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