見出し画像

■ 其の91■ オフ勉~高山寺(こうざんじ)

🔣オンライン上で知り合った人達と実際に会うのがオフ会。
ならば、勉強する中で興味を持った場所に出掛けることをオフ勉と呼んでみます。わたしのオフ勉体験は、4年ほど前に訪れた京都の高山寺です。

🔣高山寺の存在を知ったのは、
河合塾の問題集「入試精選問題集 現代文」です。
そこで出会った文章は、71ページから始まる
『 中世を歩く 』(饗庭孝男)の冒頭です。

 私は京都へ行くとほとんどいつも何とはなしに高山寺を訪れる。京都にある他の中世の寺もむろん好きだが、この寺は私にとっていかにも寺におまいりする、という実感を与えてくれるからである。仁和寺の近く、嵯峨野へ行く道と分かれて周山街道に入り、次第に山の中に分け入って行く。空気がひんやりとして霧が流れている。小さな峠を越えて鄙びた渓谷沿いの里に下り、街道から左に石段をのぼり、あの高山寺の石壁の白さを目にすると私の心は不思議なやすらぎを覚える。

🔣20年以上前にこれを読んで、いつか行きたいと思っていました。それを実現したのは、4年前に滋賀の彦根城へ行った帰路でした。高山寺に行く目的で京都駅を降り、バスに乗って向かったのは北西方向の山でした。
高山寺はあの鳥獣人物戯画でも有名ですが、わたしにとっては、この文章に書かれているお寺に行くという思いでした。表参道から石段をのぼり、右手にある石水院に入ると、そこは立ち去るのが惜しくなるほど見事に景観と空間が織りなされた建物でした。しかし、石水院を出てさらに上がっていくと‥‥えっ、何これ? ウソだろ‥‥という光景が広がっていました。
山林があるはずの場所は木々は伐採され、地面が剥き出しの原野です。もはや風情がどうのという状態ではありません。あとで調べてみると、数年前の台風で樹齢数百年の樹々がなぎ倒されたとありました。京都周辺一帯に広がる広大な山林の中で、よりによってこの場所が被害にあうのか‥と思いました。ただ考えようによっては、国宝の石水院は助かったとも言えます。
紙一重の運命や人間のはかなさに通じるものがあると思いました。
‥‥オフ勉したことで味わえた経験です。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?