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ワインブックレビュー 『The New Hokkaido Wine』日本ワイン 北海道

鹿取 みゆき 著
虹有社
2016/03 132p 2640円(税込)

日本ワインの味わいを決めているものは何だろう?
地理、気候、地質、土壌、品種、そして人…。あるいは栽培方法や醸造方法、積み重ねた歴史など、さまざまな視点から、ブドウ畑を取り巻く要素を拾い集め、日本ワインの姿を捉える、これまでにない試み。(「BOOK」データベースより)

第1章 ワインの生産量と特徴
第2章 ワイン造りの歴史
第3章 葡萄畑を取り巻く自然環境
第4章 ワイン造りとブドウ栽培地
第5章 栽培と品質

データで見る北海道のワイン

ワイナリーと地勢、地質と土壌、北海道のワイナリーの概要と動向、歴史と気候(降水量・気温・積算温度)、主なブドウ品種などを多くデータを使い専門的に書かれた本である。
面白いし、為にもなるし、良質な書籍なのだが、北海道編しか出ていないと言うことは、売れなかったのだろうなぁ。
このシリーズで全国版を出すなら、この【北海道】の他にも【東北】、【甲信越】【関東】【山梨】【長野】【関西・中国】【四国・九州】と8冊は出さないといけないし、全部買うとしたら2万円以上になってしまうからなぁ。

ワイン初心者からの脱却

全国のワイナリーを紹介する本は多くあるが、たいていは著者の趣味や趣向が多分に盛り込まれいて、書いてる人は楽しそうだが、読んでる人はそう面白くなかったりする。
やはりワイナリーの歴史や物語を抒情的に書いた本の方が売れるのだろう。
だから多く出版されているのだろうが、時間が経った時に読み返してみて、どうなのだろうかとも思う。
ワイナリーの評価は時間によって変わる場合もあるからなぁ。
しかし、ここまで専門的だと、これからワイナリーをやろうとか、ソムリエで北海道のワインを専門的に勉強しようという人しか買わないだろうなぁ。
資料的な価値もあるし、日本ワインにとっては有益な本なのは、間違いはないのだが。
発売された2016年から2019年の4年間で、ワイナリーが24軒から2019年(10月までには)41軒に急激に増えているので、書籍で出すなら毎年とか2年に一回とかにしないと、追いつけない。
なので、アプリとかブログの方が、情報を得る方法としては良いのだろうが、そういうモノが無い。需要も無いかもしれないけど。
メディアとしては、書籍はスピードが遅いので、新しい情報を発信するのには、向かなくなって来ているのかもしれない。
初心者向けと本格的に知りたいマニアックな人向けの2極化が、これから進んで行くような気がする。
まだまだ、日本ワインが一般に認識されてないのが現状なので、これからもっと、飲み手も造り手の意識が高くなっていかないと、このような本が売れるような状況には、ならないのだろうと思いました。
根本的な問題として、日本ワインの情報が少な過ぎるんだよなぁ。
しかも、ブログなどでは、売る為の情報や間違った情報が、入り混じっている。
権威主義的になるのも嫌だか、日本ワインの評価の基準のコンセンサスが、一般的に定まっていないのだよなぁ。
日本ワインブームみたいに、言われた時期もあったが、ホントのブームには、なっていないのではないか。
日本ワインの店が、そう沢山ある訳じゃないし、欲しい日本ワインが買い易いかと言うと、そうとも言えないだろう。
ブームというならば、みんなが飲んでいる状況になっていないといけない。
しかし、日本ワインの生産本数が少ないという事もあり、需要と供給のバランスが取れていないので、本当のブームになるのは、難しいのだろろう。
だいたい飲みたい日本ワインが、おいそれとは、飲めないからなぁ。
「いま飲むべき日本ワイン」のような記事があっても、飲む以前に買えないよなぁというのが現実である。
日本ワインブームが来て、それが終わった後に残るワイナリーが、ホンモノの日本ワインを、つくっているワイナリーなのだろう。
この『The New Hokkaido Wine』も良いけど、これよりも2011年に発行した『日本ワインガイド』純国産ワイナリーと造り手たち Vol.1の改訂版を出して欲しいと言うのが、本当のところである。
今出したら、上下巻のボリュームになってしまうだろうけどなぁ。**


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