ディズニー映画「ウィッシュ」の感想 ※ネタばれあり

封切り2日目に映画館で視聴してきた。
公開したばかりというのに客席はまばらだった。

ネタばれ要素があるのでご注意ください





私はディズニーファンを自認しているが、
本作映画はひいき目に見て”佳作”という評価だ

100年の歴史を踏まえて今までの映画のオマージュがふんだんに含まれているのだが、それは下手をすると自己満足になりかねない要素だと思う。そういうのは物語のボディがしっかりしていてこそ輝きを放つもののはずだ。

本作を見ていて直後から腑に落ちなかったのは
「悪役の目的が明確でない」ということ。
福山雅治が声優を演じるマグニフィコ王。
この人どうやら人々の願いを自分の思いのままにコントロールしたい、というのが主な動機なのだ。

なんだそれ?というのはどうしてもぬぐえない思いである。
こんなのDV夫やDV彼氏のようなものである。
”相手を意のままにコントロール”したい。そうでない存在は許せないので悪の魔法に手を出してでも抑え込もうとする。そういう風に受け取れる描かれ方だった。

ちっちゃい。器がちっちゃい。スケールも小さい。強大な魔法の力を手に入れてしたいことがそれ?貴方の目指す最終地点って何?と見ながらも突っ込んでしまった。

そもそも国家の成り立ちも、迫害から逃れて楽園を想像しようと新天地を求めたものだった。地中海のどこかの島という設定だ。

でもその結果として発露されるのが人々の願いを搾取することからなる統制欲だとは。しかも自分の気に入った願いだけ叶えるという醜悪ぶりである。劇中で「俺はハンサム」と歌い上げるところも何とも寒々しくお粗末だと言わざるを得ない。滑稽さを通り越して哀れみを覚えてしまった。なんとしょうもない奴なんだろうマグニフィコ王。

というわけで悪役の設定がちょっとまずすぎてこんな小さいことをするのにこんな大きい力をリスクを取ってまで手に入れる必要あったのか?と感じられた。そもそも小さな自分の思い通りになる箱庭を作ろうとした小者だからしょうがないのかもしれないけれど。

まだしも「集めた多くの願いの強力な力をもってして世界を征服する」とかテーゼをぶち上げてくれた方が「うわぁ、こいつは野放しにしたらやばい!なんとかしてみんなの願いの力で止めなくっちゃ」と思えたのかもしれない。

話を戻そう。物語は非常にテンポよく進んでいく。上映時間の尺の関係もあり細かい事情を描写するのは難しいだろう。目に映るものをパッと見て楽しむ子供たちの評判は悪くなかった。しかし、物語のディテールにはどうしても粗が目立ったように思う。

もう少しこう、なんとかならんかったんか。冒頭にも書いた通りディズニーファンなので悔しい思いである。

作中で絶体絶命の状況に陥ったときみんなが願いをもって他人にゆだねるのではなく自発的に動くことで事態が好転する。現実世界もそうであって欲しいと願うばかりである。この世は近頃あまりにも凄惨なことが多すぎる。