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ドローンを活用したネオ・ストリートフェスティバル

数年前に大学で書いたミニレポートを掘り起こしました。

ドローンの新しい利活用アイデア:「ネオ・ストリートフェスティバル」

 ドローンの用途として主に想定されることは、商品・医薬品の輸送や施設のスキャン・点検である。ここではもう一つの方向性として、「エンターテインメント×町の活性化」でドローンを活用できるシーンを検討したい。

 フランスの地理学者オギュスタン・ベルクは『空間の日本文化』(筑摩書房、1994)で、日本において人々が集まり賑わうオープンスペース、すなわち西欧の広場にあたる公共空間とは、街路であると指摘している。実際、青森ねぶた祭や京都祇園祭のような有名な祭から地元で行われる商店街祭まで、街路で行われる祭は多く見られる。しかし、祭の開催中は街路の通行を制限する必要があり、周囲の住民や祭に参加しない人々に負担を強いることになる。

 そこで、街路の地上部分を占有せずに、ドローンを活用して街路上空で行われる祭があってもいいのではないかと考える。複数のドローンで神輿を支えながら街路上空を進む、あるいはドローン自体が発光したり(cf. 東京五輪開会式)、音楽を流したりする演出があってもいい。さらにドローンから発信される電波を受け取った街路の人々が、自らのスマートフォンまたはARグラスで限定コンテンツを楽しむシーンも想像できる。このような形態が実現できれば、街路周囲への負担を軽減しながら祭が継承され、町における人々の賑わいを維持・創出できると考えられる。

ドローンの制度的あるいは技術的問題と考察:「落下時の対策、立体マーカーの可能性」

 ただ、このアイデアを実行するためには多くの制度的・技術的課題がある。

 まず現状として、町中でのドローンの飛行は制限されている。ドローンが万が一落下した場合の危険性を考えれば当然であり、これを乗り越えるためにはリスクを限りなく0に近づける必要がある。具体的にはドローンが落下する可能性、そして仮に落下した場合に落下地点で人や物に衝突する可能性、さらに仮に衝突した場合に相手にダメージを与える可能性を、それぞれ無くしていくような技術的改良が求められる。

 また、ドローンが町中を安全に飛行するためには周囲の建物を認識できる能力が欠かせないが、正確な認識には依然として課題が残っていると思われる。私はドローンの飛行実験を行った際、周囲のオブジェクトを認識させる手段としてオブジェクトにカラーマーカーを設置した。ただ、マーカーの色や模様が背景と酷似してしまった場合、ドローンがマーカーを正確に認識することは難しいことに気づいた。

 この解決策として、マーカーを立体的にすることが考えられる。たとえば、直方体のビルの角にマーカーを設置する場合、角の三面それぞれにマーカーを設置する。移動・回転ができるドローンならそのマーカーを多角的に認識できるので、たとえ一部のマーカーを認識できなくても他のマーカーを認識できればビルの存在を知ることができる。すべてのマーカーを認識できれば、ビルの位置を三次元的に把握することができる。これが実現できればドローンの安定飛行に繋がり、前述のような飛行制限の緩和にも寄与すると考えられる。

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