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オレもオレゴンに行きたいんだよ。

2021年の出雲駅伝が終わって東京に向かう空港のチェックインカウンター前で駒澤大学大八木監督との立ち話でポツリともらした「オレもオレゴンに行きたいんだよ」という心がダダ漏れしたような独り言。

「伸び代を残して卒業していく」駒澤大学OBからは多くの日本代表選手が産まれたが、あくまで卒業生。大学卒業後も駒澤大学を拠点として、まさに二人三脚でトレーニングを積んだ中村匠吾がMGCで東京オリンピックマラソン日本代表を決めたときも記者会見場で中村の隣に座っていたのは富士通福嶋監督。指導者としてのキャリアも終盤に差し掛かった監督にとって在学中に世界陸上、オリンピック代表を狙える田澤廉という逸材は、さらに情熱を掻き立てるものであったものに違いない。

東京オリンピックは逃した後は世界陸上オレゴンに大八木監督は照準を定めた。多くの実業団選手たちに立ちはだかった参加標準の壁を突破するために、記録を突破するためのレースを見定めた。箱根駅伝へのダメージを残したくない、そして箱根駅伝からのリカバリーを考えると狙うのは2021年の11月末から12月頭。チャンスは一度だけ。ここしかない。という絶妙なタイミングで日体大記録会に田澤廉記録チャレンジレースを企画する。(通常だとターゲットタイムが最速を最終組にもってくるが、レース開始時刻も遅くなりすぎず、気温が下がりすぎないよう最終組の14組ではなく10組に。)

狙いすましたかのようなピーキングで唯一の世界陸上オレゴン10000m参加標準突破選手となった田澤廉は日本選手権を逃したが、世界陸上代表へ。先手先手で代表選考に優位にたっておき、その分、世陸への準備にあてることができた二人が揃ってオレゴンへ。ついに出雲空港でもらした「オレもオレゴンに行きたいんだよ」が言霊となった。

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